大分県立看護科学大学附属図書館 Oita University of Nursing and Health Sciences Library

2012年9月図書紹介

 「部下を育てて自分も育つ5つのマネジメント・プロセス―人と組織が強くなる成長の仕掛け」 

二宮靖志 著 (日経BPコンサルティング 2012年) 
 

 私は数年前から、経営に興味を持ち、組織の在り方をよく考えます。組織が成長するには、「ヒト」「モノ」「カネ」を上手く使いこなすことが重要だと経済雑誌によく書かれています。紹介する本は、この中で「ヒト」の使い方つまり、人材育成について組織の活力を生み出すマネジメントをまとめた本です。

 

 少し前の話題ですが、2009年に一度破綻したJALが、2年連続で定時到着率が全世界トップとなり、経営改革を行いました。この改革が成功した理由は人材育成にありました。航空会社は整備、貨物、燃料、地上業務、客室業務、運行業務(パイロット)と、多くの業務に分業・専門化し、個別に起動しています。そこでひと月に数回、各部門のメンバーで構成されたグループを作成し、意見交換するという時間を作ることで次の部署へバトンタッチがスムーズに実施され、定時到着率を上げ、乗客を増やし収益をあげることが出来ました。もちろん、コスト削減も含みますが、人材教育で組織の改革ができる事例に感動します。

 

 この本では、組織がある改革を行う時、すぐには変わらない体質を変えるには、マネジメントとして必要なのは、仕事の改革と人材育成の2つであり、人材育成ビジョンとは、メンバー1人1人の成長の過程を考えること。そのマネジメントのプロセス、「変革を与える目標設定→成長課題を一人ひとりに展開する→実行徹底のためのPDCA(pian,do,check,action)サイクルの仕組み」についてまとめてあります。

 
私達は、学生への教育について常日頃考え、悩みますが、時には大分看護科学大学という組織の人材として自分はどうかというのを考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
 
 
水野 優子 (基礎看護学研究室)
 
 
 
 

2012年8月図書紹介

「ペコロスの母に会いに行く」 

岡野雄一 著 (西日本新聞社 2012年) 
 
もし、認知症の家族がいたらと考えた事がありますか?私は結婚して初めてその経験をしました。息子である主人はありのままの母親を受け止めようとしていますが、時々何度も同じ事を聞いてくる母に対して、怒った口調になってしまいます。そういう自分を戒めるためにと読んでいたのが、今月紹介する本です。マンガと文章が混在していて一気に読んでしまいます。学生の皆さんにも認知症の入門本になることでしょう。
 
本の中に義母と主人公のみつえさんと同じようなエピソードがあるので紹介します。
義母は買い物に連れて出すと、薬売り場に突進しヒアルロン酸とコンドロイチンを探します。もう何種類も購入していますが……。本の中でもみつえさんはヒアルロン酸に興味があるようです。高齢者にとって、あのCMは脳裏に刻まれるのでしょうね。
 
また、8月と言えば終戦記念日や原爆の日があります。みつえさんは長崎で被爆しています。原爆の記憶は忘れられるものではありません。そういう所も読む価値があると思うのでお勧めします。
 
堀 裕子 (成人・老年看護学研究室)
 
 

2012年7月図書紹介

「細胞の意思 〜<自発性の源>を見つめる〜」

団まりな 著 (NHK出版 2008年)
 
 私たちの体は約60兆個の細胞でできています。では皆さんは自分の体を作っている細胞のことをどれくらい知っていますか。細胞の構造や機能についてはある程度説知っている人もいるでしょう。しかし、その本質についてはだれも知らないのではないでしょうか。
 
 今回、私が皆さんに紹介したいのは「細胞の意思」という本です。この本は、まさに細胞の本質を実際の実験結果を踏まえて多角的な視点から述べています。
 この本を通して、細胞も細胞同士、我々人間社会と同じような環境を形成し、そして我々と同じような「悩み」や「生きる目的」を持ちながら存在していることが分かります。ぜひ御一読ください。
 
 細胞の本質を知ると、細胞という生き物が身の回りの草花やペットなどと同じように身近に感じ、そして大切にしようという気持ちが芽生えてくるのではないかと思います。細胞を大切にするということは自分を大切にするということ、つまり命を大切にすることにつながります。
  
 最後に、本文中で著者は、「生きている私たち人間を知るための最初の一歩は細胞から。生き物の最大の特徴である自発性の根源としての細胞を理解できずに、人間を理解することはできない。」と書いています。
まさにその通りだと思います。人間を理解するためにもまずは細胞の気持ちを理解してあげたいと思う今日この頃です。
 
小嶋 光明(環境保健学研究室)
 
