【研究紹介】The Relationship between Job Stress and Urinary Cytokines in Healthy Nurses: a Cross-Sectional Study

 成人・老年看護研究室  福田 広美

 

Background

Cytokines, such as angiogenin (ANG) and interleukin (IL-8) have been shown to be related to depressive symptoms or inflammatory diseases, like coronary heart diseases, and may be used as stress biomarkers to identify and prevent health problems in nurses. To investigate the relationship between cytokines and nurses’ job stress, urinary ANG or IL-8 were monitored in hospital nurses in Japan.
 
Methods
   The job stresses of 118 healthy female nurses working at general hospitals were evaluated by the Nursing Stress Scale (NSS). The subjects were classified into high and low stress groups according to the stress levels in each NSS subscale. Their subjective psychological states were assessed by the Profile of Mood States Short Form Japanese version (POMS-SFJ). Their urinary ANG, IL-8 and cortisol levels versus subjective psychological states from two groups were compared.
 
Results & Discussion
The fatigue and depression scores of POMS-SFJ subscales in the present study were higher than those of the general Japanese healthy population (2005). Therefore, the subjects in the present study seemed in a chronic stress state.
   Based on the score of total subjects, nurses who were experiencing the pressure of having the responsibility for patients’ life support care (PPLC) were the highest among the possible scores of the NSS subscales. Nurses with high job stresses from PPLC and experienced conflict with physicians had a high level of urinary ANG.
   ANG has been implicated in the pathogenesis of inflammatory diseases, such as atherosclerosis and CHD. In this study, the high stress group experiencing conflict with physicians showed not only higher levels of urinary ANG (Figure 1B), but also showed higher POMS-SFJ subscale scores in anger-hostility, fatigue, depression and TMD in comparison to the low stress group (Table 2). Therefore, a nurse with high stress, caused by conflict with physicians, may have a higher risk of inflammatory diseases than a nurse with low stress does.
No significant differences in the POMS subscale scores, with the exception of the fatigue score, were observed among the high and low stress groups experiencing PPLC (Table 2). However, urinary ANG level in the high stress group experiencing PPLC was significantly higher than that in the low stress group (Figure 1A). Therefore, urinary ANG was considered to be a biomarker, which detected the physical distresses of nurses before they are conscious of the negative psychological states such as anger, hostility, and depression in the PPLC.
 
This study was supported by a grant-in-aid for scientific research from the Ministry of Education, Culture, Science and Technology of Japan.
 
Fukuda H, Ichinose T, Kusama T,Yoshidome A, Anndow K, Akiyoshi N, Shibamoto T. The Relationship between Job Stress and Urinary Cytokines in Healthy Nurses: a Cross-Sectional
Study. Biological Research For Nursing, Vol 10, No 2, 183-191,
 
 
 
Table 1. Nursing Stress, Urinary Bio-markers Levels and Mood States of the Hospital Female Nurses
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All values are expressed as Mean ± SD. POMS = Profile of Mood States Scale (McNair, Lorr, & Droppleman, 1971; Yokoyama, 1990, 2005). NSS = Nursing Stress Scale (Kageyama et al., 2001).a. Urine cytokines and cortisol values were normalized to creatinine.
 
 
 
Table 2. Subjective Mental State by POMS-SFJ Scale in the High and Low Job Stresses Groups in the Each NSS Subscale
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NOTE: All values are Mean ± SD. POMS = Profile of Mood States Scale (McNair, Lorr, & Droppleman, 1971; Yokoyama, 1990, 2005). NSS = Nursing Stress Scale (Kageyama, Nishikido, Kobayashi, Oga, & Kawashima, 2001). TMD = Total Mood Disturbance Scores. The subjects were classified into high and low stress groups by a mean split of the NSS subscales scores. The effect of the each stress on mood states was analyzed by ANCOVA with age as the covariate. a. p < 0.05. b. p < 0.01. c. p < 0.001
 
    
 
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Figure 1. Effect of each stress in the NSS in urinary ANG and cortisol levels.
Note. All values are Mean ± SD. Urine cytokines and cortisol values were normalized to creatinine. Data were analyzed by ANCOVA with age as the covariate.
In A. High stress group, n = 83. Low stress group, n = 35.   
In B. High stress group, n = 59. Low stress group, n = 57.  
In C High stress group, n = 82. Low stress group, n = 36.   
 * p < 0 .05.       
 

 

【研究紹介】大気汚染は男性の生殖機能に悪影響を与えるのか?

 生体反応学研究室  吉田 成一

 
【はじめに】
 最近40~50年間で男性の精子数が減少しているという報告 (1)があってからおよそ10年程度経っています。精子数が減ることの原因として、喫煙やダイオキシンなどの有害物質が挙げられていますがほとんど分かっていないが現実です。
 しかし、精子数の減少は多くの国で見られていた現象であることから、何らかの環境因子が関与しているのではないかと考えられます。そこで、身近な環境因子である大気汚染と男性の精子数との間に関係はないかと思い、研究を行っています。大気汚染と言っても様々なものがありますが、特に空気中に漂っている微粒子に着目して研究を行ったところ、精子を作る能力が低下すると言うことを見つけましたので、その研究について紹介します。
 
【空気中の微粒子】
 空気中に漂っている微粒子は浮遊粒子状物質 (SPM)と呼ばれ、環境省や世界保健機関 (WHO)で、大気汚染物質の一つとして規制されています。浮遊粒子状物質は土埃やこの研究紹介の一回目に話しが出ました黄砂などの自然界由来のもののほか、工場からの排煙や自動車の排気ガス中に含まれる微粒子などの産業・工業由来のものが含まれます。タバコの煙の中の微粒子も浮遊粒子状物質の一つと言えます。この浮遊粒子状物質の健康影響として、アレルギーや呼吸器系の病気などを引き起こすことが知られています。最近では粒子の大きさが小さい粒子 (ナノ粒子やPM2.5と呼ばれている粒子)が健康に悪影響を与えるのではないかと懸念されています。
 
【微粒子の精子を作る能力への影響】
 私たちは、微粒子の精子を作る能力 (精子産生能)への影響を検討しました。検討した微粒子は、レーザープリンターのトナーなどとして使われているブラックカーボンナノ粒子です。この微粒子を浮遊粒子状物質の模擬粒子として用いました。異なる大きさの微粒子 (14nm、56nm、95nm)を雄マウスの気管から肺に注入しました。そうすると、微粒子を与えなかったマウスと比較すると、精子産生能は微粒子を注入したマウスで明らかに低くなりました (図1)。また、精子を作る場所となる精巣が痛んでいることも分かりました (図2) (2)。
 
 
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図1   マウスが一日に作り出す精子の数の変化
 
 
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図2  微粒子を与えることにより生じる精巣組織の障害
 
【微粒子を妊娠している母親に与えたときの出生した子どもへの影響】
 最近、男性は生まれてから受ける影響だけでなく、母親のお腹の中にいるときに受けた影響もあるということが言われ始めてきています。そこで、私たちは、妊娠している母親マウスに微粒子を与えて、生まれてきた雄の子マウスの精子産生能などを調べました。すると、微粒子を与えられなかった母親から生まれてきた雄の子マウスよりも微粒子を与えられた母親から生まれてきた雄の子マウスの精子産生能が低くなることが分かりました (図3)。そして、その影響は、子マウスが小さいときから成長した後まで低いままであることも分かりました (3)。
 
 
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図3  微粒子を与えられた母親から生まれてきた雄の子マウスが作り出す精子の数の変化
 
【国内外における調査研究】
 イタリアで高速道路の料金所で働いている男性の精子の質が悪くなることが報告されています (4)。日本でも、慶応大学の研究で、ここ30年の間で日本人男性の精子数が約12%減少したと言う報告や帝京大学の研究で20代の男性は30代以上の男性より精子数が少ないという報告があります。
 
