大分県立看護科学大学附属図書館 Oita University of Nursing and Health Sciences Library

2013年3月図書紹介

                    「がんばらない」

鎌田 實 著(集英社 2000年)
 
 この本は、医師が患者の最後を紹介するもので、人がいかに心安らかに最後を迎えていくかを扱ったものです。 
 著者は、人間らしい最後を迎えることはいかにして可能か、最後の時をどう生きるか、何を残すのか残さないのか、どのような人でも死と向かい会わざるを得ないという人の普遍的課題にどのように対応するのか。どのように患者に満たされた最後の時間を提供してあげることができるのか。それは結局本人の心構えだが、死への時間が迫る中で、その心の動揺を支える柱は、家族はもちろんだが、医師、看護師の役割も大きいものがあり、それを様々な人の最後の時の実例によって表現しています。
 また、医師や看護師など多種多様なスタッフが、それぞれの専門性を生かして病んでいる人を全力で支えていることの意味を強く訴えています。著者の目指している魂のこころくばりのできる医療を全国どこでも受けることができるようになるとほんとにいいと思います。
 
 医療者が、重症な患者や末期の患者さんに、つい口に出してしまう言葉「がんばりましょう」、この言葉に勇気を奮い立たせる患者さんがいる反面、精一杯がんばって、がんばって末期をむかえてきた患者さんにとっては、がんばれという言葉はとても傷つけることがあるそうです。だから、著者は医療スタッフが、がんばりますからあなたは、ありのままでいてくださいというこの気持ちを「がんばらない」この書に託しています。
 
「がんばらない」とは?
 「がんばる」人間は、がんばれなくなったとき、すぐにあきらめてしまう。だから初めから「がんばらない」意識をちょっとだけ、常に持っていることが大切です。「がんばらない」ってことは、「あるがままを認めて、だけどあきらめない、希望を捨てない、自分らしく生きる」という肯定的な意味だと著者は言っています。
 
同著者の「あきらめない(2003年)」 「いいかげんがいい(2008年)」もぜひどうぞ。
 
佐藤俊実(教務学生グループ)
 

 

 
 

2013年2月図書紹介

世にも美しい数学入門 

藤原正彦/小川洋子 著 (筑摩書房 2005年)
 
この本は、私が大学に入学が決まった時に課題として出された本です。
著者の小川洋子さんは、2006年に映画化されたことで知っている方も多いと思いますが、小説「博士の愛した数式」の作者でもあります。その小説を書くために取材をしたのが数学者の藤原正彦さんでした。小川さんと藤原さんの対談を中心に話は進んでいきます。
 
『数学は美しい』 このような概念を持って今まで数学を学んできた人はどれぐらいいるのでしょうか。少なくとも私は、一度も出会ったことがない言葉でした。
『「三角形の内角の和が180度である」こと自体が美しい』という話から始まります。
そこには、『「三角形の内角の和が180度である」という一行が持っている永遠の真理は何物にも侵されない。平べったい三角形でも、とんがった三角形でも、顕微鏡で見ないとわからないような三角形でも、どんな三角形を書いても179度でもなく181度でもなく、どうやってもぴったり180度になる。百万年前も現在も、百万年後もそうであり、世の中にはこのような数学の永遠の真理は他には存在しない』という内容が書かれていました。
それまで、それはそれ、これはこれと、ただ、山のようにある公式や定理を覚えて問題を解いていくのが数学だと思っていた私にとって衝撃の内容でした。読み進めていく中で、『数学は美しい』という言葉の意味がなんとなくですが理解できたと思います。他にも、「ゼロについて」「友愛数」「完全数」などの様々な数や定理の美しさやおもしろさについて、今まで考えたことのないような視点で述べられています。
 
私はこの本を読んで、数学に対する苦手意識が少し軽減したような気がします。数学が苦手な人、難しいと思っている人、機会があれば読んでみてください。数学に対する考え方が変わるかもしれませんよ。
 
田原 歩 (言語学研究室)
 
 

2013年1月図書紹介

「7つの習慣 ティーンズ」

ショーン・コヴィー 著 (キングベアー出版 2002年)

 
スカイツリー開業、ロンドンオリンピック、金環日食、九州北部豪雨をはじめとする異常気象、年末衆議院総選挙と何かと慌ただしい2012年が終わり、新しく2013年が始まります。新年にあたり、今年1年の目標や計画はどのようなものでしょうか?
 
出張の際、立ち寄った本屋で「7つの習慣」という本を目にしたのが、今回紹介する本を読むきっかけとなりました。『個人、家庭、会社、人生のすべて―成功には原則があった!』という表紙の見出しが気になり手に取ったのですが、この本の関連書籍としてティーンズ向けに書かれたものが本書です。
 
ティーンズ(中学生から高校生)を対象としたものなので大学生のみなさんや社会人の私には向かないのではと思いつつ読み始めましたが、わかりやすい言葉(370ページある単行本なので少し読む時間がかかりますが)で、内容も身近な『友達、ボーイフレンド/ガールフレンド、学校、両親、スポーツ、趣味、ヒーロー、敵、自分、仕事』などを取り上げ、いろいろな例を用いているので途中でやめることなく読み進められます。
読みながら「あるある!」と思ったり、「そうだよね。」って納得したり、「そっか!」と気付いたり。
目次だけをみると多々ある自己啓発書同じようですが、妙に納得してしまう例題や使えそうなエピソードが多いところがお勧めです。メモ(本書に登場する著名人や言葉の解説)、『最初の一歩』(各章で著者がいいたかったこと、そこで自分が考えたことを記入する欄)や、書きこみ式で自分の考えを整理するページもあって気軽に、でも真剣に読んでいけます。
本家の「7つの習慣」はちょっと難しい感があり、途中で止まってしまいましたが、このティーンズ版を読んだあと、再度、本家にチャレンジ中です。みなさんも一度本書を読んでみてはいかかでしょうか?
 
