【研究紹介】企業とはたらく人のWell-Being(よい状態)を目指す看護の支援
~中小規模事業場の産業保健活動支援の在り方の検討~
高波利恵(地域看護学研究室)
研究の背景と目的
我が国では、はたらく人の70%以上が中小規模事業場に所属しています(東京都や大阪府などを除く)1)。多くの大規模事業場では、産業医や産業看護職によって労働災害の防止や健康増進対策などの産業保健活動が行われています。しかし、中小規模事業場では、これらの産業保健専門職の雇用は難しく、システム、人材、金銭、情報、時間などの限界があるために独自で組織的な活動を行うことも困難です。そこで、政府の検討会などでは中小規模事業場の産業保健活動支援に外部機関の保健師を活用するアイディアが提示されています2)。
しかし、保健師がどのようにして支援をしていくのか。その方法は十分に検討されていません。そこで、本研究では保健師を活用した、中小規模事業場の産業保健活動支援の在り方の検討を目的としています。
研究の方法
本研究は中小規模事業場のご協力を得て、保健師としての支援をしながら研究を行うという方法をとっています。事業場によって必要な支援は異なりますので、一方的に支援内容を決めて関わるのではなく、中小規模事業場の経営や人のマネジメントへの考え方を知り、事業場の人々とともに課題やその対策を明らかにして、支援を展開・評価・改善する取り組みをしています。
これまでにも、特定の事業場への支援に関する報告はありますが、その多くは支援方法の簡単な説明とその短期的な成果を報告したものです。しかし、その成果を他の事業場にも活用するためには、どのような必要性をもとに、どのような支援を行い、どのような変化が起こったのかという、具体的支援計画とその評価・改善のプロセスが分かるような報告が必要です。
よって、本研究では支援の方法の検討・支援・評価・改善の全てのプロセスを詳細に記述し、要所で他の研究者や経営者などと意見交換を行い、支援の在り方の検討を重ねていくという展開をしています。
企業とはたらく人のWell-Being(よい状態)を目指す看護
看護の支援の対象ははたらく人々だけではありません。それをとりまく環境である企業自体も支援の対象です。はたらく人と企業は相互関係にありますので、双方のWell-Beingを目指した支援が必要です。「Well-Being」は、対象によって異なります。「Well-Beingとは何か」を明らかにし、達成に向けて、看護における理論やモデルなどを活用して支援をします。
一般的な事業場での「看護」のイメージといえば、ケガ人への救急処置や病気の管理などが想起されますが、本研究の「看護」はもっと概念的なもので、様々な領域で活用できるものです(ここでは「看護とは」については割愛します)。
支援の目的・目標、初期支援内容
下記に支援の目的・目標、事業場との関わりの開始時における支援内容を示しました。これらはどの事業場でも共通のもので、支援を行う際の保健師としてのスタンスでもあります。本研究のポイントは、はたらく人の力量を高め、Well-Beingを支援する職場の社会文化をつくることです。対策のために設備などの環境を整えたり、イベント等を実施することは重視していません。中小規模事業場では活用できる社会資源が限られています。社会文化に着目した場合、物理的な環境整備やイベントなどは、あくまでもWell-Beingを支援する職場の社会文化を形成するための手段3)ですから、必要最低限でよいと考えています。
中小規模事業場には取り組みのためのシステムがありませんから、まずは「基盤づくり」と、それに平行してWell-Beingを支援する社会文化を形成するために、はたらく人々の「力量づくり」を行います。力量づくりでは、一人ひとりが適切な知識・価値観を持ち、それらを共有することを重視します。
これと並行して、保健師はWell-Beingに関する情報を面談、質問紙、観察を駆使して情報収集します。さらにキーパーソンとの話し合いを重ね、支援のニーズを明確にしていきます。
資料.支援の目的・目標、初期支援内容

支援の例
ある事業場では中間管理層の管理職としての力量を課題として考えていました。これまでにも様々な対応策を検討してきましたが、なかなか効果的な対策の糸口が見えない状況でした。
そこで、現在、現場のはたらく人々の声を収集するとともに、まちづくりや健康教育などの分野で活用されているプリシードプロシードモデル4)を用いて、まずは幹部社員間でブレーンストーミングを行い、対策を検討しています。検討の中で、中間管理層の現場とのコミュニケーションの強化と情報収集の必要性が明らかになりましたので、さらなる課題解決の検討へとつなげていく必要があります。このような中間管理職の力量形成などは看護職の支援のポイントではないと考えるかもしれませんが、その力量が部下だけでなく本人の心身の健康、事業場の生産性や業績にも影響しますので、重要な支援対象です。また、経営者・経営幹部も「はたらく人」です。中小規模事業場ではこれらの人々と保健師の距離が非常に近いため、経営者層の個人への支援も行います。
おわりに
既にフィンランドや韓国などでは、保健師による中小規模事業場への支援が法的な根拠をもとに展開されています。フィンランドで、道路の側溝を修理している一人の10代の作業員が、騒音障害予防のためにイヤーマフなどを適切に用いているのを見て、保健師による支援の効果を痛感しました。我が国でも保健師による効果的な支援が中小規模事業場へいきわたるように、これからも研究を続けたいと思います。
引用文献
1)中小企業白書(2011年版)付属統計資料http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23_1/110803Hakusyo_fuzokutokei_web.pdf (アクセス日 2012年4月9日)
2)第4回事業場における産業保健活動の拡充に関する検討会議事録(2010)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000vz1w.html(アクセス日 2012年4月9日)
3)高波利恵(2010).社会文化的環境に着目した中小規模事業所労働者の生活習慣改善の支援の在り方の検討,北九州市立大学大学院社会システム研究科博士(学術)学位請求論文.