【まとめ】
 私たちは、大気汚染物質の一つである浮遊粒子状物質の模擬粒子を雄のマウスに与えると、精子産生能が低下すること、精子を作る場所である精巣が傷害されることを報告しています。また、微粒子を妊娠している母親マウスに与えると出生した雄の子マウスの精子産生能が低下することも報告しています。ヒトにおける精子数の低下と大気汚染物質の一つである浮遊粒子状物質の間に関係があるかははっきりしていませんが、悪影響を与える可能性はあります。今後これらの関係を注意深く考えていく必要があると考えています。
  なお、この研究は、本研究室の数多くの卒論生とともに行った研究の一部を紹介したものです。
 
【文献】
1. Carlsen E, Giwercman A, Keiding N, Skakkebaek NE. Evidence for decreasing quality of semen during past 50 years. Br Med J 1992; 305: 609-613.
2. Yoshida S, Hiyoshi K, Ichinose T, Takano H, Oshio S, Sugawara I, Takeda K, Shibamoto T. Effect of nanoparticles on the male reproductive system of mice. Int J Androl. 2009: 32(4):337-42
3. Yoshida S, Hiyoshi K, Oshio S, Takano H, Takeda K, Ichinose T. Effects of fetal exposure to carbon nanoparticles on reproductive function in male offspring. Fertil Steril. 2010: 15;93(5):1695-9
4. De Rosa M, Zarrilli S, Paesano L, Carbone U, Boggia B, Petretta M, Maisto A, Cimmino F, Puca G, Colao A, Lombardi G. Traffic pollutants affect fertility in men. Hum Reprod. 2003: 18(5):1055-61.
 

【研究紹介】夜間労働の時の眠気は何に影響されるか?~三交替で働く人の個人特性、生活習慣、仕事の内容との関係

影山隆之(精神看護学研究室)

 

人間という動物は、昼に活動して、夜に睡眠を取るようにできているので、夜働こうとすれば眠いのは当たり前です。ところが現代社会は、誰かが夜も働かなければ困るという世の中になってしまいました。工場、運輸、放送、医療など、いろいろな場面で、夜勤(夜の労働)が増えています。夜勤者の中には、いつも夜勤しかしない人と、日によって勤務時間帯が変わる人、つまり交替勤務者がいます。日本の企業の実に33%には夜勤者が、23%には交替勤務者がいるそうです。夜働き昼眠る生活は、人間という動物の性質に反しているので、昼間の睡眠は短く浅くなりやすいことがわかっています。このため交替勤務者には、よく眠れていないなどの睡眠問題を抱えている人が、日勤者よりはるかにたくさんいます。

 この問題を健康という面から考えると、三つの影響が注目されます。第一に、よく眠れなければ、気分がすぐれないなど「生活の質」の低下が起こります。第二に、健康な日勤者でも睡眠が極端に短い人や極端に長い人では、何年か後に心疾患・糖尿病・アルツハイマー病性認知症などにかかる可能性が高いとか、平均余命が短いとかいうことが、最近の研究でわかってきました。だとすると、睡眠問題が多い交替勤務者でも同じなのか、ということが心配です。第三に、勤務中に強い眠気や居眠りが起こると、それが仕事のミスや事故の原因になります。実際、世界的に話題になった原発事故やタンカー座礁事故で、交替勤務者の睡眠問題が原因だったものは、たくさんあります。

 そこで、「どうしても誰かが交替勤務をしなければいけない」とするならば、交替勤務者の睡眠を改善したり、夜勤時の眠気を改善したりする方法を知ることも必要です。そこで、ある工場で働く交替勤務者(たまたますべて男性でした)が夜勤の最中に感じている眠気と、個人特性・生活習慣・仕事の内容との関係について、調べました。

 

【研究方法】

ある工場で交替勤務に就いている男性157名を対象に、質問紙(アンケート)調査を行いました。半数以上が30歳代で、高齢の人はいませんでした。勤務時間は1週ごとに、日勤8:00~16:15→準夜勤16:00~0:15→夜勤0:00~8:15、と交替します(土日は休み)。仕事の内容は全員がほぼ同じで、残業はほとんどありません。

 勤務中の眠気を測るには図1のような質問を使い、3つの勤務時間帯それぞれについて2時間おきに、ふだんの眠気(←→目覚め度)を1~9点の数字で答えてもらいました。数字が大きいほど眠気が強いわけなので、これを眠気得点と言うことにします。

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             図1 眠気尺度

 このほか、年齢、交替勤務の経験年数、自分で主観的に判断した健康度、生活習慣、自分は朝型だと思うか夜型だと思うか、昼間眠らなければならない時の心がけ、職場環境など、さまざまなことを調べました。職場環境については、仕事の手順や締切りの判断を任されていると感じるか(コントロール感)、やりがいを感じるか、上司は自分を応援してくれているか、同僚は自分を応援してくれているか、などを調べました。

 

【結果】

 図2は、各勤務時間の眠気得点の平均点を表します。日勤の場合、朝一番がもっとも眠く、午後にもう一度眠気のピークがあります。準夜勤の眠気が最低で、仕事が終わる20:00の眠気でも、夜勤に入る時の20:00の眠気ほど強くないことがわかりました。この時間帯は、働き盛りの人では「最も寝付きにくい時間帯」として知られています。働き盛りの夜勤の眠気は後半になるとますます強く、午前4時頃に最も強くなることもわかりました。この時間帯は、交替勤務職場で最もエラーが多い時間帯として知られています。

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                図2 勤務時間ごとの眠気                     図3  交替勤務への慣れと夜勤時の眠気

 交替勤務への慣れの程度によって回答者を2群に分け、それぞれの夜勤時の眠気得点を求めてみました。慣れの程度の高群とは、交替勤務に「非常に慣れた」8%、「かなり慣れた」51%を合わせた人たち、低群とは「少し慣れた」24%、「わずかに慣れた」10%、「慣れない」7%を合わせた人たちです。交替勤務に慣れないという群では夜勤時の眠気得点が高かったわけです。

 図2と3を合わせて考えると、主観的に思い出して答えてもらった眠気得点も、数値としてはある程度信用できそうだということがわかりました。

 次に図4は、夜勤が続いて昼間眠らなければいけない時の、睡眠前の心がけ(複数回答)を示します。9月に調査を行ったせいか、室温対策という答えが最も多く、光対策、飲酒(寝酒?)、入浴などがこれに次いでいました。

 

   kageyama_Fig4.jpg              

                                           図4 昼間睡眠のための心がけ

 

最後に、夜勤時の眠気(図2)のうち0:002:004:00の眠気得点の平均を夜勤前半の眠気、4:006:008:00の眠気得点の平均を夜勤後半の眠気、と言うことにしました。そして、それぞれに関連が強い要因を、統計学の手法を使って探索しました(表1)。表1に数字がない要因は、夜勤前半(後半)の眠気との関連が弱かったということです。表1で、betaの値がプラスの場合には、その要因があると眠気が強いということです(値が大きいほど関連は強い)。反対に、betaがマイナスの場合には、その要因があると眠気が弱いということです(値が小さいほど関連は強い)。

     表1 夜勤の時の眠気に関連する要因

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この結果は次のように解釈できます。1)「自分はいま健康だ」と感じている人ほど夜勤時の眠気が弱い、というのは納得できます。2)朝型の人は夜型の人に比べ、早起きは得意だが夜勤や交替勤務は苦手だと言われてきましたが、それが今回の結果でも証明されました。3)回答者は皆ほとんど同じ業務に就いていますが、自分でペースや手順をコントロールできていると実感する人や、やりがい・達成感を味わっている人は、前向きに仕事に取り組んでいるためか眠気が弱いことがわかりました。受け身で渋々やっていると、眠くなるようです。4)寝酒は寝付きをよくしますが、後でトイレに起きたり、眠りが浅くなったりするので、トータルで見ると睡眠の量・質にはマイナス効果を及ぼすと言われています。今回も、飲む日が多い人ほど夜勤時の眠気が強かったのは、お酒のせいで睡眠の量・質が低下しているためでしょう。5)昼間の眠りに就く前にカフェインを摂らないよう心がけている人や、入浴で心身をリラックスさせている人は、夜勤時の眠気が弱いことがわかりました。これらの習慣は、短く浅くなりやすい昼間の睡眠を少しでも良眠にする効果があるのでしょう。

