【研究紹介】 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS) 患者の夜間睡眠状況調査

  基礎看護学研究室 伊東朋子

  

難病中の難病であると言われている筋萎縮性側索硬化症(ALS)は最近の新聞報道やテレビ放映により、かなり知られるようになってきています。重篤な筋肉の萎縮と筋力低下、呼吸筋麻痺により人工呼吸器の装着による延命以外には有効な治療法が確立されておらず、死に至る疾患です。英科学誌ネイチャーに掲載された「ALS原因遺伝子特定」のニュースで今後の治療薬開発にも弾みがついています。しかし画期的な発見もまだ始まったばかりで、ALSでは疾患に関連する不安、抑うつや自力での体位変換ができないことによる身体的な痛みなどが原因となり不眠が生じています。睡眠状態は、ALS患者の健康ひいては生活の質に大きく影響する要素で、ALS患者のみならず、支える家族にとっても影響を与えていると思われます。
 
筋萎縮性側索硬化症患者の夜間睡眠状況調査
 
1. 研究の目的
日本のALS患者総数は約7000人程度ですが、A県には100人ほどの患者がいます。ALS患者の良質な睡眠確保に向けた支援は重要ですが、支援を検討するための基盤となるALS患者の睡眠状態に関する実態調査がなされていません。私は学生のボランティア活動等を通じて、ALS患者やその家族の方と関わってきましたので、A県のALS患者会へ調査協力を依頼して、実態調査を行いました。
 
2.調査方法
1)対象者
A県では56人が日本ALS協会A県患者会に入会していますが、その方々を対象にしました。
 
2)調査内容
   調査票には、対象者の性別、年齢、身長、体重、人工呼吸器装着の有無の他に、睡眠時間、夜間の目覚め、眠りの深さ、起床時の気分、睡眠薬の服用などを回答してもらいました。
 
3)調査票の配付と回収
調査票は郵送で配付し、調査票への記入後に、郵送で回収しました。
 
結果
1)対象者の背景
56人全員に調査票を配付したところ、37人から回収することができました。その詳しい内容を表1に示しています。
 
  対象者の背景            (n=35
 
 
 
項  目
 
 
    人数   (%)
 
 
40歳代
1
(
2.9
)
 
50歳代
8
(
22.9
)
年齢構成
60歳代
15
(
42.8
)
 
70歳代
7
(
20.0
)
 
死亡・無回答
4
(
11.4
)
 
35
(
100.0
)
 
6年以下
11
(
31.4
)
 
7~10年
11年以上
13
(
37.1
)
罹病年数
9
(
25.7
)
 
無回答
2
(
5.7
)
 
35
(
100.0
)
 
有り 
無し 
 
22
11
(
(
62.9
31.4
)
)
人工呼吸器
 
無回答
2
(
5.7
)
 
35
(
100.0
)
 
2)睡眠時間
睡眠時間は表2に示したように6時間以下が11人(31.4%)で最も多く、その睡眠時間が日によって不規則であると感じている人は19人(54.3%)でした。
 
表2. 睡眠時間とその不規則感

 
 
不規則 人数
規則 人数
不明・無回答 人数
合計 人数(%)
6時間以下
8
3
 0
11(31.4)
6~7時間
4
3
2
9(25.7)
7~8時間
5
2
0
7(20.0)
8時間以上
      2
3
0
5(14.3)
無回答
 0
0
3
3( 8.6)
合計
19(54.3)
11(31.4)
5(14.3)
35(100.0)

 
3)睡眠の質について
夜間の目覚めと眠りの深さについて、表3と表4に示しました。夜間の目覚めは痰の吸引や、体位変換で目が覚めていました。深い眠りを確保するために睡眠薬を飲んでいる人も多かった。
 
 
 夜間の目覚め

夜間の目覚め
人数
()
覚醒無し
2
 (5.7)
14
19
(54.2)
4回以上
8
(22.9)
わからない
3
(8.6)
無回答
3
  (8.6)
合計
35
(100)

 
 
表4 眠りの深さ

眠りの深さ
人数
  ()
満足な睡眠
13
(37.1)
あまり眠れない
13
 (37.1)
ほとんど眠れない
1
 (2.9)
わからない
8
 (22.9)
合計
35       (100.0)

 
 
まとめ
この研究ではA県のALS患者35人の協力のもとに睡眠の実態を調査することができました。痰を吸引する度に夜間睡眠中に目覚めたり、日によって睡眠の深さが不規則であったりと、良質な睡眠が維持・確保できにくいことが明らかとなりました。この結果をもとに今後、ALS患者に良質な睡眠が確保できるような看護の支援のあり方を探していきたいと思っています。ALSでは、寝がえり1つ打つにも、人の手を必要としています。この疾患に少しでも興味を持って下さる方がおりましたら、是非、ボランティア活動に参加して下さい。若い方のエネルギーとやさしい心を待っています。
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