4)藤内修二編集(2000).PRECEDE-PROCEED Model(MIDORIモデル)の理論と実践 : 平成11年度厚生科学研究報告書.
本研究は科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)若手研究(B)の支援を頂いています。 平成19~22年度(課題番号19791782)、平成23~26年度(課題番号23792739) |
【研究紹介】紅葉ウォーキングのストレス低減効果について
精神看護学研究室 大賀淳子




【研究紹介】リンパ管の機能形態学
生体科学研究室 下田 浩
リンパ管は私たちの体の中で血管から独立した体液の循環回路をつくっています。血液を循環させる心臓―血管系に対して、リンパ管系は血液以外の体液を集めて再び血流に戻す役割を担っています。リンパ管は私たちの体では、体の様々なところから細い毛細リンパ管として始まり(図1)、次第に合流して太い集合リンパ管になり、体の中心を縦に走る太いリンパ本幹を経て、首の付け根の左右の静脈の一部に辿り着きます。
| 図1.腸壁内のリンパ管(緑)と毛細血管(赤)をレーザー共焦点顕微鏡で見る。 |
| 毛細リンパ管は盲端(矢尻)から始まり、管壁は毛細血管より太い。リンパ管の合流部はよく逆流防止弁をもつため、くびれ(矢印)を呈する。右下のバーは100μmの長さ。 |
リンパ管の中を流れる液(リンパ)の主なものは体の組織内に貯まっていた間質液と呼ばれるものです。血管から浸み出た色々なものを含む水は間質液として私たちの体を潤すだけでなく、体の形作りや栄養や代謝などにも深く関わっています。しかし、あまり組織内に貯まりすぎると、体の一部が腫れてきたり、炎症や感染など様々な病気を引き起こしたりします。さらに、細胞や組織の活動に伴い、間質液にはそれらの老廃物なども貯まってきます。リンパ管はこういった間質液を組織から適度に回収して、体のきれいな環境を保つことに大きく役立っています。腸で吸収された脂肪(と脂肪に溶けているビタミンなどの栄養素)や免疫をつかさどる細胞を運ぶのもリンパ管です(図2)。
| 図2.脂肪を輸送する腸間膜のリンパ管(a)とリンパ球を運搬する小腸のリンパ管(b), (a:実体顕微鏡像、b:走査電子顕微鏡像) | |
| a.脂肪を含むため白く見える数本の数珠状のリンパ管が腸からリンパ節(左下)に向かっている。赤血球を含む血管が赤く見えている。 | b.多数のリンパ球(青)がリンパ管内に侵入している。上には赤血球を含む血管が見える。右下のバーはaが3 mm、bが10μmの長さ。 |
最近では、リンパ管の働きが悪くなることで(または怪我や外科手術でリンパ管がなくなることで)間質液が異常に蓄積したリンパ浮腫や免疫細胞だけでなくがん細胞までもがリンパ管の中を流れることで引き起こされるがん転移が医学的・社会的問題になっています。このように私たちの体にとって非常に大切なリンパ管ですが、意外なことに、最近まであまり多くのことは知られていませんでした。「リンパ管とは何か?」の問いにわずかでも答えられるように、リンパ管の正確な機能形態と成り立ち、病気との関わり、リンパ浮腫治療の開発について研究を行っています。
【研究紹介】臨床看護師がとらえる「よい看護実践」の枠組み
成人・老年看護学研究室 小野美喜
皆さんは“よい看護師“とはどんな看護師を想像しますか?臨床にいるおそらく全ての看護師は“よい看護師“を目指してケアを行っています。「善い」と判断され道徳的要素を含む“よい看護師“は私たち看護師のあり方を目指す倫理的理想像です。研究では“よい看護師“を探究するプロジェクトチームもありアジアを拠点とした学際的な研究がおこなわれています(特集 Good Nurse研究にみる東アジア国際共同研究の意義・方法論・成果、看護研究44(7)、2011. 参照)。日本では小西ら(2006)が、がん患者さんにインタビューし、患者さんの視点からみた“よい看護師“を報告しています。それによると「明るい」「思いやり」など人との関係性を築く性格や「責任感」などのプロとしての能力や態度などをよいとする回答が多いとされています。しかし、患者さんの視点だけが全てとはいえません。看護実践には患者さんに見えない部分もたくさんあります。看護師自身がとらえる“よい看護師“の視点には、患者さんに見えない看護実践も含んだよい看護実践の枠組みがあると考えます。両者の視点をあわせもつよい看護師を探究するためには、看護師の視点をとらえていくことが必要だと考えます。
