【研究紹介】The Relationship between Job Stress and Urinary Cytokines in Healthy Nurses: a Cross-Sectional Study
成人・老年看護研究室 福田 広美
Background

【研究紹介】大気汚染は男性の生殖機能に悪影響を与えるのか?
生体反応学研究室 吉田 成一



【研究紹介】夜間労働の時の眠気は何に影響されるか?~三交替で働く人の個人特性、生活習慣、仕事の内容との関係
影山隆之(精神看護学研究室)
人間という動物は、昼に活動して、夜に睡眠を取るようにできているので、夜働こうとすれば眠いのは当たり前です。ところが現代社会は、誰かが夜も働かなければ困るという世の中になってしまいました。工場、運輸、放送、医療など、いろいろな場面で、夜勤(夜の労働)が増えています。夜勤者の中には、いつも夜勤しかしない人と、日によって勤務時間帯が変わる人、つまり交替勤務者がいます。日本の企業の実に33%には夜勤者が、23%には交替勤務者がいるそうです。夜働き昼眠る生活は、人間という動物の性質に反しているので、昼間の睡眠は短く浅くなりやすいことがわかっています。このため交替勤務者には、よく眠れていないなどの睡眠問題を抱えている人が、日勤者よりはるかにたくさんいます。
この問題を健康という面から考えると、三つの影響が注目されます。第一に、よく眠れなければ、気分がすぐれないなど「生活の質」の低下が起こります。第二に、健康な日勤者でも睡眠が極端に短い人や極端に長い人では、何年か後に心疾患・糖尿病・アルツハイマー病性認知症などにかかる可能性が高いとか、平均余命が短いとかいうことが、最近の研究でわかってきました。だとすると、睡眠問題が多い交替勤務者でも同じなのか、ということが心配です。第三に、勤務中に強い眠気や居眠りが起こると、それが仕事のミスや事故の原因になります。実際、世界的に話題になった原発事故やタンカー座礁事故で、交替勤務者の睡眠問題が原因だったものは、たくさんあります。
そこで、「どうしても誰かが交替勤務をしなければいけない」とするならば、交替勤務者の睡眠を改善したり、夜勤時の眠気を改善したりする方法を知ることも必要です。そこで、ある工場で働く交替勤務者(たまたますべて男性でした)が夜勤の最中に感じている眠気と、個人特性・生活習慣・仕事の内容との関係について、調べました。
【研究方法】
ある工場で交替勤務に就いている男性157名を対象に、質問紙(アンケート)調査を行いました。半数以上が30歳代で、高齢の人はいませんでした。勤務時間は1週ごとに、日勤8:00~16:15→準夜勤16:00~0:15→夜勤0:00~8:15、と交替します(土日は休み)。仕事の内容は全員がほぼ同じで、残業はほとんどありません。
勤務中の眠気を測るには図1のような質問を使い、3つの勤務時間帯それぞれについて2時間おきに、ふだんの眠気(←→目覚め度)を1~9点の数字で答えてもらいました。数字が大きいほど眠気が強いわけなので、これを眠気得点と言うことにします。

図1 眠気尺度
このほか、年齢、交替勤務の経験年数、自分で主観的に判断した健康度、生活習慣、自分は朝型だと思うか夜型だと思うか、昼間眠らなければならない時の心がけ、職場環境など、さまざまなことを調べました。職場環境については、仕事の手順や締切りの判断を任されていると感じるか(コントロール感)、やりがいを感じるか、上司は自分を応援してくれているか、同僚は自分を応援してくれているか、などを調べました。
【結果】
図2は、各勤務時間の眠気得点の平均点を表します。日勤の場合、朝一番がもっとも眠く、午後にもう一度眠気のピークがあります。準夜勤の眠気が最低で、仕事が終わる20:00の眠気でも、夜勤に入る時の20:00の眠気ほど強くないことがわかりました。この時間帯は、働き盛りの人では「最も寝付きにくい時間帯」として知られています。働き盛りの夜勤の眠気は後半になるとますます強く、午前4時頃に最も強くなることもわかりました。この時間帯は、交替勤務職場で最もエラーが多い時間帯として知られています。


図2 勤務時間ごとの眠気 図3 交替勤務への慣れと夜勤時の眠気
交替勤務への慣れの程度によって回答者を2群に分け、それぞれの夜勤時の眠気得点を求めてみました。慣れの程度の高群とは、交替勤務に「非常に慣れた」8%、「かなり慣れた」51%を合わせた人たち、低群とは「少し慣れた」24%、「わずかに慣れた」10%、「慣れない」7%を合わせた人たちです。交替勤務に慣れないという群では夜勤時の眠気得点が高かったわけです。