深夜に働かなければならない人(特にもともと朝型の人)のための夜勤時の眠気対策としては、全般的な健康管理、仕事の志気を向上させる工夫、そして、昼間の入眠や睡眠維持の助けとなる生活指導が、役に立ちそうだということが、この研究からわかりました。

【研究紹介】Development of a user-centered health information service system for depressive symptom management

 国際看護学研究室 So woo Lee


 Aim
  A user-centered,Web-based depressive symptoms management system might be particularly useful in Korea,where those who seek mental health care face stigmatism and where personal computers and the Internethave reached saturation levels. The purpose of this article is to describe the development process of aWeb-based system for depressive symptom management through user-centered design principles.

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Figure 1.  User-centered model for research design.


Research design and Methods
  Our designprocess included four distinct phases: a needs assessment, analysis, design/development/testing, and the applicationrelease. The final revised website was released with the URL address, “http://www.baejy.com/smiles/”.


Results
 In the 3 years since the site was made available publicly, it is notable that 161 604 Koreans have accessed thiswebsite, either for educational purposes or for managing their depressive symptoms (table 1, table 2). A Web-based depressivesymptommanagement system with a high degree of usability was developed.This website can be used to assessdepressive symptoms and to serve as an intervention strategy to improve mental health.n

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DISCUSSION AND CONCLUSIONS
  This study has reported the development and implementation of a Web-based intervention to manage depressive symptoms. One outcome of this work was a user-centered design for increasing the effective participation of the general population, including those with low computer skills, in Internet-mediated, health-care programs. With the application of user-centered design principles, this site was designed to be culturally sensitive to its target population, thereby forming healthier assessments and presenting more accurate findings. This intervention is especially important as it is the first interactive website to assess the level of depression and to provide comprehensive information about depressive symptom management in Korea. Furthermore, most educational materials, such as books and videotapes, are limited in their scope for direct intervention and suffer from the potential stigmatization of the users when they are trying to access the content.
    Although no Web-based depression management system can completely replace the richness of the interaction between health providers and patients, the capacity to assess and report back information about mental health might empower the self-management or utilization of external resources. The growth of the Internet and online health seekers will continue to accelerate in Korea. These findings suggest that future, Internet-based, mental health interventions have a real potential to help Koreans who are suffering, or who are at risk of, depressive symptoms, particularly because of the stigma related to psychiatric therapy in Korea. In the 3 years since the site was made available publicly, 161 604 Koreans have used this website, either for educational purposes or to help manage their depressive symptoms.
    This Web intervention could be employed for the assessment of depressive symptoms and as an intervention strategy for not only depressed people, but also for various other groups, such as community mental health practitioners. For example, this system enables nurses to screen those people with depressive symptoms among the general population as a primary prevention mechanism against depression. In addition, the Web users who access the site and are assessed with high levels of depression are offered counseling services by the principal author, who is a psychiatric nursing professor and practitioner, via the discussion board or email features. If clients’ depression levels remain severe and unimproved after counseling, they are referred then to psychiatric institutions for further treatment.
    Not only does this scheme provide information and intervention to end users, it also offers links to appropriate institutions for further medical assistance, thereby aiding health-care practitioners in supplying proper mental health care to the public.
    However, it is important to note that this intervention does not promise a total cure for depression, but acts as a medium to assess the severity of the depressive symptoms and to provide alternative, self-help, evidence-based interventions for its end users, that is, the general population.

The Internet site created by this research will continue to run in Korea as an open website for anyone who wants to make use of it. The second phase of this project includes an evaluation of the program. The principal investigator is planning to examine the effects of this program in changing depression scores in 2009. Greater efforts are required to explore these emerging technologies as we seek to reduce the burden of depression and to promote mental health.

 Co-researchers;
Jeongyee Bae, RN, PhD1 ,Seth Wolpin, RN, PhD2, Eunjung Kim, RN, PhD,Sookhee Yoon, RN, PhD1 ,and Kyungeh An, RN, PhD
4

Department of Nursing, Inje University, Busan, Korea, 2School of Nursing, University of Washington, Seattle,Washington, 4School of Nursing, University of Texas Medical Branch, Galveston, Texas, USA

 

【研究紹介】食事接取状況からみた骨代謝-中学生と透析患者を対象とした調査結果から-

 生体科学研究室 岩崎香子

 
みなさんは腰や踵などの骨密度測定を体験されたことがあるでしょうか?私は、大学4年次に腰椎骨密度測定を体験した際、同年齢平均値よりも10%以上も低く、測定した技師さんに、「40歳代」と言われショックを受けました。それを機に、「骨粗鬆症の予防」を研究していた研究室で卒業研究を行った経緯から骨代謝研究にかかわりました。現在もモデル動物・培養細胞を用いた基礎研究と人を対象とした調査研究を行っています。今回は大分在住の中学生と透析患者さんにご協力いただいた調査結果をご紹介します。
 
中学生を対象とした調査
骨粗鬆症は生活習慣病の一つとしてよく耳にする疾患ですが、骨の量が減少し、骨折しやすい状態を引き起こします。骨粗鬆症自体は命にかかわる病態ではないのですが、成長期の子どもが骨折すると成長に影響すること、高齢者が骨折を起こすと寝たきりになり、生活の質(QOL)が低下することによって死亡率が上昇することわかっています。この疾患の予防には成長期に十分な量をもった骨を形成することが重要であることが知られています。しかしながらダイエット志向の低齢化、運動量の減少などにより成長期にある子どもたちの骨折増加が問題となっています。そこで大分市内の中学校と共同で中学生の骨の状態と生活状況の関連を調査しました。
調査対象市内A中学の1,2年生320人(2006年~2007年)
調査項目食事内容(食物摂取頻度より栄養摂取量を算出)
     踵骨量測定
     放課後の活動状況(運動の有無)
     身体計測、生活面アンケート等
検討内容】踵骨量の年間変化とそれに影響する要因
結果】1年間で踵骨量、体格、二次性徴程度は男女とも増加していました。運動量は変化がありませんでした。食事接取に関しては男子生徒でエネルギー、カルシウム、ビタミンD摂取量が増加していましたが、女子生徒では変化はありませんでした。しかしながら男子生徒の20%、女子生徒の8.3%に骨量の減少が見られました。
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図1: 年間踵骨量変化
HH群: 1年で骨量が増加し、2006年、2007年とも平均値以上
LH群: 1年で骨量が増加し、2006年は平均値以下であったが
     2007年は平均値以上
LL群: 1年で骨量が増加したが2006年、2007年ともに平均値以下
reduced群:1年で骨量が減少した群

骨量変化のパターン別(図1)に栄養摂取について解析したところ、男子HH群では身体活動に見合った十分なエネルギーおよびカルシウム摂取ができていました。また2006年に踵骨量が平均値以下であってもカルシウム摂取量が増加すると骨量も増加することがわかりました(LH群、LL群)。
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図2:摂取エネルギー、カルシウム割合の変化
一方、1年で骨量が減少したreduced群ではエネルギーおよびカルシウムの摂取が減少していることがわかりました(図2)。女子ではLH群においてのみカルシウム摂取の増加による骨量増加が見られました。