最後にクイズを
「常にあなたのそばにいて、一番頼れる助っ人になったり、一番厄介な重荷になったりするもの。扱いは簡単。機械ではないが、同じくらいの正確さでしかも人間の知能をつかって仕事をするもの。厳しくしつければ、あとは勝手にやってくれて、ためになることにも、損をすることにも使えるもの」
答えはこの本の中にあります。
 
岩﨑 香子 (生体科学研究室)
 
 
 
 

2012年11月図書紹介

「僕がアップルで学んだこと―環境が整えば人が変わる、組織が変る」

 松井 博 著 (アスキー・メディアワークス 2012年)
 
 私たちの日常に欠かせないiPhoneやiBookの機能はもちろん、そのデザインは洗練されていて、とてもここちよいものです。
 先日、カルフォルニア州に三週間ほど滞在する機会を得ました。
 スタンフォード大学のあるパロ・アルト市内から友人とドライブに出かけた際、クパチーノ市内のアップル本社に立ち寄る機会を得ました。自然豊かな環境のよい土地にあり、ショップに入ると、そこはシンプルでとてもここちよい空間でした。帰国直後、書店でこの本を見つけ、このタイトルに引かれ読んでみましたのでご紹介します。
 
 一時はその存続が危ぶまれていたアップルという会社が、回復に向けてどのような環境を構築し、人材を集め、優れた製品やサービスを生み出すのに至ったのか。
 「スティーブ・ジョブズがアップルに戻ってきて行った仕事。それは、働く“環境”を徹底的に変えたこと」だそうです。 環境が整えば人が変わり、組織が変る、その一部始終を経験した著者が学んだノウハウには、これからの社会を生きていくうえでのヒントが数多く含まれているような、そんな本でした。
 
 著者はSink or swim (沈むか泳ぐか)という慣用句を引用し、水の中に放り込まれ必死に泳がない者は溺れてしまうがそれは仕方がないと、米国一流企業の厳しい一面も紹介しており、私は自分を見つめ直す機会にもなりました。
 
 さいごに、著者は現在妻とともにクパチーノ市内で保育園を経営しています。子どもが知らず知らずのうちに創造性や冒険心を養い、社会性を身につけられるような環境作りを目指して―。素敵な人生の時間の過ごし方ですね。
 
 
小野 孝二 (環境保健学研究室)
 
 

2012年10月図書紹介

「発酵食品への招待 ―職文明から新発展まで― (新版)」    

一島 英治 著 (裳華房 2002年)

 
 発酵食品と聞いて何を思い浮かべますか?
 今でしたら、やはり塩麹でしょうか。ブームの火付け役として有名になっているのが佐伯市にある麹のお店です。先日NHKのプロフェッショナルにも登場しました。
TVのなかでも紹介されていましたが、つい5~6年前までは廃業を考えるほど需要がなかったそうです。「日本の伝統的な発酵食品である日本酒(清酒)醤油、味噌、味醂はいずれも麹菌と言う安全なカビをスターターとして用いた発酵食品です。麹菌なしに日本の発酵食品は考えられません。麹菌は日本の国菌です」と、筆者は言っています。
 
 麹のお店が廃業を考えるような状態になったのは、味噌や醤油、甘酒などを家庭で手作りすることがなくなり、もとになる麹が売れなくなったことによるものだそうです。麹をもっと食べてほしいと考え紹介されたのが塩麹です。発酵食品は味や香りがよいことに加え、保存がきくこと、体に良いことなどが特徴です。中でも塩麹は、料理に加えると味がまろやかになる、塩と比べて使う量が少なくて済む、といった特徴があります。これらのことが健康志向の人たちに受け入れられ、塩麹ブームが起きているのでしょう。
 
 発酵食品は他にワイン・ビール・パン・チーズ・納豆・ヨーグルト・紅茶・ウーロン茶があります。パンの起源は紀元前4000年。当時のパンは砕いた麦を水で練って焼いただけの薄い煎餅のようなもので、平焼きパンと言われたものでした。現在でもアジアからインドにいたる地域で食べられています。発酵パンの発明はエジプト文明の中からもたらされ、紀元前5~6世紀のギリシャでは純度の高いパン種が計画的に管理されていました。紀元前2世紀の古代エジプトのピラミッドのなかにともに埋葬された壁画に当時のビールつくりが記されています。当時のビールつくりは麦芽パンを焼きこれをちぎって湯につけて、こし分けてから甕(カメ)に入れて自然にアルコール発酵させます。これが古代のビールでした。 
 
 発酵食品はおいしいということ健康に良いということなどのほかに文化を担っているという面も持ちます。古代エジプトの時代からたくさんの人々の知恵と工夫、偶然が今の発酵食品の形に影響しています。
 秋の夜長、食欲の秋?? 昔の人々に感謝しながらおいしい発酵食品をいただきたいと思います。
 
山田 淳子(保健管理学研究室)