図2と3を合わせて考えると、主観的に思い出して答えてもらった眠気得点も、数値としてはある程度信用できそうだということがわかりました。
次に図4は、夜勤が続いて昼間眠らなければいけない時の、睡眠前の心がけ(複数回答)を示します。9月に調査を行ったせいか、室温対策という答えが最も多く、光対策、飲酒(寝酒?)、入浴などがこれに次いでいました。
図4 昼間睡眠のための心がけ
最後に、夜勤時の眠気(図2)のうち0:00、2:00、4:00の眠気得点の平均を夜勤前半の眠気、4:00、6:00、8:00の眠気得点の平均を夜勤後半の眠気、と言うことにしました。そして、それぞれに関連が強い要因を、統計学の手法を使って探索しました(表1)。表1に数字がない要因は、夜勤前半(後半)の眠気との関連が弱かったということです。表1で、betaの値がプラスの場合には、その要因があると眠気が強いということです(値が大きいほど関連は強い)。反対に、betaがマイナスの場合には、その要因があると眠気が弱いということです(値が小さいほど関連は強い)。
表1 夜勤の時の眠気に関連する要因

この結果は次のように解釈できます。1)「自分はいま健康だ」と感じている人ほど夜勤時の眠気が弱い、というのは納得できます。2)朝型の人は夜型の人に比べ、早起きは得意だが夜勤や交替勤務は苦手だと言われてきましたが、それが今回の結果でも証明されました。3)回答者は皆ほとんど同じ業務に就いていますが、自分でペースや手順をコントロールできていると実感する人や、やりがい・達成感を味わっている人は、前向きに仕事に取り組んでいるためか眠気が弱いことがわかりました。受け身で渋々やっていると、眠くなるようです。4)寝酒は寝付きをよくしますが、後でトイレに起きたり、眠りが浅くなったりするので、トータルで見ると睡眠の量・質にはマイナス効果を及ぼすと言われています。今回も、飲む日が多い人ほど夜勤時の眠気が強かったのは、お酒のせいで睡眠の量・質が低下しているためでしょう。5)昼間の眠りに就く前にカフェインを摂らないよう心がけている人や、入浴で心身をリラックスさせている人は、夜勤時の眠気が弱いことがわかりました。これらの習慣は、短く浅くなりやすい昼間の睡眠を少しでも良眠にする効果があるのでしょう。
深夜に働かなければならない人(特にもともと朝型の人)のための夜勤時の眠気対策としては、全般的な健康管理、仕事の志気を向上させる工夫、そして、昼間の入眠や睡眠維持の助けとなる生活指導が、役に立ちそうだということが、この研究からわかりました。
【研究紹介】Development of a user-centered health information service system for depressive symptom management
国際看護学研究室 So woo Lee
Aim
A user-centered,Web-based depressive symptoms management system might be particularly useful in Korea,where those who seek mental health care face stigmatism and where personal computers and the Internethave reached saturation levels. The purpose of this article is to describe the development process of aWeb-based system for depressive symptom management through user-centered design principles.

Figure 1. User-centered model for research design.
Research design and Methods
Our designprocess included four distinct phases: a needs assessment, analysis, design/development/testing, and the applicationrelease. The final revised website was released with the URL address, “http://www.baejy.com/smiles/”.