以上の結果から成長期に十分な骨量を獲得するには気をつける点がいくつか考えられます。
1)男女ともに十分なカルシウム摂取が必要であること
2)カルシウム摂取だけでなく身体活動に見合った十分なエネルギー摂取が同時に必要であること(特に激しい部活動を行っている男子生徒)
 3)女子生徒は男子生徒ほど栄養状態の影響は見られないが、これは骨を守る作用を有する女性ホルモンの影響のほうが強くでている可能性が考えられるため、女子生徒も十分な栄養摂取が必要であるといえます。
 
年度別で検討した場合も同様の結果が得られています(本学:渡邉(岡崎)寿子助手による検討結果)。また同時に調査した心理面の自覚症状でもカルシウム摂取が少ない生徒は気力低下を感じていること、ビタミンB群の摂取が少ないと疲労を感じやすいことなどがわかりました(本学:佐藤みつよ助手による検討結果)。食事内容および量に気をつけて元気に活動することが、成長期に十分な骨量を獲得するために重要であると考えられます。
 
 
透析患者さんを対象とした調査
骨粗鬆症以外にも他の疾患により骨折しやすい状態になります。特に腎臓は骨代謝と密接に関連しているため、腎機能が低下した透析患者では骨折率が健常人の5倍以上であること、透析患者の骨代謝異常は血管の石灰化(血管が骨の様に硬く脆くなる状態)を誘発し、生存率に影響することがわかっています。腎機能が悪くなると食事療法を開始しますが、どのような食事接取が患者さんの骨代謝に良いのかは不明です。そこで県内の医療施設で外来透析を受けている患者さんにご協力いただき食事内容と骨の状態の関連を調査しています。
 
調査対象県内外来維持透析患者298名(2008年より調査開始、現在継続中)
調査項目食事内容(食物摂取頻度より栄養摂取量を算出)
     踵骨量測定
     生活の質(QOL)に関するアンケート、身体活動量
     治療薬などの医療情報等
検討内容】食事接取状況、踵骨量の状況、自覚QOLとの関連
結果】現在2年目のデータ収集が終わり以下の結果が得られています。
1)タンパク質摂取量が食事療法基準値に到達している割合が低い。
2)タンパク質摂取量が少ない患者は体の痛みや健康の悪化を感じている。
3)身体活動量の高い男性患者に自覚QOLの低下がみられる。
4)踵骨量は栄養状態と強く関連する。また血管石灰化を防止する血中タンパク質濃度とも関連する(図3)。
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図3:骨密度と石灰化防止タンパク質濃度との関連
 
透析患者さんの食事療法は透析開始前後で内容が大きく異なります。特にタンパク質摂取に関しては透析導入前では厳しく摂取制限を行います(体重1kg当たり0.6g接取)が、透析を始めると摂取量を約2倍に増やします(体重1kg当たり1.0~1.2g摂取)。長年タンパク質摂取を控えた食事療法を行ってきた患者さんが多いため、透析をはじめても摂取量を確保しづらいと考えられます。また今回調査にご協力いただいた患者さんのうち約48%が栄養不足状態にありました。タンパク質摂取を心がけ、栄養状態の改善を図ることが骨代謝ならびに血管石灰化予防に重要である可能性が本調査で示されています。今後詳細な解析を行い、食事接取と骨代謝との関連を検討していく予定です。
 
最後に体の旧字をご存知でしょうか?體と書きます。“骨が豊か”という風にも読めます。学生時代に40歳代と言われた私もその後エレベータを使わずに階段を使うことを心掛け、食生活に気をつけたところ1年で3%骨密度が増加し、無事卒業単位を取得しました。それ以来、いくつになっても骨が豊かな状態でありたいと思っております。本学では学園祭(若葉祭)や地域活動の中で骨量測定を行っています。機会がありましたら体験なさってみてはいかがでしょうか。

 

【研究紹介】ユズ果皮成分のアレルギー軽減効果 --アトピー性皮膚炎モデル動物を用いた結果--

生体反応学研究室 定金 香里

 
  生体反応学研究室では、生体に悪影響を及ぼす環境物質の探索とそのメカニズムを明らかにすることを研究のメインテーマとしています(本項第一回「黄砂アレルギー」をご参照下さい)。しかし、今回は悪影響ではなく、アレルギー軽減について調べた動物実験の結果をご紹介します。
  ユズは大分県西部の特産品で、「柚子胡椒」は大分のお土産として人気の高い一品です。冬至には柚子湯に入る習慣がありますが、これはユズが冷え性に効果があると考えられているからだそうです。お風呂場に立ちこめるユズの香りが好きな方も多いと思います。このように昔から、私たちになじみの深いユズですが、このユズの皮から抽出した成分をマウスに飲ませ、その後、アレルギーを人為的に発症させてみました。すると、アレルギーが治癒することはないものの症状が軽減されることがわかりました。今回はその研究の一部、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた実験結果を紹介します。
 
《方法》 
  マウス(NC/Nga系)を2群に分け、一方にはユズ果皮成分(0.3 mg/animal)を2~3日毎に12回、経口投与し、もう一方にはユズ果皮成分を与えませんでした。その後、どちらの群にも、アレルゲンを耳介皮下に頻回投与し皮膚表皮にアトピー性皮膚炎を誘発しました。アトピー性皮膚炎の症状を評価するために、重症度をスコア化しました。また、アレルギー発症時に血液中で増加するIgE抗体、IgG1抗体、皮下組織中で増えるマスト細胞や好酸球の数をカウントしました。
 

 《結果》 

  皮膚症状(図1) 
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図1. マウスの耳介像
アトピー性皮膚炎の誘発のみを行ったマウスでは、乾燥、浮腫、痂皮やびらんの形成がみられました。一方、ユズ果皮成分を予め与えていたマウスでは、痂皮やびらんの形成が抑えられていました。ただし、乾燥や浮腫には軽減効果はみられませんでした。
 
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図2. 血中抗体産生
 抗体産生(図2) アレルゲンが生体内に侵入すると、血液中にIgE抗体やIgG1抗体というタンパク質が増えます。アレルゲンをマウスに投与した後では、投与する前の何倍のIgE抗体量になっているかを調べました。ユズ果皮成分を与えなかったマウスでは、抗原を投与する前の約35倍まで増えていました。一方、ユズ果皮成分を予め与えていたマウスでは10倍程度でした。同じようにアレルゲン特異的IgG1抗体価がどれくらい増えるか調べたところ、ユズ果皮成分を与えなかったマウスでは約1,400倍になるのに対し、ユズ果皮成分を予め与えていたマウスでは500倍程度でした。

  

マスト細胞数・好酸球数(図3) 炎症が起きている皮下組織には、炎症細胞が多数、存在します。炎症細胞のうち、マスト細胞と好酸球の数を調べました。すると、ユズ果皮成分を与えたマウスでは、与えなかったマウスに比べてマスト細胞数も好酸球数も減っていることがわかりました。

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図3. 皮下組織中の炎症細胞数
 
《考察》 
  アトピー性皮膚炎では強いかゆみを伴うため、掻きむしって痂皮やびらんをつくり、炎症が重症化します。ユズ果皮成分は、アトピー性皮膚炎の徴候のうち、炎症の重症化を示す痂皮やびらんの形成を抑えることができました。また、血液中の抗体産生も抑えることが明らかとなりました。アトピー性皮膚炎罹患者の中には、血中IgE濃度の高い方が少なからずいます。IgE抗体は、マスト細胞からかゆみや炎症を起こす物質が放出されるきっかけとなるタンパク質です。IgG1抗体は同様に好酸球の炎症性物質の放出に関わっています。これら抗体の産生量が抑えられるということは、かゆみや炎症を起こす物質の放出も抑えられている可能性が高いと考えられます。今回の結果では、それらの物質を放出するマスト細胞や好酸球の数そのものもユズ果皮成分を投与したマウスでは減少していました。以上の結果から、ユズ果皮成分はアトピー性皮膚炎の症状を軽減する効果があることが示唆されました。
 