そこで、今回私がご紹介する研究は、看護師がとらえる「よい看護実践」の枠組みを調査から導いたものです。臨床看護師に実施した調査結果の一部を抜粋して報告します。多くの看護師の方(もしくは一般の方)の目にとまり、ご意見をいただける機会となれば幸いです。
方法は、無記名自記式質問紙法です。質問紙は若手から熟練経験をもつ看護師20名にインタビューした内容から作成しました。質問紙をベッドサイドでケアにあたる看護師600名に配布し、有効回答463部について分析しました(回収率77.2%)。質問紙は、全131項目で、5「そう思う」~0「全くそう思わない」の6段階のリッカート選択方式で回答を得ました。結果は因子分析(主因子法、バリマックス回転、カットオフポイント0.35))を行いました。以下はその結果です。
1)調査した対象者の概要
対象者の男女比は、女性90.4%、男性5.1%、未記入4.3% でした。看護師経験年数は3年未満22.8%、5~10年未満23.1%、10~15年未満14.9%、20年以上2.6%とおおよそ看護師人口の構造に近いものでした。
2)よい看護実践として高い指示を得た内容
よい看護師の実践として高得点だった質問項目は、「ちょっとした変化に気がつく」(4.63±0.58点 平均±SD)、「間違いは認める」(4.55±0.78点)、「どんな処置でも嫌な顔をしない」(4.50±0.67点)、「一人で出来ない時は周囲の助けを借りる」(4.46±0.68点)の順でした。
3)よい看護実践の枠組み
因子分析で不適切な質問項目4つを除き固有値1以上の因子を抽出した結果、9つの因子を得ました。下図に示されるように9つの因子は職場環境、患者/看護師関係、専門性の発揮という3つの柱でとらえることができます。すなわち職場環境としての「公平な業務負担」「チーム協働」「チームでの主体性」、患者/看護師関係としての「患者を人として尊敬」「看護への誇り」「患者のそばに立つ」、専門性の発揮として「科学・技・心の一体」、「患者を知る」、「共感・思いやり」です。

よい看護師の枠組みとしてみえたこと
今回の結果で得られた9つの因子から、看護師の視点からみたよい看護実践は3つの柱を枠組みとしていると、とらえることができます。1つめの柱は患者/看護師関係です。患者さんを尊重し、看護の誇りをもちながら患者さんの側に立てる看護実践を示しています。2つめの柱は専門性を発揮しているということです。専門性を示す内容は、「科学・技・心の一体」、「患者を知る」、「共感・思いやり」の因子です。知識と技術と心をあわせもったスキルで、正しく患者を理解した思いやりをもった看護実践を行う、つまり心を傾けながらも科学的な看護実践といえます。最後の柱は職場環境の中での看護実践です。医師や同業看護師とのチームの中で、チーム員と公平に業務を負担しながら、協働し、しかも主体的に活動できる実践が示されました。
患者さんからみた視点では人との関係性やプロ意識があげられていましたが、それとの相違として、看護師の視点ではチームの中でのあり方にも実践を追求していました。医療が高度化しチーム医療が推進される今、よい看護実践として特徴的な結果であるといえます。患者を中心にチームの中でいかに働くか、科学的な視点と思いやりをもったケアをどれだけ患者に提供できるか、看護師はよい看護実践の実現に向けていると考えます。よい看護師を求める研究は今後も検証が必要であり研究を継続しています。詳細は下記掲載誌をご覧ください。
この研究に関連する論文等
小西恵美子、小野美喜(2011). 看護師がとらえる「よい看護実践」の枠組み 日本看護倫理学会第4回年次大会抄録集.
