【研究紹介】母親の食意識と3歳児の肥満や食行動との関連についての検討

小児看護学研究室 高野政子

 

. はじめに

 文部科学省の平成18年度学校保健統計調査によると、肥満傾向児の出現は過去30年間で2倍以上となっている。3歳児カウプ指数が平均より高いと20歳時に肥満になる割合が高く、3歳児の肥満予防の指導が重要という報告がある。近年は肥満によるⅡ型小児糖尿病の増加が指摘されており、家族、特に母親の食意識や児への食行動に対する肥満予防のために看護介入が重要である。
本研究の目的は、3歳児をもつ母親の小児肥満や食事の与え方など母親の意識や、その母親の意識の違いによる3歳児の肥満や児の食行動の関連を検討することで、看護介入の焦点化に示唆を得たいと考えた。
 
. 研究方法
1. 調査期間は2007年7月25日~10月31日で、対象者は、保育所(13施設)に通所する3歳児クラスの児とその母親とした。
2. 調査方法:対象者に協力依頼文を配布し同意書を回収できた母親には自記式質問紙法で調査した。その際、児と一致させるため質問紙には記名し封をするよう依頼した。児の測定は、研究者が当日対象児にも説明し了解を得て保育時間内に行った。
3. 調査内容:母親への質問紙は、属性8項目、児の食行動について8項目、児
の咀嚼に関する食行動について15項目、母親の食事の与え方について12項目、母親の小児肥満についての意識20項目の計63項目で作成した。質問紙の回答は、「強く思う」から「全く思わない」の4段階とした。児の食に関しての質問や意見を自由記述とした。また、保育所にある身長の最新データと、実際に測定した体重のデータをもとに、厚生労働省の肥満度の評価基準に従い肥満度を求めた。肥満度15%以上を肥満児とした。
4. 統計的分析:統計ソフトSPSSver.14.0を使用し、母親の食事の与え方については、母親の小児肥満についての意識の違いの2群、非肥満児・肥満児の2群でMann-WhitneyのU検定を行った。有意水準は5%とした。
5.倫理的配慮:本学研究倫理安全委員会の審査を受け承認を得て実施した。
 
. 結果
 母親への質問紙配布数170部、有効回答数149部(有効回答率90.3%)であった。児が測定日に欠席または児が拒否した場合を除外した結果、母親149人、児126人が対象者となった。
1. 対象者の属性
                              
    takano_table1.PNG
 
対象者の母親の平均年齢は33.4±4.7歳、対象児の平均年齢3.5±0.5歳であった。保育所の身体測定した126人中、非肥満児118人(93.7%)で、肥満児8人は(6.3%)であった。
     
2. 児の食行動・咀嚼に関する食行動と母親の食事の与え方
児の食行動では、《毎日3食食べる》147人(98.7%)、《決まった時間に食べる》145人(97.3%)であった。一方《偏食が多い》78人(52.3%)、《お菓子が多い》74人(49.7%)、《ジュースが多い》145人(40.3%)であった。
母親の食事の与え方では、《肥満を意識した食事》は76人(51.0%)であり、具体的には、《栄養素を意識した食事》110人(73.8%)、《野菜を多く使った食事》116人(77.9%)であり、野菜や栄養素を意識した内容を考慮していた。<噛んで食べる>より<好き嫌いをしないで食べる>ことを意識させている母親が多かった。
3. 小児肥満に対する母親の意識の高低2群と児の食行動との関連
小児肥満に対する意識の違いについては、「全く思わない」1点「強く思う」4点として20項目を得点化した。その結果の中央値58点を境界に2群に分け、得点の高い群を「意識している群」(以下A群)、低い群を「意識していない群」(以下B群)とした。A群84人、B群65人であった。
 
 takano_table2.PNG
 
児の食行動では、《毎日3食食べる》の質問に対し、A群の方がB群よりも《3食を食べる》ものが多いが(P<0.05)、《お菓子が多い》と《ジュースが多い》はB群がA群よりも多かった(P<0.01)。児の咀嚼など食行動では、《噛みついて引きちぎる》《上手に飲み込む》では、A群の母親はB群よりも咀嚼や嚥下が上手の回答で高い数値であった(P<0.01)。
母親の食事の与え方についての比較:     
            
 takano_table3.PNG
 
《肥満を意識した食事》《栄養素を意識した食事》については、A群の母親の方がB群より肥満を意識した《食事内容》《栄養素》で準備していた(P<0.01)。また、A群の母親はB群より《野菜を多く使った食事》を意識し(P<0.05)、《好き嫌いしない》ことを指導していた(P<0.01)。一方、《欲しい分だけ与える》では、B群の母親がA群よりも児が欲しがるだけ与えている(P<0.01)ことが明らかになった。
4. 非肥満児群と肥満児群の2群と母親の意識や食事の与え方との関連
 児の食行動では、肥満児群の母親は《食事量が多い》ことを非肥満児群より意識していた(P<0.05)。また、児の咀嚼に関する食行動では、肥満児群の母親の方が非肥満児群より《あら噛みをしている》と意識していた(P<0.05)。一方、《よく噛むことを指導》《好き嫌いをしないことを指導》では、どちらも肥満児群の母親の方が非肥満児群より指導していた(P<0.05)。
 
. 考察
母親は児が《毎日3食食べている》や《決まった時間に食べる》をほぼ全員が回答したが、《ゆっくり食べることが苦手》《勢いよく飲食する》については約半数の母親が児の食べ方を意識していた。児の咀嚼については、母親の約9\8割が児は《歯が丈夫である》と答えており、《児があまり噛まずに飲み込んでいる》は約2割弱と少なかったように、児の咀嚼の《丸のみ食べ》行動は意識されていなかった。母親は「就業しているため出勤前や帰宅後の短時間で子どもの食事を意識して準備するのは難しい」「簡単に調理できる柔らかいものに偏る」と記述していたことや、《好き嫌いしないことを指導》は全員が指導していたが、《よく噛むことを指導》は約8割で、母親が咀嚼については十分意識していないのではないかと思われた。また、食事量は《児が欲しい分だけ与える》という母親が約7割と多く、1日必要カロリーなどは子ども任せにしている一方で、「1日の食事量がわからない」と心配する母親もいた。
今回の調査では《肥満を意識した食事内容を与えている》のは約半数にとどまり、3歳児頃からの肥満が将来の食行動に影響するという母親の意識は低いと考えられた。今後は母親への食育の指導の必要性が示唆された。
 
. 結語
母親の意識の違いによる3歳児の満との関連や児の食行動との関連を検討した。看護介入では、児には《勢いよく飲食する》《慌しくあら噛みをする》という食行動の指導が必要であり、母親には《適切な食事量》や咀嚼を意識して食べさせるように個別に指導が必要であることが示唆された。
 
成果発表
1.    39回日本看護学会(地域看護)発表,静岡, 2008
2.    39回日本看護学会論文集(地域看護)掲載,p51-53,2009 
QRコード 携帯サイト

左のQRコードを携帯で読み込んで下さい。

大学の案内・募集要項資料の請求はバナーをクリック↓

資料請求はこちら
2012年大学案内 2012年大学案内

本学のパンフレットをご覧いただけます。