Results
In the 3 years since the site was made available publicly, it is notable that 161 604 Koreans have accessed thiswebsite, either for educational purposes or for managing their depressive symptoms (table 1, table 2). A Web-based depressivesymptommanagement system with a high degree of usability was developed.This website can be used to assessdepressive symptoms and to serve as an intervention strategy to improve mental health.n
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Although no Web-based depression management system can completely replace the richness of the interaction between health providers and patients, the capacity to assess and report back information about mental health might empower the self-management or utilization of external resources. The growth of the Internet and online health seekers will continue to accelerate in Korea. These findings suggest that future, Internet-based, mental health interventions have a real potential to help Koreans who are suffering, or who are at risk of, depressive symptoms, particularly because of the stigma related to psychiatric therapy in Korea. In the 3 years since the site was made available publicly, 161 604 Koreans have used this website, either for educational purposes or to help manage their depressive symptoms.
This Web intervention could be employed for the assessment of depressive symptoms and as an intervention strategy for not only depressed people, but also for various other groups, such as community mental health practitioners. For example, this system enables nurses to screen those people with depressive symptoms among the general population as a primary prevention mechanism against depression. In addition, the Web users who access the site and are assessed with high levels of depression are offered counseling services by the principal author, who is a psychiatric nursing professor and practitioner, via the discussion board or email features. If clients’ depression levels remain severe and unimproved after counseling, they are referred then to psychiatric institutions for further treatment.
Not only does this scheme provide information and intervention to end users, it also offers links to appropriate institutions for further medical assistance, thereby aiding health-care practitioners in supplying proper mental health care to the public.
However, it is important to note that this intervention does not promise a total cure for depression, but acts as a medium to assess the severity of the depressive symptoms and to provide alternative, self-help, evidence-based interventions for its end users, that is, the general population.