  アトピー性皮膚炎の治療は難しいことが良く知られています。それは、発症のメカニズムがまだよくわかっていないことに加え、環境からの影響を受けやすく、またその応答に個人差があるからです。治療が長期化すると、今度は薬の副作用の問題が生じます。こうした中、体質改善を目的とした食餌療法を行う人も増えてきました。しかし、その効能には科学的根拠がないものも含まれますし、食べても味が悪く続けられないものもあります。ユズは、日本人になじみ深い柑橘ですし、多くの人に味や香りも好まれています。また、アトピー性皮膚炎モデル動物の他にアレルギー性気管支喘息を人為的に発症させたマウスでも軽減効果があることが当研究室の研究でわかりました。現在、ユズ果皮成分を化学的性質ごとにいくつかの画分に分け、ユズ果皮に含まれている何が有効成分なのか検索中です。
 
  今回の結果はあくまでも動物実験で得られたもので、必ずしもヒトのアトピー性皮膚炎に当てはまるとは限りません。実験に用いるマウスは、個体差が少なく、外部刺激を受けないよう環境をコントロールしています。現在のところ、薬にかなう効果をもつ食品はありません。
 
この研究は、本学、大分大学および株式会社つえエーピーとの共同研究によって行われました。

 

【研究紹介】母親の食意識と3歳児の肥満や食行動との関連についての検討

小児看護学研究室 高野政子

 

. はじめに

 文部科学省の平成18年度学校保健統計調査によると、肥満傾向児の出現は過去30年間で2倍以上となっている。3歳児カウプ指数が平均より高いと20歳時に肥満になる割合が高く、3歳児の肥満予防の指導が重要という報告がある。近年は肥満によるⅡ型小児糖尿病の増加が指摘されており、家族、特に母親の食意識や児への食行動に対する肥満予防のために看護介入が重要である。
本研究の目的は、3歳児をもつ母親の小児肥満や食事の与え方など母親の意識や、その母親の意識の違いによる3歳児の肥満や児の食行動の関連を検討することで、看護介入の焦点化に示唆を得たいと考えた。
 
. 研究方法
1. 調査期間は2007年7月25日~10月31日で、対象者は、保育所(13施設)に通所する3歳児クラスの児とその母親とした。
2. 調査方法:対象者に協力依頼文を配布し同意書を回収できた母親には自記式質問紙法で調査した。その際、児と一致させるため質問紙には記名し封をするよう依頼した。児の測定は、研究者が当日対象児にも説明し了解を得て保育時間内に行った。
3. 調査内容:母親への質問紙は、属性8項目、児の食行動について8項目、児
の咀嚼に関する食行動について15項目、母親の食事の与え方について12項目、母親の小児肥満についての意識20項目の計63項目で作成した。質問紙の回答は、「強く思う」から「全く思わない」の4段階とした。児の食に関しての質問や意見を自由記述とした。また、保育所にある身長の最新データと、実際に測定した体重のデータをもとに、厚生労働省の肥満度の評価基準に従い肥満度を求めた。肥満度15%以上を肥満児とした。
4. 統計的分析:統計ソフトSPSSver.14.0を使用し、母親の食事の与え方については、母親の小児肥満についての意識の違いの2群、非肥満児・肥満児の2群でMann-WhitneyのU検定を行った。有意水準は5%とした。
5.倫理的配慮:本学研究倫理安全委員会の審査を受け承認を得て実施した。
 
. 結果
 母親への質問紙配布数170部、有効回答数149部(有効回答率90.3%)であった。児が測定日に欠席または児が拒否した場合を除外した結果、母親149人、児126人が対象者となった。
1. 対象者の属性
                              
    takano_table1.PNG
 
対象者の母親の平均年齢は33.4±4.7歳、対象児の平均年齢3.5±0.5歳であった。保育所の身体測定した126人中、非肥満児118人(93.7%)で、肥満児8人は(6.3%)であった。
     
2. 児の食行動・咀嚼に関する食行動と母親の食事の与え方
児の食行動では、《毎日3食食べる》147人(98.7%)、《決まった時間に食べる》145人(97.3%)であった。一方《偏食が多い》78人(52.3%)、《お菓子が多い》74人(49.7%)、《ジュースが多い》145人(40.3%)であった。
母親の食事の与え方では、《肥満を意識した食事》は76人(51.0%)であり、具体的には、《栄養素を意識した食事》110人(73.8%)、《野菜を多く使った食事》116人(77.9%)であり、野菜や栄養素を意識した内容を考慮していた。<噛んで食べる>より<好き嫌いをしないで食べる>ことを意識させている母親が多かった。
3. 小児肥満に対する母親の意識の高低2群と児の食行動との関連
小児肥満に対する意識の違いについては、「全く思わない」1点「強く思う」4点として20項目を得点化した。その結果の中央値58点を境界に2群に分け、得点の高い群を「意識している群」(以下A群)、低い群を「意識していない群」(以下B群)とした。A群84人、B群65人であった。
 
 takano_table2.PNG
 
児の食行動では、《毎日3食食べる》の質問に対し、A群の方がB群よりも《3食を食べる》ものが多いが(P<0.05)、《お菓子が多い》と《ジュースが多い》はB群がA群よりも多かった(P<0.01)。児の咀嚼など食行動では、《噛みついて引きちぎる》《上手に飲み込む》では、A群の母親はB群よりも咀嚼や嚥下が上手の回答で高い数値であった(P<0.01)。
母親の食事の与え方についての比較:     
            
 takano_table3.PNG
 
《肥満を意識した食事》《栄養素を意識した食事》については、A群の母親の方がB群より肥満を意識した《食事内容》《栄養素》で準備していた(P<0.01)。また、A群の母親はB群より《野菜を多く使った食事》を意識し(P<0.05)、《好き嫌いしない》ことを指導していた(P<0.01)。一方、《欲しい分だけ与える》では、B群の母親がA群よりも児が欲しがるだけ与えている(P<0.01)ことが明らかになった。
4. 非肥満児群と肥満児群の2群と母親の意識や食事の与え方との関連
 児の食行動では、肥満児群の母親は《食事量が多い》ことを非肥満児群より意識していた(P<0.05)。また、児の咀嚼に関する食行動では、肥満児群の母親の方が非肥満児群より《あら噛みをしている》と意識していた(P<0.05)。一方、《よく噛むことを指導》《好き嫌いをしないことを指導》では、どちらも肥満児群の母親の方が非肥満児群より指導していた(P<0.05)。
 
. 考察
母親は児が《毎日3食食べている》や《決まった時間に食べる》をほぼ全員が回答したが、《ゆっくり食べることが苦手》《勢いよく飲食する》については約半数の母親が児の食べ方を意識していた。児の咀嚼については、母親の約9\8割が児は《歯が丈夫である》と答えており、《児があまり噛まずに飲み込んでいる》は約2割弱と少なかったように、児の咀嚼の《丸のみ食べ》行動は意識されていなかった。母親は「就業しているため出勤前や帰宅後の短時間で子どもの食事を意識して準備するのは難しい」「簡単に調理できる柔らかいものに偏る」と記述していたことや、《好き嫌いしないことを指導》は全員が指導していたが、《よく噛むことを指導》は約8割で、母親が咀嚼については十分意識していないのではないかと思われた。また、食事量は《児が欲しい分だけ与える》という母親が約7割と多く、1日必要カロリーなどは子ども任せにしている一方で、「1日の食事量がわからない」と心配する母親もいた。
今回の調査では《肥満を意識した食事内容を与えている》のは約半数にとどまり、3歳児頃からの肥満が将来の食行動に影響するという母親の意識は低いと考えられた。今後は母親への食育の指導の必要性が示唆された。
 