 

2012年6月図書紹介

 「あっこと僕らが生きた夏―17歳女子マネージャーがナインに託した、命のバトン―」

有村千裕 著 (講談社 2011年)

 
 野球部のマネージャーとして、ナインと共に甲子園を目指す、「あっこ」こと大山﨑耀子(おおさき あきこ)。この本は大分市の楊志館高校に実在した少女のお話です。福祉関係のクラスで勉強をしていた1年生の冬に、首に小さなしこりが見つかります。検査の結果、病名は進行性の上咽頭がん。
 
野球部が甲子園を目指して練習する中、あっこさんは再びグラウンドに戻る日を夢見て福岡で抗がん剤治療を始め、ナインも彼女を甲子園に連れて行こうと快挙を続けます。
しかし、背骨にがんの転移が見つかり、彼女は自ら治療を断念し、自分らしく生きるために、余生を野球部と共に過ごすという「命の決断」をしました。
 
 「死んだら、きっとグラウンドの空にいるから」
 「幸せっち普通に生きてることだよ~」
など、 本書では、闘病中に書いた日記や、ブログが要所要所に織り込まれ、辛い病魔との闘いや、野球に対する熱い想い、ナインとの深い絆、そしてご家族への想いが綴られています。
 
命の時間の大切さや、何事にも諦めず、頑張る事を教えてくれた「あっこさん」。17歳と言う短い生涯を終えた彼女の生き様は、お友達に「命のバトン」として受け継がれています。
福祉の勉強をしていたあっこさんは、元気だったら介護関係の仕事に進んでいたかもしれません。
これから命の現場で、看護や介護に携わるみなさんに、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
 
 
中野 智子(附属図書館)
 
 

2012年5月図書紹介

「チリ33人 生存と救出、知られざる記録」

ジョナサン・フランクリン 著 (共同通信社 2011年)
 
 33人が69日後に救出されたチリの鉱山事故は2010年8月に起きた。
 地底人となった人たちは、1人も欠けずに救出されたが、その間、室温40度、湿度100%の中で、常にさらなる落盤の恐怖にさらされたという。17日間は、鉱山の中に備蓄してあった食べ物を分かち合って命をつなぎ、パロマとよばれるコーラが通るだけの小さな通路が空気孔と共にあけられてからは、食料補給が地上から行われるようになった。
 極限の状況での補給に関しては、NASAの専門家の意見が取り入れられたという。ストレス下での健康維持には、多くの専門職が集められ、33人の中で役割担当が自然と決まり、テレビ電話を通してコミュニケーション、情報伝達が図られた。チリ大統領のパフォーマンスや、資源国のプロパガンダ的色彩もあったことが記述されている。
 
 その次の年にあった東日本大震災では、多くのかたが犠牲となり、今は海流にのって津波にさらわれたものがアラスカ、カナダに漂着している。
 チリの集約されたある意味贅沢な救出を、広域災害に当てはめる事ができないが、専門職の助言の有効性、被災者の役割、助言者と被災者のコミュニケーションは、日本の災害でも役立つ要素と思われる。
 311から本当に役にたつものを見出し始めた日本において、やさしい未来があることを信じたい。
  
安部 眞佐子 (生体科学研究室)
 
 
 
 

2012年4月図書紹介

「生きてるだけで百点満点」

鈴木 せい子 著 (サンマーク出版 2005年) 
 
私が助産師として、地域の中で「いのちの大切さ」についてお話する機会をいただいて約10年になります。お母さんがお腹の中で10ヶ月間大切に児を育てて、生まれてくる瞬間を待ち望んでいることや生まれてきた時の赤ちゃんの様子、その時のお母さんやお父さんの喜びと幸せな気持ちをお話することによって、生徒さん達の多くが耳を傾けてくれて、その時の顔の表情が嬉しそうに変化していくことを私は感じることがあります。
 
この本は、ベテラン開業助産師である著者が、いのちの大切さを伝えるための活動にエネルギーを注ぎ、学校やいろいろなところでお話してきた内容やその感想を中心にまとめられています。いのちに寄り添い、多くのいのちの誕生を見守ってきた助産師が、見て、ふれて、感じたありのままを伝える、いのちの現場からの心あたたかいメッセージです。
生徒の感想文に「生まれてきてよかったんだ」「助産師さんのお話を聞いてとても励まされた」「すごく強い生きる力を感じた」と述べられています。
 
きっとこの本を手にすることによって、あなたはありのままの自分をみつけて、生きているだけの価値にふれることができると思います。そして、いつまでもいのちを大切にするあなたであってほしいと願います。
  
林 猪都子 (母性看護学研究室)