The Internet site created by this research will continue to run in Korea as an open website for anyone who wants to make use of it. The second phase of this project includes an evaluation of the program. The principal investigator is planning to examine the effects of this program in changing depression scores in 2009. Greater efforts are required to explore these emerging technologies as we seek to reduce the burden of depression and to promote mental health.
Jeongyee Bae, RN, PhD1 ,Seth Wolpin, RN, PhD2, Eunjung Kim, RN, PhD2 ,Sookhee Yoon, RN, PhD1 ,and Kyungeh An, RN, PhD4
Department of Nursing, Inje University, Busan, Korea, 2School of Nursing, University of Washington, Seattle,Washington, 4School of Nursing, University of Texas Medical Branch, Galveston, Texas, USA
【研究紹介】食事接取状況からみた骨代謝-中学生と透析患者を対象とした調査結果から-
生体科学研究室 岩崎香子
図1: 年間踵骨量変化 |
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| 図2:摂取エネルギー、カルシウム割合の変化 |
以上の結果から成長期に十分な骨量を獲得するには気をつける点がいくつか考えられます。
| 図3:骨密度と石灰化防止タンパク質濃度との関連 |
【研究紹介】ユズ果皮成分のアレルギー軽減効果 --アトピー性皮膚炎モデル動物を用いた結果--
生体反応学研究室 定金 香里
生体反応学研究室では、生体に悪影響を及ぼす環境物質の探索とそのメカニズムを明らかにすることを研究のメインテーマとしています(本項第一回「黄砂アレルギー」をご参照下さい)。しかし、今回は悪影響ではなく、アレルギー軽減について調べた動物実験の結果をご紹介します。
マウス(NC/Nga系)を2群に分け、一方にはユズ果皮成分(0.3 mg/animal)を2~3日毎に12回、経口投与し、もう一方にはユズ果皮成分を与えませんでした。その後、どちらの群にも、アレルゲンを耳介皮下に頻回投与し皮膚表皮にアトピー性皮膚炎を誘発しました。アトピー性皮膚炎の症状を評価するために、重症度をスコア化しました。また、アレルギー発症時に血液中で増加するIgE抗体、IgG1抗体、皮下組織中で増えるマスト細胞や好酸球の数をカウントしました。
《結果》
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図1. マウスの耳介像 |
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| 図2. 血中抗体産生 |
マスト細胞数・好酸球数(図3) 炎症が起きている皮下組織には、炎症細胞が多数、存在します。炎症細胞のうち、マスト細胞と好酸球の数を調べました。すると、ユズ果皮成分を与えたマウスでは、与えなかったマウスに比べてマスト細胞数も好酸球数も減っていることがわかりました。
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| 図3. 皮下組織中の炎症細胞数 |
【研究紹介】母親の食意識と3歳児の肥満や食行動との関連についての検討
小児看護学研究室 高野政子
Ⅰ. はじめに
【研究紹介】「かくこと」によって何がもたらされるのか?-幾何の問題解決場面を通した分析-
人間関係学研究室 吉村 匠平
私ごとですが、小学校や中学校の作文、非常に面倒でした。遠足に行けば作文、夏休みには読書感想文、運動会が終わるとまた作文、将来の夢まで作文。そういう作業を繰り返すなかで、いつのまにか「書くこと」へのぎこちなさばかりを学んでしまいました。皆さんはいかがでしょう?今回紹介する研究は、昔年の恨みを研究で晴らすという屈折した動機のもと行ったものです。「かくこと」を、作文に限定されないもっと広い視点から捉え直すため、幾何(図形)の問題解決場面を取り上げました。幾何の問題解決場面では、「答案の作成」という形で行われる採点者に読ませるために行われる「かくこと」と、問題の解法を探るために行われる他者に読ませることを前提としない「かくこと」、その両方が行われます。両方の「かくこと」を対比することで、何か見えてくるものがあるのではないかと考えて行ったのが表題の研究です。今回はその一部を紹介します。
対象者 大学生、大学院生24名。
課題 中学1~2年程度の知識(公式の理解)で解くことが可能な平面図形の問題。問題文に書いてあることに定理を当てはめるだけでは解けない、いわゆる「難問」。難問にしたのは、読んだ瞬間にあっさり解けた!ということになると、かいている様子を分析できないからです。対象者の手元にベルを置き、問題の内容を把握したらベルを1回、問題が解けたと思ったらベルを2回鳴らすようにお願いしました。