. 結語
母親の意識の違いによる3歳児の満との関連や児の食行動との関連を検討した。看護介入では、児には《勢いよく飲食する》《慌しくあら噛みをする》という食行動の指導が必要であり、母親には《適切な食事量》や咀嚼を意識して食べさせるように個別に指導が必要であることが示唆された。
 
成果発表
1.    39回日本看護学会(地域看護)発表,静岡, 2008
2.    39回日本看護学会論文集(地域看護)掲載,p51-53,2009 

【研究紹介】「かくこと」によって何がもたらされるのか?-幾何の問題解決場面を通した分析-

人間関係学研究室 吉村 匠平

 

 私ごとですが、小学校や中学校の作文、非常に面倒でした。遠足に行けば作文、夏休みには読書感想文、運動会が終わるとまた作文、将来の夢まで作文。そういう作業を繰り返すなかで、いつのまにか「書くこと」へのぎこちなさばかりを学んでしまいました。皆さんはいかがでしょう?今回紹介する研究は、昔年の恨みを研究で晴らすという屈折した動機のもと行ったものです。「かくこと」を、作文に限定されないもっと広い視点から捉え直すため、幾何(図形)の問題解決場面を取り上げました。幾何の問題解決場面では、「答案の作成」という形で行われる採点者に読ませるために行われる「かくこと」と、問題の解法を探るために行われる他者に読ませることを前提としない「かくこと」、その両方が行われます。両方の「かくこと」を対比することで、何か見えてくるものがあるのではないかと考えて行ったのが表題の研究です。今回はその一部を紹介します。 

 

 対象者 大学生、大学院生24名。

 

 課題 中学1~2年程度の知識(公式の理解)で解くことが可能な平面図形の問題。問題文に書いてあることに定理を当てはめるだけでは解けない、いわゆる「難問」。難問にしたのは、読んだ瞬間にあっさり解けた!ということになると、かいている様子を分析できないからです。対象者の手元にベルを置き、問題の内容を把握したらベルを1回、問題が解けたと思ったらベルを2回鳴らすようにお願いしました。

 yoshimura-fig1.jpg

 課題提示装置 問題解決の進行状況を調べるため、右図のような装置を作成しました。「問題」と書かれた板の裏には問題文を、「図」と書かれた板の裏面には問題に添付されている図を、「答案」と書かれた板の裏には、答案作成用紙を貼り付けました。問題文を読みたいときには、「問題」の板を手前に折り下げ、図を見たいときや図にかき込みをしたいときには、「図」の板を右側に折り返して、答案を作成したいときには、「答案」の板を左に折り返すよう教示しました。板の大きさは、同時に2枚を折り返そうとすると相互に干渉するようにしました。このため、他の板を見る時には、既に折り返している板を元に戻してから折り返すことになります。対象者にあっちの板こっちの板をはぐりながら問題を解いてもらい、その様子を2台のビデオカメラで録画しました。下の図は実際のかき込みの例です。

 

 実験計画 二要因の計画を組みました。1つ目の要因は、「かくこと」に加える制限の種類です。自分の手を動かしてかくことを禁止し実験者が代筆する「行為禁止群」、かかれたものの見直しを禁止する「所産活用禁止群」(実際にはカーボンコピーをとり、実験後に何をかいていたかを確認しました)と、行為と所産活用を同時に禁止する「全禁止群」、制限を加えない「統制群」の4つです。もう1つの要因は、制限を加える対象の種類です。問題に添付された図へのかき込みを制限する群と、答案の作成を禁止する群を設定しました。4通りの制限×2つの対象で8通りの条件になります。1人の対象者には、複数の条件で異なる問題を解いてもらいました。

 yoshimura-fig2.jpg

 結果 ①問題解決の達成度 本実験と無関係の人2名(数学講師経験者)に採点を依頼しました。採点は5段階評定。分析の結果、答案作成に制限を加えても問題解決に影響しないこと、図へのかき込みへの制限に関しては、行為禁止群、所産活用禁止群では、問題解決に影響はみられないが、両方同時に制限する全禁止群では、問題解決が遅滞することがわかりました。
②主観的に感じた困難度 対象者自身に、統制群と比較した際に感じる問題解決の困難度を5段階で評定してもらいました。その結果、図へのかき込み×全禁止群が、答案の作成×全禁止群より、問題解決が遅滞すると感じていることがわかりました。
③その他の分析 ①と②の結果から、問題解決の進展に影響するのは、図へのかき込みの制限であることが示されました。以後、図へのかき込みのみを対象に、かき込まれた痕跡、録画情報に基づいた分析を行いました。結果を示します。
・行為禁止・所産活用禁止群は、統制群より図へのかき込み量が少ない。特に、問題文に書かれた情
 報や定理を組み合わせて生成される情報のかき込みが少ない。
・行為禁止群は、まず最初に問題文に記された情報の図への代書を求め、その後は図を見つめて問題
 を解いた。
・行為禁止群は、答案作成時に問題文を見直す者の割合が多かった。
・所産活用禁止群は、図にかかれた線分をなぞったり、等しい大きさの角を抑えたり、空書(空中に
 図を描く)などを行いながら問題を解いていた。
・所産活用禁止群は、答案を作成する間に図を触る時間が長かった。
・統制群では、試行錯誤的な図へのかき込みを行いながら問題を解いていた。
・全禁止群では、問題文を見直しながら問題を解く者の割合が多かった。
 

 

 考察 以上の分析から、「図へのかき込み×行為禁止群」と「図へのかき込み×所産活用禁止群」では問題解決に遅滞は見られないものの、問題解決のプロセスに違いが生じることが示されました。 
 行為禁止群では、自分の手を使って図にかき込むことが禁止されます。そのため、必要な情報を図に代書させ、それを見つめることで問題を解き、答案の作成時にも問題文を見直していました。つまり、目に見える情報~他者への伝達・共有が可能な情報を活性化させることで問題を解いていたと考えられます。
 これに対し所産活用禁止群では、かいた痕跡の見直しができません。そのため、図の線分をなぞったり、角を抑えたり、空書をしたりしながら問題を解いています。答案作成時にも、問題文を見直すのではなく、図に触りながら答案を作成しています。つまり、他者への伝達・共有が困難な運動感覚情報をできるだけ活性化させることで問題を解いていたと考えることができます。
 以上のことから、数学の問題場面で行われる図へのかき込みを、①自分の身体を動かし図に働きかけることで運動感覚情報を生成する、②それと同時に図の中に痕跡が残る、③その痕跡を自分自身が読み取る、④読み取ることで新たな気づき(意味、発見)が生じる、⑤「①」に戻る、という形で進展する、一種の対話的な活動であると捉える見方を提示しました。

 

 結語 私はホームページに掲載された自分の文章を見て、その杜撰さに頭を抱え込むことでしょう。私の書いたものでありながら、それが私の外部から私に語りかけてくる。このような対話的状況(時間的、空間的な「差異」)を作り出すことが、かくことによってもたらされるのだと考えます。

 

 成果発表
Yoshimura Shohei(1989) The Metacogition of Writing in Mathematic Problem Solving. The13th Psycology of Mathematics Education Congress. Paris.
吉村匠平(1990) 問題解決場面においてあらわれる「かくこと」とその機能について 日本教育心理学会第32回大会(大阪大学)
吉村匠平(1993) 幾何の問題解決場面において用いられる「かくこと」に対する認知 日本教育心理学会第35回大会(名古屋大学)
吉村匠平(2000) 「か<こと」によって何がもたらされるのか?一幾何の問題解決場面を通した分析一 教育心理学研究第48巻 85-93.
 