小野美喜,小西恵美子,八尋道子(2010).明治時代から現代までの教科書に記述された「よい看護師」の変遷.日本看護倫理学会誌,P15-22.
小野美喜、小西恵美子(2009). 臨床看護師が認識するよい看護師の記述―若手看護師の視点―日本看護教育学会誌、18(3)、 P25-34.
小野美喜、小西恵美子(2008). 臨床看護師が認識する「よい看護師」 第27回日本看護科学学会学術集会抄録集 P396.
【研究紹介】看護師の身体診察技術を活用した災害時遺体対応に関わる課題―災害医療活動の経験者に対する面接調査より―
看護アセスメント学 石田佳代子

【研究紹介】Clinical Nurses' Perceptions of Loanwords, Abbreviations, and Jargon and the Actual Usage of this Terminology in the Clinical Setting
Gerald Shirley, Foreign Language Department
| Table 1: Circumstances of Terminology Usage | (%) |
| Messages to next shift | 88.2 |
| Treatment | 62.3 |
| Record-keeping | 52.5 |
| Non-clinical setting | 12.0 |
| Conversing with coworkers | 2.9 |
| Other | 2.6 |
| Table 2: Reasons for Using Terminology | (%) |
| Simple and easy to use | 88.7 |
| Coworkers use it | 36.9 |
| Not understandable by patients | 36.5 |
| Meaning is standardized and mutually understood | 2.6 |
| Has become a habit | 1.9 |
| To increase the sense of “team” | 1.8 |
| Improves efficiency of work | 1.2 |
| It is cool | 1.0 |
| Difficult to translate into Japanese | 0.3 |
| Other | 1.1 |
Among these subjects, 81.6% had encountered terminology that they were unable to understand. Regarding how they dealt with the situation, see Table 3 below. Among these subjects, 9.1% had experienced problems through the use of terminology. Some of the problems cited were [lack of comprehension by the listener], [delay in treatment], etc.
| Table 3: Measures Taken when Terminology not Understood | (%) |
| Immediately asked a coworker | 54.6 |
| Asked a coworker in the same ward later | 37.4 |
| Immediately asked again and again until I understood the meaning | 28.1 |
| Looked it up later | 27.0 |
| Asked coworkers from a different ward later | 11.1 |
| Immediately looked it up | 4.4 |
| Did nothing | 2.5 |
| Asked a doctor | 1.8 |
| Other (asked specialist as the occasion demanded depending on the level of urgency) | 0.7 |
When asked whether they had been asked about the meaning of terminology by patients, 50.8% answered [yes]. As to how they dealt with this experience, most responded that they [conveyed the correct meaning], followed by [told them to ask someone else] and [told them something vague].
It is anticipated that in order to facilitate smooth communication among health care professionals, standardization of terminology will be promoted further in the future. In addition, as specialists working in an important clinical setting concerned with people’s lives, the importance for each nurse to understand the correct meaning of terminology and to use terminology appropriately was suggested.
Note: This article is based on a paper published in the Journal of the Japanese Association of Rural Medicine (Vol. 55, No.6., March 2007, pp. 610-617).
【研究紹介】国際協力:ウズベキスタンでのJICA看護教育改善プロジェクトの経験から
保健管理学研究室 桜井礼子
・ウズベキスタンで看護教育を『変える』 JICA「看護教育改善プロジェクト」の概要 看護教育p66-71 51-1 2010.1
【研究紹介】市町村が実施する「こんにちは赤ちゃん訪問」に関する母親の満足感に関連する要因の検討
【研究紹介】筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の自律神経機能
健康情報科学研究室 品川佳満
筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は,筋肉の萎縮や筋力低下をきたす進行性の神経疾患で,他に類を見ない難病です.
ALSは病気が進むにつれ,歩行ができなくなり,水や食べ物を飲み込むこともできなくなり,場合によっては呼吸も十分にできなくなるため人工呼吸器の装着が必要となります.このような症状は,運動をつかさどる神経細胞(運動ニューロン)が侵されることが原因で発生します.