課題提示装置 問題解決の進行状況を調べるため、右図のような装置を作成しました。「問題」と書かれた板の裏には問題文を、「図」と書かれた板の裏面には問題に添付されている図を、「答案」と書かれた板の裏には、答案作成用紙を貼り付けました。問題文を読みたいときには、「問題」の板を手前に折り下げ、図を見たいときや図にかき込みをしたいときには、「図」の板を右側に折り返して、答案を作成したいときには、「答案」の板を左に折り返すよう教示しました。板の大きさは、同時に2枚を折り返そうとすると相互に干渉するようにしました。このため、他の板を見る時には、既に折り返している板を元に戻してから折り返すことになります。対象者にあっちの板こっちの板をはぐりながら問題を解いてもらい、その様子を2台のビデオカメラで録画しました。下の図は実際のかき込みの例です。
実験計画 二要因の計画を組みました。1つ目の要因は、「かくこと」に加える制限の種類です。自分の手を動かしてかくことを禁止し実験者が代筆する「行為禁止群」、かかれたものの見直しを禁止する「所産活用禁止群」(実際にはカーボンコピーをとり、実験後に何をかいていたかを確認しました)と、行為と所産活用を同時に禁止する「全禁止群」、制限を加えない「統制群」の4つです。もう1つの要因は、制限を加える対象の種類です。問題に添付された図へのかき込みを制限する群と、答案の作成を禁止する群を設定しました。4通りの制限×2つの対象で8通りの条件になります。1人の対象者には、複数の条件で異なる問題を解いてもらいました。

結果 ①問題解決の達成度 本実験と無関係の人2名(数学講師経験者)に採点を依頼しました。採点は5段階評定。分析の結果、答案作成に制限を加えても問題解決に影響しないこと、図へのかき込みへの制限に関しては、行為禁止群、所産活用禁止群では、問題解決に影響はみられないが、両方同時に制限する全禁止群では、問題解決が遅滞することがわかりました。
②主観的に感じた困難度 対象者自身に、統制群と比較した際に感じる問題解決の困難度を5段階で評定してもらいました。その結果、図へのかき込み×全禁止群が、答案の作成×全禁止群より、問題解決が遅滞すると感じていることがわかりました。
③その他の分析 ①と②の結果から、問題解決の進展に影響するのは、図へのかき込みの制限であることが示されました。以後、図へのかき込みのみを対象に、かき込まれた痕跡、録画情報に基づいた分析を行いました。結果を示します。
・行為禁止・所産活用禁止群は、統制群より図へのかき込み量が少ない。特に、問題文に書かれた情
報や定理を組み合わせて生成される情報のかき込みが少ない。
・行為禁止群は、まず最初に問題文に記された情報の図への代書を求め、その後は図を見つめて問題
を解いた。
・行為禁止群は、答案作成時に問題文を見直す者の割合が多かった。
・所産活用禁止群は、図にかかれた線分をなぞったり、等しい大きさの角を抑えたり、空書(空中に
図を描く)などを行いながら問題を解いていた。
・所産活用禁止群は、答案を作成する間に図を触る時間が長かった。
・統制群では、試行錯誤的な図へのかき込みを行いながら問題を解いていた。
・全禁止群では、問題文を見直しながら問題を解く者の割合が多かった。
考察 以上の分析から、「図へのかき込み×行為禁止群」と「図へのかき込み×所産活用禁止群」では問題解決に遅滞は見られないものの、問題解決のプロセスに違いが生じることが示されました。
行為禁止群では、自分の手を使って図にかき込むことが禁止されます。そのため、必要な情報を図に代書させ、それを見つめることで問題を解き、答案の作成時にも問題文を見直していました。つまり、目に見える情報~他者への伝達・共有が可能な情報を活性化させることで問題を解いていたと考えられます。
これに対し所産活用禁止群では、かいた痕跡の見直しができません。そのため、図の線分をなぞったり、角を抑えたり、空書をしたりしながら問題を解いています。答案作成時にも、問題文を見直すのではなく、図に触りながら答案を作成しています。つまり、他者への伝達・共有が困難な運動感覚情報をできるだけ活性化させることで問題を解いていたと考えることができます。
以上のことから、数学の問題場面で行われる図へのかき込みを、①自分の身体を動かし図に働きかけることで運動感覚情報を生成する、②それと同時に図の中に痕跡が残る、③その痕跡を自分自身が読み取る、④読み取ることで新たな気づき(意味、発見)が生じる、⑤「①」に戻る、という形で進展する、一種の対話的な活動であると捉える見方を提示しました。
結語 私はホームページに掲載された自分の文章を見て、その杜撰さに頭を抱え込むことでしょう。私の書いたものでありながら、それが私の外部から私に語りかけてくる。このような対話的状況(時間的、空間的な「差異」)を作り出すことが、かくことによってもたらされるのだと考えます。
成果発表
Yoshimura Shohei(1989) The Metacogition of Writing in Mathematic Problem Solving. The13th Psycology of Mathematics Education Congress. Paris.
吉村匠平(1990) 問題解決場面においてあらわれる「かくこと」とその機能について 日本教育心理学会第32回大会(大阪大学)
吉村匠平(1993) 幾何の問題解決場面において用いられる「かくこと」に対する認知 日本教育心理学会第35回大会(名古屋大学)
吉村匠平(2000) 「か<こと」によって何がもたらされるのか?一幾何の問題解決場面を通した分析一 教育心理学研究第48巻 85-93.