【研究紹介】母乳育児期間と更年期症状の関係についての検討-人工栄養育児との比較から-

 母性看護学・助産学 梅野 貴恵

 

.緒言

更年期女性の健康の重要性は、少子化や人口の急速な高齢化を背景にクローズアップされてきている。更年期女性自身の心理・性格的因子や社会・文化的因子は更年期症状の発現に大きな影響をもたらしているが、その要因間の関係は明らかになっていない。更年期女性を対象にした心理・社会的因子である夫婦関係満足感や生きがい感、仕事のやりがいと更年期症状(Simplified Menopausal Index : SMI)についての著者の調査1)から、成熟期における授乳経験と更年期症状との関連も示唆された。そこで、本研究では、母乳育児経験のある現在更年期の女性を対象にした調査を行い、更年期症状の発現の程度を人工栄養育児経験のある女性の更年期症状と比較し、さらに母乳育児期間・無月経期間の長さと更年期症状の関連を明らかにすることを目的とした。

 

.研究方法

1. 研究デザイン

 留置郵送法による自記式質問紙調査

2. 調査対象および調査期間

調査対象者は、出産した児に対し少なくとも1人は12ヶ月までの母乳栄養育児を継続したことのある、現在4060歳の女性103とした。対照の母乳育児経験のない女性の更年期症状の出現の程度は、著者らが2003年に調査した4060歳の一般住民528名のうち、主に人工栄養で育児した90名から得られたデータを用いた。調査期間は、20055月~12月で

1 簡略更年期指数Simplified Menopausal Index;SMI

 

症  状

判   定

 

 

なし

顔がほてる

0

3

6

10

汗をかきやすい

0

3

6

10

腰や手足が冷えやすい

0

5

9

14

息切れ、動悸がする

0

4

8

12

寝つきが悪い、または眠りが浅い

0

5

9

14

怒りやすく、すぐイライラする

0

4

8

12

くよくよしたり、憂うつになる事がある

0

3

5

7

頭痛、めまい、吐き気がよくある

0

3

5

7

疲れやすい

0

2

4

7

肩こり、腰痛、手足の痛みがある

0

3

5

7

<合計得点の評価>

025点:日常生活に問題なし

2650点:食事、運動に気をつけ、無理をしないように

5165点:更年期ー閉経外来で生活カウンセリング、薬物療法を受けた方がよい

66点以上:長期(半年)の治療が必要

ある。

3. 調査内容

1) 更年期症状

 更年期症状の発現の程度は、小山2)の簡略更年期指数(Simplified Menopausal Index : SMI) 10項目(表1)を用いて把握した。各対象者のSMIの合計得点(0100点)を、小山の評価区分を参考にし、025点を更年期症状の「問題なし群」、2650点を「軽症群」、51点以上を「重症群」と分類した。

2) 妊娠・分娩経験や月経の状態

妊娠回数、出産回数、出生児ごとの出産の種類、児への栄養法、出産後の月経の開始時期、現在の月経状態、閉経年齢等について質問した。

4. 分析方法

統計解析には、SPSS ver12.0を使用しSMI平均得点の2群間の比較にはMann-WhitneyU検定、SMI得点と母乳育児期間・無月経期間との関連は、一元配置分散分析およびBonferroni法による多重比較を用いた。すべての有意水準はp=0.05とした。

5. 倫理的配慮

本研究は、大分県立看護科学大学の研究倫理・安全委員会の承認を得て実施した。質問紙は無記名とし、対象者には、調査で得られた情報を研究目的以外に使用しないこと、プライバシーは確実に保護されること、回答・返信は強制されるものではなく自由意思であることを文書で説明した。

 

.結果

1. 対象者の背景

 対象者の調査時の年齢は4360歳で、平均年齢は50.6±3.5歳であった。授乳経験は第2子までは混合・人工栄養の場合も含まれているが、第3子以後は全員が母乳育児であった。また個人でみた場合、少なくとも12ヶ月の母乳育児経験があった。対象者の47.6%は調査時点で月経が無く、平均閉経年齢は49.8±2.2歳であった。このグループを「長期母乳育児群」とした。対照群の年齢は4060歳で、平均年齢は49.8±5.5歳であった。対象者の42.2%は調査時点で月経が無く、平均閉経年齢は50.2±2.6歳であった。このグループを「人工栄養育児群」とした。

2. 更年期症状の発現頻度と程度

2 更年期症状の程度

 

 

 

 

 

問題なし群

SMI025点)

軽症群

SMI2650点)

重症群

SMI51点以上)

 SMI        平均得点±SD

 

 

長期母乳育児群(n=103

6664.1

3130.1

6 5.8

21.7±17.0

**

人工栄養育児群(n=90

3235.6

4246.7

1617.8

35.7±19.0

 

**p0.01

 「長期母乳育児群」と「人工栄養育児群」のSMI合計得点により区分した更年期症状の程度(「問題なし群」、「軽症群」、「重症群」)を表2に示す。「長期母乳育児群」のSMI平均値は21.7±17.0で、「人工栄養育児群」の平均値、35.7±19.0点に比べ有意に低かった(p0.01)。  

 SMI10項目の各症状について「なし」を除く、「弱」「中」「強」を更年期症状の発現ありとし、それぞれの症状の発現頻度を図1に示す。

「長期母乳育児群」の発現頻度が高い症状は、「肩こり・腰痛・手足の痛み」、「疲れやすい」であり、他の8項目は3050%程度の者に発現がみられた。「人工栄養育児群」で発現頻度が高い症状は、「肩こり・腰痛・手足の痛み」、「怒りやすく、すぐイライラする」であり、他の8項目は、5070%程度の者にみられており、「肩こり・腰痛・手足の痛み」、「疲れやすい」、「頭痛、めまい、吐き気がよくある」以外の項目において「長期母乳育児群」に比べ発現頻度が高かった(p0.01)。

3. 母乳育児期間・産後の無月経期間と更年期症状との関連

 「長期母乳育児群」の授乳経験のうち、母乳育児を行なった全期間の長さ別に分けた群および「人工栄養育児群」と更年期症状との関連を図2に示す。母乳育児期間が合計36ヶ月以上長く母乳育児を行なった群の平均得点は17.3±19.0点でありすべての群で一番低かった。母乳育児期間が13ヶ月以上の各群のSMI得点は、「人工栄養育児群」のそれに比べて有意に低かった(p0.01)。また、産後の月経開始時期までの無月経期間を合計した長さ別に分けた群と更年期症状との関連は認められなかったが、無月経期間が長いほどSMI得点が低くなる傾向がみられ、特に36ヶ月以上無月経群のSMI平均値は18.5±19.4点で低い傾向がみられた。

 

umeno_fig1umeno_fig2
1 長期母乳育児群と人工栄養育児群の更年期症状の発現頻度2 母乳育児期間の長さおよび人工栄養育児群とSMI得点の関連

 

 

  

.考察

調査対象者が出産・子育てを経験した時期は、多くの病産院では人工乳を導入しており、退院までの数日は児へ人工乳が与えられていた時代である。当時の母乳育児率は、生後3ヶ月で40%未満であり3)、母乳不足についての誤った知識や離乳の進んだ810ヶ月には母乳育児を中止するような指導も行なわれていた4)。したがって、「長期母乳育児群」のように生後1年以上の長期間にわたり母乳育児を継続することは、母親自身の努力や家族のサポート、さらに熟練した助産師の乳房ケアや生活指導などの積極的なサポート5)によるものであり、当時の母親たちの中でもごく一部にすぎない。しかし、そのような背景の中で母乳育児を長期間にわたり継続した経験をもつ「長期母乳育児群」は今後の母乳育児に対するさまざまな研究を実施するうえで貴重な存在であると考えている。