では,運動をつかさどる神経以外の「感覚神経」や「自律神経」は,障害を受けていないのでしょうか? 実は,ALSでは感覚神経および自律神経は侵されないといわれており,多くの書籍やインターネット上のサイトでは,「運動神経のみ侵される」と記述されています.しかし,この見解に関しては様々な意見があり,中でも自律神経については,障害を受けている,つまり異常をきたしていると報告している研究も多くみらます.
そこで,私の研究ではALSの自律神経機能(特に,心臓の働きをコントロールしている自律神経)が,障害を受けているのか実際に調査を行いました.
調査の方法は,11名の男性ALS患者さんの睡眠中の心拍変動を測定し,自律神経機能の働きを評価しました.心臓は,心拍数を上げる働きをする交感神経(車でいうアクセルの役目)と心拍数を下げる働きをする副交感神経(車でいうブレーキの役目)によって常にそのバランスがコントロールされています.そのため,自律神経活動が活発であると心拍の間隔(脈の間隔)は,安静にしていても一定ではなく,ゆらぎを持ちます(アクセルとブレーキの両方が適度に効いている).つまり,このゆらぎ成分を調べれば,自律神経の活動状態を推測することができます.
図は,心拍間隔のゆらぎから計算した自律神経全般の活動状態を示す指標(TF)および副交感神経の活動状態を示す指標(HF)を健康な人(健常者)のデータと比較したものです.グラフ中の○は平均値,○から上下に伸びているバーは標準偏差をあらわしています.また,グラフには,各ALS患者さんの状態と実際の測定値がわかるように,人工呼吸器を装着していない場合は■,人工呼吸器を装着している場合は▲,「完全な閉じ込め状態(以下TLS)」と呼ばれる,ALSのもっとも進行した状態の場合は★で測定値のところに印を打っています.

図 健康な人とALS患者さんの自律神経活動の比較
※健常者のデータは文献(久保豊,大塚邦明:第7章 生活スタイルに映る心拍・血圧のゆらぎ 1心拍変動,ホルター心電図-基礎的知識の整理と新しいみかた-.初版,東京,医学出版社,2005)から算出したものである.
この図から,ALS患者さんは,心臓の働きをコントロールしている自律神経全般の活動(TF)が健康な人と比べて低下していることがわかります.副交感神経の活動(HF)は,平均値をみるとALS患者さんと健康な人の間に大きな差はみられません.しかし,個別の測定値をみると,ALS患者さんは,高い値(つまり副交感神経活動が活発)を示す方もおられるのですが,健康な人の平均値よりずいぶん低い値(平均値-標準偏差より低い)のところに,半数以上の方が位置しています.また,TLSに陥っているALS患者さん(図の★)は, TFおよびHFが極めて低い値を示していることがわかります.
以上の結果から,ALS患者さんの心臓の働きをコントロールしている自律神経の活動は,全般的に低下していると言えそうです.中でも,もっとも病気が進行している完全閉じ込め状態に陥っているALS患者さんについては,顕著に自律神経機能が低下していることから,運動をつかさどる神経だけでなく自律神経までもが障害を受けている可能性が高そうです.しかし,個人毎のデータから判断すると,ALS患者さんの中には,健康な方とかわらない方や自律神経活動が活発な方もおられました.今後は,どのような要因が自律神経活動に違いをもたらしているのか,さらに調査を進めていきたいと考えています.
【研究紹介】助産師外来に対する妊婦の期待と満足
母性看護学研究室 林 猪都子
近年、助産師業務の確立と妊婦ケアの充実に向けて、正常経過の妊産褥婦のケアは助産師の手で行い助産師の専門性を発揮したいという思いから、医師との役割分担・連携のもとで、助産師が正常妊婦・褥婦の健診と保健指導を行う助産師外来が開設されています。
大分県はこの2~3年の間に病院や医院において、助産師外来を開設する施設が徐々に増えてきています。その中で、A医院は医師外来の健診にて異常がなかった妊婦を対象に、妊娠24週~36週の希望者に1~2回助産師外来での妊婦健診を行っています。助産師外来は週1回午後4名を予約制で行っている状況です。
そこで、本研究は医師外来を受診している妊婦の助産師外来への期待度と助産師外来を受診している妊婦の満足度を比較し、助産師外来の助産師の対応に対する妊婦の満足度を明らかにすることを目的としました。A医院の外来受診者の協力が得られた妊婦を対象にアンケート調査を行いました。質問紙は島田らの「患者満足度測定ツール」を使用しました。
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なお、この研究は本学研究室の卒論生と一緒に行った研究の一部を紹介しています。


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