【研究紹介】母乳育児期間と更年期症状の関係についての検討-人工栄養育児との比較から-
母性看護学・助産学 梅野 貴恵
Ⅰ.緒言
更年期女性の健康の重要性は、少子化や人口の急速な高齢化を背景にクローズアップされてきている。更年期女性自身の心理・性格的因子や社会・文化的因子は更年期症状の発現に大きな影響をもたらしているが、その要因間の関係は明らかになっていない。更年期女性を対象にした心理・社会的因子である夫婦関係満足感や生きがい感、仕事のやりがいと更年期症状(Simplified Menopausal Index : SMI)についての著者の調査1)から、成熟期における授乳経験と更年期症状との関連も示唆された。そこで、本研究では、母乳育児経験のある現在更年期の女性を対象にした調査を行い、更年期症状の発現の程度を人工栄養育児経験のある女性の更年期症状と比較し、さらに母乳育児期間・無月経期間の長さと更年期症状の関連を明らかにすることを目的とした。
Ⅱ.研究方法
1. 研究デザイン
留置郵送法による自記式質問紙調査
2. 調査対象および調査期間
調査対象者は、出産した児に対し少なくとも1人は12ヶ月までの母乳栄養育児を継続したことのある、現在40~60歳の女性103名とした。対照の母乳育児経験のない女性の更年期症状の出現の程度は、著者らが2003年に調査した40~60歳の一般住民528名のうち、主に人工栄養で育児した90名から得られたデータを用いた。調査期間は、2005年5月~12月で 表1 簡略更年期指数(Simplified Menopausal Index;SMI) 症 状 判 定 なし 弱 中 強 顔がほてる 0 3 6 10 汗をかきやすい 0 3 6 10 腰や手足が冷えやすい 0 5 9 14 息切れ、動悸がする 0 4 8 12 寝つきが悪い、または眠りが浅い 0 5 9 14 怒りやすく、すぐイライラする 0 4 8 12 くよくよしたり、憂うつになる事がある 0 3 5 7 頭痛、めまい、吐き気がよくある 0 3 5 7 疲れやすい 0 2 4 7 肩こり、腰痛、手足の痛みがある 0 3 5 7 <合計得点の評価> 0~25点:日常生活に問題なし 26~50点:食事、運動に気をつけ、無理をしないように 51~65点:更年期ー閉経外来で生活カウンセリング、薬物療法を受けた方がよい 66点以上:長期(半年)の治療が必要
ある。
3. 調査内容
1) 更年期症状
更年期症状の発現の程度は、小山2)の簡略更年期指数(Simplified Menopausal Index : SMI) 10項目(表1)を用いて把握した。各対象者のSMIの合計得点(0~100点)を、小山の評価区分を参考にし、0~25点を更年期症状の「問題なし群」、26~50点を「軽症群」、51点以上を「重症群」と分類した。
2) 妊娠・分娩経験や月経の状態
妊娠回数、出産回数、出生児ごとの出産の種類、児への栄養法、出産後の月経の開始時期、現在の月経状態、閉経年齢等について質問した。
4. 分析方法
統計解析には、SPSS ver12.0を使用しSMI平均得点の2群間の比較にはMann-WhitneyのU検定、SMI得点と母乳育児期間・無月経期間との関連は、一元配置分散分析およびBonferroni法による多重比較を用いた。すべての有意水準はp=0.05とした。
5. 倫理的配慮
本研究は、大分県立看護科学大学の研究倫理・安全委員会の承認を得て実施した。質問紙は無記名とし、対象者には、調査で得られた情報を研究目的以外に使用しないこと、プライバシーは確実に保護されること、回答・返信は強制されるものではなく自由意思であることを文書で説明した。
Ⅲ.結果
1. 対象者の背景
対象者の調査時の年齢は43~60歳で、平均年齢は50.6±3.5歳であった。授乳経験は第2子までは混合・人工栄養の場合も含まれているが、第3子以後は全員が母乳育児であった。また個人でみた場合、少なくとも12ヶ月の母乳育児経験があった。対象者の47.6%は調査時点で月経が無く、平均閉経年齢は49.8±2.2歳であった。このグループを「長期母乳育児群」とした。対照群の年齢は40~60歳で、平均年齢は49.8±5.5歳であった。対象者の42.2%は調査時点で月経が無く、平均閉経年齢は50.2±2.6歳であった。このグループを「人工栄養育児群」とした。