今回調査した「長期母乳育児群」のSMI得点の平均値は、「人工栄養育児群」のSMI得点の平均値と比較して低く、ほとんどの者が「問題なし」か、日常生活に注意する程度で生活できている。また更年期症状の10症状のうち、「肩こり・腰痛・手足の痛み」「疲れやすい」の発現頻度が高いという結果は、日本人女性における他の報告67)や、著者の2003年調査とも同様の結果1)であった。更年期のエストロゲンの急激な低下に起因する顔面紅潮、不眠、発汗は、回答者の3割程度に現れており、日本人女性を調査した先行研究8)と同様の傾向であるが、「人工栄養育児群」の発現頻度5065%に比べ有意に低かった。また「長期母乳育児群」はすべての項目で「人工栄養育児群」より更年期症状の発現が低かった。つまり、1年以上の母乳育児経験のある女性は、全般的に更年期症状の発現頻度は低いと考えられる。

次に、母乳育児期間の長さとSMIの関連を検討した結果、「人工栄養育児群」に比べると、特に母乳育児36ヶ月以上の女性は、SMI得点が低い。また、産後の無月経期間が長い人は、SMI得点が低い傾向にある。母乳育児期間が長くなれば、無月経期間が長くなり、それが10数年から数10年後の更年期症状に何らかの影響を与えていると予測される。無月経期間が長いということは、無排卵の状態、つまり低エストロゲン状態が継続されていることを意味する。したがって、妊娠期から産後数ヶ月間、視床下部下垂体卵巣系の機能が抑制された状態が続いていることになり9)、母乳育児中の女性は、更年期の卵巣機能の低下と似たような内分泌状態を体験している。すなわち妊娠・出産、授乳といったダイナミックな内分泌系の生理的変化が、女性の一生のホルモンバランスを整えることにつながっている可能性が示された。

 

Ⅵ.成果発表

   梅野貴恵,宮﨑文子,草間朋子,他.母乳育児期間と更年期症状の関係についての検討-人工栄養育児との比較から-.日本更年期医学会雑誌.200715(2)223-232

 

引用文献

1) 梅野貴恵,宮﨑文子,河島美枝子,関根剛.更年期女性の更年期症状(SMI得点)と心理社会的要因との関連.母性衛生.47(1)143-1522006

2)小山嵩夫.更年期閉経外来更年期から老年期の婦人の健康管理について.日本医師会雑誌.100(2)259-2641993

3) 松原まなみ,山西みな子.母乳育児をめぐる諸問題,母乳育児の看護学.大阪:メディカ出版,pp6-262003

4) 澤田啓司.日本の母乳栄養の歴史.助産婦雑誌.33(9)28-361979

5) 平田喜代美.おっぱい110番.東京:たま出版,pp1480pp981271995

6) 廣井正彦,麻生武志,相良祏輔,永田行博,本庄英雄,大濱紘三,小山嵩夫,太田博明,廣田憲二,野崎雅祐.生殖・内分泌委員会報告(更年期障害に関する一般女性へのアンケート調査報告).日本産科婦人科学会雑誌. 49(7)433-4391997

7) 柴田玲子.中年期女性にとっての閉経と更年期.日本更年期医学会雑誌. 9(2)247-2552001

8) Lock, MViews of Japanese women on menopause, A discussion based on cultural differences with Canada and America. J Jpn Menopause 5(1)53-591997

9) 佐川典正.産褥の生理,内分泌・代謝系の変化.武谷雄二編.(新女性医学大系32)産褥.東京:中山書店,pp16-262001 

【研究紹介】体力テストの測定値を用いた身体組成の推定

 健康運動学研究室  稲垣 敦

 
 太っているとか痩せているというのは、昔から関心の高い話題だったと思われますが、肥満が生活習慣病(旧・成人病)の要因であることが明らかになってくると、体内の脂肪の量とか割合を計ることが重要な課題となりました。今でこそ家電に行けば、体に弱い電気を流して、その抵抗値から体脂肪率を推定(BIA, bioelectrical impedance analysis)できる機器が数千円で売っており、家庭でも簡単に体脂肪率を計ることができるようになりました。しかし、つい十数年前までは体の皮下脂肪をつまんで厚さを計ったり(皮下脂肪厚法)、大きな水槽に水を入れて水中で計った体重から推定していましたし(水中体重秤量法)、BIAの機器も数十万円と高価でしたので、家庭で手軽に体脂肪率を計るというわけにはいきませんでした。そのため、その頃は、Rohrer指数やBMI(body mass index)など身長と体重で計算した体格指数で肥満度を評価していたのですが、身長と体重だけでは体の中の脂肪の割合はわからず、肥満と過体重(筋肉質)を区別できません。
 一方、体力テストの中には自分の体重を負荷(重り)にした運動があり、これらは体重が同じでも脂肪が多く筋肉が少なければ、測定結果が悪くなります。つまり、体力テストの測定値には身体組成の情報が含まれています。そこで、学校などのように既に体力テストを実施しているところで体脂肪率を推定することを想定して、身長と体重に体力テストの測定値を加えて体脂肪率を推定することを考えました。
 当初、体脂肪率の推定式は身長、体重、体力テストの一次関数としていたのですが、その後、体力テストの情報をより効果的に使うため、体力テストの動作を力学的にモデル化して推定式を導きました。まず、体力テストの動作のモデルを簡単にするために、以下を仮定します。
仮定1: 除脂肪体重(=体重−体脂肪量)から筋量を除いた重量は体重の一次関数で表せる。
仮定2: 当該筋の筋断面積は筋量/身長に比例する。
仮定3: 当該筋が発揮した筋力はその筋断面積に比例する。
仮定4: 測定された力は当該筋が発揮した筋力に比例する。
身長(m)、体重(kg)、体脂肪率(0〜1:無名数)、体脂肪量(kg)、除脂肪体重(kg)をそれぞれ、H、m、RF、FW、FFWで示すと、筋力測定機器に作用した力Fは上の仮定から、
                inagaki1.jpg
と表すことができます。次に、体力テストですが、ここでは体重を重りとする垂直跳びの場合を示します。簡易化のため重心の高さだけに着目すると、
                  inagaki2.jpg
という運動方程式が得られます。ここで、h、g、a、tはそれぞれ跳躍高(m)、重力加速度(=9.81 m/s2)、脚伸展中の垂直方向の重心加速度(m/s2)、重心の最下点を0とした時の踏切時の時間(脚伸展時間, s)です。さらに、下の3つの仮定を導入します。
仮定5: 垂直跳びの測定値は踏切動作最終時点から最高時点の重心の変位と等しい。
仮定6: 脚伸展局面の垂直方向の重心移動距離は身長の1/4である。
仮定7: 脚伸展局面では一定した力が上方に発揮される。つまり、離陸まで重心が等加速度で上昇する。
これらの仮定および(1)式を(2)式に代入して整理し、FFTについて解くと、
                    inagaki3.jpg

 inagaki4.jpgという形になります。したがって、除脂肪体重、身長、体重、垂直跳びのデータを用い、係数A、B、Cを推定すれば、除脂肪体重の推定式が得られ、体脂肪率も簡単に算出できます。実際に、中学生の男子305名のデータを用い、BIAで測定した除脂肪体重を基準として係数A、B、Cを推定し、この推定式で除脂肪体重を推定した結果、基準値と推定値の相関係数は0.971とかなり高い推定精度が得られました。

 この推定法では推定式を簡単なものにするために大胆に単純化していますが、厳密なことを言えば、動作の再現性や個人差、体力テストの信頼性、筋組成の個人差など仮定の適切さについて検討すべき問題がたくさんあります。一方、技術の進歩は速いもので、BIAはさらに進歩し、筋量や内臓脂肪の推定、身体部位毎の推定が実用化されており、既にこの方法の出る幕はなくなったようです。しかしながら、私にとってこの経験は体力テストの活用を考える一つのきっかけとなりました。

 

稲垣 敦(1993)体格指数、体力診断・運動能力テストを用いた体脂肪率の推定法の開発:中学生を対象として. 行動計量学 20: 81-91.
稲垣 敦(2007)体力テストを用いた体脂肪率の推定:I. 理論と方法. 看護科学研究 7(2):27-32.
 
 

   

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