大分県立看護科学大学附属図書館 Oita University of Nursing and Health Sciences Library

2013年9月図書紹介

 「雑談力が上がる話し方―30秒でうちとける会話のルール」

    齋藤 孝 著  (ダイヤモンド社 2010年) 
 
 私がこの本を読んでみようと思ったきっかけは、ある保健師さんから『雑談って大事よね』という言葉を聞いたことからでした。専門職同士の雑談は、他愛もない話であることもありますが、お互いのコミュニケーション力を上げ、情報共有の場となり、問題解決の場となることもあります。
 
 また、対象者との関わりのなかでは、直接的に『不安なことは無いですか?』という質問に対しては『ありません』と答える患者さんが、『何気ない会話』の中から、日常生活の不安をを示してくれたという経験が多くあったように思います。
 
 この本の著者の齋藤孝先生は大学教員として長年学生に教育をしてきた経験や研究から、雑談力を鍛える方法などについて分かりやすく説明されており、最後には雑談力は生き抜くちからそのものだと述べておられます。
 
 私たち看護職はある程度、意図的なコミュニケーションをしますが、 これから実習や社会に出て、対象者や実習指導者・先輩看護職とかかわる機会のある学生の皆さんは、雑談について書いてあるこの本から学ぶことも多いのではないかと思います。
 興味のある方は、ぜひ一度読んでみてください。 
 
 岡元 愛(地域看護学研究室)
 
 
 
 

2013年8月図書紹介

 「 障害をもつ子を産むということ ー19人の体験― 」

野辺明子・加部一彦・横尾京子編 (中央法規出版 1999

 

 

みなさんは自分の将来をどのように思い描いていますか。看護の仕事に携わりながら、結婚して家庭を持ち、子どもを育てて・・・・と考える人も多いでしょう。待望の妊娠がわかると赤ちゃんが無事に元気に誕生することを願い、赤ちゃんとの生活に様々な夢を託していくことと思います。この本はそのような夢を思い描いていた女性がある日突然障害をもつ子どもの親になり、苦悩と受け止めの日々送る体験を記録した内容になっています。

 

それまで障害児・者問題に関心をもっていたとしても、いざ自分の身に降りかかる問題になり、すべて自分が引き受けなければならない当事者になると動揺してしまいます。子どもが障害児になったのは自分のせいだと自分を責める母親は少なくはありません。子どもは元気に五体満足に生まれてくるのが当然という見方が強い社会ではそうなった場合には母親を責めるような雰囲気が作られていきます。障害児を産むことは確率的にはどの親にもあり得ることであり、いつ自分がそのような立場になるかは考えに入れておかなければなりません。

 

本の中には障害児を産んだ妻をもつ夫側からの気持ちも描かれており、納得させられました。母親にばかり焦点があてられることが多いのですが、夫も妻以上に動揺しており、夜一人で泣き、自分を見失っている姿がそこにはありました。しかし、妻の前では平静を装い、妻には立ち直ってもらいたいと心から願っています。父親は決して強くはないのです。

 

看護師はこの様な状況にある両親に一番身近に接するのですが、何人もの母親が看護師の気遣いがかえって辛かったという経験をしていました。奇形のある新生児のベッドの位置を見えにくい場所にわざわざ移動させたり、あえて子どもの話はしないで関係のないことを陽気に話すとか、あるいは逆に声もかけず腫れ物にさわるかのように接するなど気遣いが逆に母親の気持ちを沈ませ、孤独に追いやることもあるようです。母親は子どもが誕生したのに「おめでとう」の言葉もかかることなく、障害を持った子どもを産んだということを思い知らされ、悲しい思いをしています。

 

様々な病院や施設があるとは思いますが、このような複雑な心理の過程をたどる対象者に接する看護師は、根拠に基づいた専門的知識や技術が必要であるとともに、人間性が求められると感じています。看護師の態度や言動が母親の心にどれほど影響するかということを自覚しなければいけないと思い思います。

そういう職業を選んだ学生の皆さん、学ぶべきことはたくさんありますよ。がんばりましょう。

 

              草野 淳子 (小児看護学研究室)

 
 

2013年7月図書紹介

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

岩崎 夏海 著 (ダイヤモンド社 2010年)
 
 この本はご存知の方も多いと思います。通称「もしドラ」でTVアニメや映画にもなりましたね。実は、私がこの本と出会ったのは前の職場で看護師をしているときでした。リーダーになるためのマネジメント研修に参加した際に、部長から紹介された本でした。
 
この本の主人公「みなみ」は、高校野球部の新人マネージャーです。弱小校で甲子園に行くという目標を達成するため、試行錯誤しているときに出会ったのがドラッカーの「マネジメント」でした。みなみはマネジメントと出会うことで、選手や学校、見守る友人や家族にとってのニーズ、そして目標を考えるようになります。そして、野球部の練習方法を変えたり、野球部のメンバーに役割を与えるなどしていきました。すると、今まで練習もろくに行わなかった野球部に変化が・・・。続きは読んでみてください。「組織のニーズ、目標、どのようにマネジメントすれば組織を目標達成に向かわせることができるか」と考えさせられることの多い本でした。
 
 さて、この本を紹介した理由なのですが、マネジメント能力は様々なところで必要とされるからです。もちろん、看護師として働くときにもです。大元であるドラッカーの「マネジメント」は私も読みましたが、正直難しいです。しかし、この本では、「マネジメント」では、わかりづらい表現も野球部を例にとって表現されているため、とてもわかりやすいです。この本を読めば、少なくともマネジメントへの興味、動機づけにはつながると思います。そして、臨床の現場でマネジメントをしてみてください。
 