2. 更年期症状の発現頻度と程度 表2 更年期症状の程度 問題なし群 (SMI0~25点) 軽症群 (SMI26~50点) 重症群 (SMI51点以上) SMI 平均得点±SD 長期母乳育児群(n=103) 66(64.1) 31(30.1) 6( 5.8) 21.7±17.0 ** 人工栄養育児群(n=90) 32(35.6) 42(46.7) 16(17.8) 35.7±19.0 **p<0.01
「長期母乳育児群」と「人工栄養育児群」のSMI合計得点により区分した更年期症状の程度(「問題なし群」、「軽症群」、「重症群」)を表2に示す。「長期母乳育児群」のSMI平均値は21.7±17.0点で、「人工栄養育児群」の平均値、35.7±19.0点に比べ有意に低かった(p<0.01)。
SMI10項目の各症状について「なし」を除く、「弱」「中」「強」を更年期症状の発現ありとし、それぞれの症状の発現頻度を図1に示す。
「長期母乳育児群」の発現頻度が高い症状は、「肩こり・腰痛・手足の痛み」、「疲れやすい」であり、他の8項目は30~50%程度の者に発現がみられた。「人工栄養育児群」で発現頻度が高い症状は、「肩こり・腰痛・手足の痛み」、「怒りやすく、すぐイライラする」であり、他の8項目は、50~70%程度の者にみられており、「肩こり・腰痛・手足の痛み」、「疲れやすい」、「頭痛、めまい、吐き気がよくある」以外の項目において「長期母乳育児群」に比べ発現頻度が高かった(p<0.01)。
3. 母乳育児期間・産後の無月経期間と更年期症状との関連
「長期母乳育児群」の授乳経験のうち、母乳育児を行なった全期間の長さ別に分けた群および「人工栄養育児群」と更年期症状との関連を図2に示す。母乳育児期間が合計36ヶ月以上長く母乳育児を行なった群の平均得点は17.3±19.0点でありすべての群で一番低かった。母乳育児期間が13ヶ月以上の各群のSMI得点は、「人工栄養育児群」のそれに比べて有意に低かった(p<0.01)。また、産後の月経開始時期までの無月経期間を合計した長さ別に分けた群と更年期症状との関連は認められなかったが、無月経期間が長いほどSMI得点が低くなる傾向がみられ、特に36ヶ月以上無月経群のSMI平均値は18.5±19.4点で低い傾向がみられた。
| 図2 母乳育児期間の長さおよび人工栄養育児群とSMI得点の関連 |
Ⅳ.考察
調査対象者が出産・子育てを経験した時期は、多くの病産院では人工乳を導入しており、退院までの数日は児へ人工乳が与えられていた時代である。当時の母乳育児率は、生後3ヶ月で40%未満であり3)、母乳不足についての誤った知識や離乳の進んだ8~10ヶ月には母乳育児を中止するような指導も行なわれていた4)。したがって、「長期母乳育児群」のように生後1年以上の長期間にわたり母乳育児を継続することは、母親自身の努力や家族のサポート、さらに熟練した助産師の乳房ケアや生活指導などの積極的なサポート5)によるものであり、当時の母親たちの中でもごく一部にすぎない。しかし、そのような背景の中で母乳育児を長期間にわたり継続した経験をもつ「長期母乳育児群」は今後の母乳育児に対するさまざまな研究を実施するうえで貴重な存在であると考えている。
今回調査した「長期母乳育児群」のSMI得点の平均値は、「人工栄養育児群」のSMI得点の平均値と比較して低く、ほとんどの者が「問題なし」か、日常生活に注意する程度で生活できている。また更年期症状の10症状のうち、「肩こり・腰痛・手足の痛み」「疲れやすい」の発現頻度が高いという結果は、日本人女性における他の報告6、7)や、著者の2003年調査とも同様の結果1)であった。更年期のエストロゲンの急激な低下に起因する顔面紅潮、不眠、発汗は、回答者の3割程度に現れており、日本人女性を調査した先行研究8)と同様の傾向であるが、「人工栄養育児群」の発現頻度50~65%に比べ有意に低かった。また「長期母乳育児群」はすべての項目で「人工栄養育児群」より更年期症状の発現が低かった。つまり、1年以上の母乳育児経験のある女性は、全般的に更年期症状の発現頻度は低いと考えられる。