後藤 成人(精神看護学研究室)
 
 
 

2013年6月図書紹介

 「何 者」

朝井リョウ 著 (新潮社 2012年)

 

 この本の主人公は、みなさんと同世代の大学生です。彼らはTwitterを利用する現代における人間関係の中で揺れながら、就職活動に取り組んでいます。

 この本では、彼らの日々奮闘する様子と共に、自分の努力が実を結ばないことに悩む、結果を出すためにもがく他人を馬鹿にする、結果が出ている他人を羨ましく思う中で他人の欠点を見つけて安心しようとする等、彼らの生々しい感情が描かれています。その中で、著者のメッセージが急激に強く押し出されます。

 

 私も教員として、しばしば就職活動を含む様々なことについて、アドバイスを求められることがあります。これは非常に教員冥利に尽きるところですが、私の経験則は、世代も境遇も異なるみなさんにも当てはまるとは限りません。場合によっては、その内容を取捨選択する手間を取らせてしまうことがあるかもしれません。その点においては、私がアドバイスできることについて、ある種の限界を感じています。

 

 しかし、みなさんと同世代の著者(1989年生まれ)によるメッセージであれば、自分と似た感覚で共有できる点が多いと思います。そして、この本を読むことは、現代における人間関係の中でどのようなスタンスを取るか、就職活動についてどのように向き合っていくか等について、自らの考えをまとめる良い機会になるのではないでしょうか。

 おそらくこのような機会を持つことは、漫然と周囲に従う姿勢ではなく、自分の考えを持って行動し、周囲の意見を聞く姿勢を身につけることにも通ずるものがあると思います。新卒の就職活動を経験して随分経った私でさえも、この本に気づかされるところが多く、身が引き締まる思いがしました。

 

首藤 信通 (健康情報科学研究室)

 

 
 

2013年5月図書紹介

卵子老化の真実 

河合 蘭 著 (文藝春秋 2013年)
 
みなさんは「卵子の老化」を知っていますか?
 看護職を目指すみなさんだったら、性と生殖について詳しく学ぶ機会も多く、女性が年齢を重ねればいずれ妊娠しなくなるのは周知の事実だと思います。しかし晩婚化、晩産化の現代社会において、「いつまで産めるか」「子供のいる人生かいない人生になるのか」という人生の岐路に立たされている女性達が、「卵子の老化」という事実を知らないことがセンセーショナルな問題に取り扱われています。本当に「卵子の老化」を知らないことが問題なのでしょうか?
 
この本の著者は出産ジャーナリストという立場からこの問題を取り上げ、疑問を投げかけています。出産ジャーナリストなんて聞きなれない職業ですが、「専門領域のジャーナリズム」は看護の世界にも大いに参考になるものだと思います。
一般社会の人にわかりやすく「妊娠」のメカニズムを説明する内容や、歴史的文献及び資料を用いて現代社会のセオリーの矛盾を指摘する内容。インタビューや共同研究の結果をわかりやすく説明する内容など、その背景からは「若い人でも妊娠・出産にはリスクが伴うことを知ってもらいたい」「高齢妊娠でも安心して産める多様性のある社会になってもらいたい」というメッセージが随所に伝わってきます。
 
メッセージが強すぎる?と感じる部分もありますが、現象だけでなく対象の人生(男女の生き方)までをも見据え、社会の構造を鋭く捉えながらあらゆるデータを駆使してわかりやすく一般読者に問題の核心を提示していますので、これからみなさんが一般の方々に健康教育をする場面で、大いに参考になる本でしょう。
 
ちなみに本文中に本学梅野貴恵教授の名前も登場します。見つけてみてくださいね。
 
安部 真紀 (助産学研究室)
 
 

2013年4月図書紹介

「夢がかなう日 ~その時輝いた7人の子どもたち~」

(清水久美子 著 偕成社2002年)

 

みなさんは、メイク・ア・ウィッシュという団体を知っていますか?

「メイク・ア・ウィッシュ」とは、難病と闘う子どもたちの夢をかなえる国際的なボランティア団体です。アメリカ合衆国ではじめられた活動は、現在、日本にも支部が置かれ活動しています。

 

わたしがメイク・ア・ウィッシュを知ったのは、小児病棟に配属されてすぐのことでした。

「ミッキーに会いたい」「大きな水族館に行きたい」入院している子どもたちにとってこれらの夢は壮大なものです。その夢の実現へ向け、病棟でのカンファレンス、団体の方々との話し合いを重ねました。夢が実現した日、一人の子は、ミッキーマウスに会ったとき車いすから立ち上がり自分で歩いて近づいたそうです。たくさんの言葉を残してくれた子もいました。病棟に戻ってきた子どもがたくさんの写真を見せてくれ、笑顔で話をしてくれました。どの子もその時を一生懸命生き、その後の治療を最後までがんばりました。

 

この本の中には、夢をかなえた7人の子どもたちのエピソードがあります。病気と闘う中で夢をもつことがどれほど生きる力につながっているのか。夢の実現が子どもたちの生活にどれほどの力と影響をもたらすのか。そして、その夢を支える人々の思いがたくさんあります。

ぜひ、病気と闘う子どもたちが夢をもち精一杯生きていること、子どもたちの笑顔に支えられて活動している団体があることを知ってほしいと思い紹介しました。

 

                           足立 綾 (小児看護学研究室)