次に、母乳育児期間の長さとSMIの関連を検討した結果、「人工栄養育児群」に比べると、特に母乳育児36ヶ月以上の女性は、SMI得点が低い。また、産後の無月経期間が長い人は、SMI得点が低い傾向にある。母乳育児期間が長くなれば、無月経期間が長くなり、それが10数年から数10年後の更年期症状に何らかの影響を与えていると予測される。無月経期間が長いということは、無排卵の状態、つまり低エストロゲン状態が継続されていることを意味する。したがって、妊娠期から産後数ヶ月間、視床下部‐下垂体‐卵巣系の機能が抑制された状態が続いていることになり9)、母乳育児中の女性は、更年期の卵巣機能の低下と似たような内分泌状態を体験している。すなわち妊娠・出産、授乳といったダイナミックな内分泌系の生理的変化が、女性の一生のホルモンバランスを整えることにつながっている可能性が示された。
Ⅵ.成果発表
梅野貴恵,宮﨑文子,草間朋子,他.母乳育児期間と更年期症状の関係についての検討-人工栄養育児との比較から-.日本更年期医学会雑誌.2007,15(2),223-232.
引用文献
1) 梅野貴恵,宮﨑文子,河島美枝子,関根剛.更年期女性の更年期症状(SMI得点)と心理社会的要因との関連.母性衛生.47(1):143-152,2006
2)小山嵩夫.更年期―閉経外来―更年期から老年期の婦人の健康管理について―.日本医師会雑誌.100(2):259-264,1993
3) 松原まなみ,山西みな子.母乳育児をめぐる諸問題,母乳育児の看護学.大阪:メディカ出版,pp6-26,2003
4) 澤田啓司.日本の母乳栄養の歴史.助産婦雑誌.33(9):28-36,1979
5) 平田喜代美.おっぱい110番.東京:たま出版,pp14-80,pp98-127,1995
6) 廣井正彦,麻生武志,相良祏輔,永田行博,本庄英雄,大濱紘三,小山嵩夫,太田博明,廣田憲二,野崎雅祐.生殖・内分泌委員会報告(更年期障害に関する一般女性へのアンケート調査報告).日本産科婦人科学会雑誌. 49(7):433-439,1997
7) 柴田玲子.中年期女性にとっての閉経と更年期.日本更年期医学会雑誌. 9(2):247-255,2001
8) Lock, M.Views of Japanese women on menopause, A discussion based on cultural differences with Canada and America. J Jpn Menopause. 5(1):53-59,1997
9) 佐川典正.産褥の生理,内分泌・代謝系の変化.武谷雄二編.(新女性医学大系32)産褥.東京:中山書店,pp16-26,2001
【研究紹介】体力テストの測定値を用いた身体組成の推定
健康運動学研究室 稲垣 敦


という形になります。したがって、除脂肪体重、身長、体重、垂直跳びのデータを用い、係数A、B、Cを推定すれば、除脂肪体重の推定式が得られ、体脂肪率も簡単に算出できます。実際に、中学生の男子305名のデータを用い、BIAで測定した除脂肪体重を基準として係数A、B、Cを推定し、この推定式で除脂肪体重を推定した結果、基準値と推定値の相関係数は0.971とかなり高い推定精度が得られました。
この推定法では推定式を簡単なものにするために大胆に単純化していますが、厳密なことを言えば、動作の再現性や個人差、体力テストの信頼性、筋組成の個人差など仮定の適切さについて検討すべき問題がたくさんあります。一方、技術の進歩は速いもので、BIAはさらに進歩し、筋量や内臓脂肪の推定、身体部位毎の推定が実用化されており、既にこの方法の出る幕はなくなったようです。しかしながら、私にとってこの経験は体力テストの活用を考える一つのきっかけとなりました。







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