【研究紹介】夜間労働の時の眠気は何に影響されるか?~三交替で働く人の個人特性、生活習慣、仕事の内容との関係

影山隆之(精神看護学研究室)

 

人間という動物は、昼に活動して、夜に睡眠を取るようにできているので、夜働こうとすれば眠いのは当たり前です。ところが現代社会は、誰かが夜も働かなければ困るという世の中になってしまいました。工場、運輸、放送、医療など、いろいろな場面で、夜勤(夜の労働)が増えています。夜勤者の中には、いつも夜勤しかしない人と、日によって勤務時間帯が変わる人、つまり交替勤務者がいます。日本の企業の実に33%には夜勤者が、23%には交替勤務者がいるそうです。夜働き昼眠る生活は、人間という動物の性質に反しているので、昼間の睡眠は短く浅くなりやすいことがわかっています。このため交替勤務者には、よく眠れていないなどの睡眠問題を抱えている人が、日勤者よりはるかにたくさんいます。

 この問題を健康という面から考えると、三つの影響が注目されます。第一に、よく眠れなければ、気分がすぐれないなど「生活の質」の低下が起こります。第二に、健康な日勤者でも睡眠が極端に短い人や極端に長い人では、何年か後に心疾患・糖尿病・アルツハイマー病性認知症などにかかる可能性が高いとか、平均余命が短いとかいうことが、最近の研究でわかってきました。だとすると、睡眠問題が多い交替勤務者でも同じなのか、ということが心配です。第三に、勤務中に強い眠気や居眠りが起こると、それが仕事のミスや事故の原因になります。実際、世界的に話題になった原発事故やタンカー座礁事故で、交替勤務者の睡眠問題が原因だったものは、たくさんあります。

 そこで、「どうしても誰かが交替勤務をしなければいけない」とするならば、交替勤務者の睡眠を改善したり、夜勤時の眠気を改善したりする方法を知ることも必要です。そこで、ある工場で働く交替勤務者(たまたますべて男性でした)が夜勤の最中に感じている眠気と、個人特性・生活習慣・仕事の内容との関係について、調べました。

 

【研究方法】

ある工場で交替勤務に就いている男性157名を対象に、質問紙(アンケート)調査を行いました。半数以上が30歳代で、高齢の人はいませんでした。勤務時間は1週ごとに、日勤8:00~16:15→準夜勤16:00~0:15→夜勤0:00~8:15、と交替します(土日は休み)。仕事の内容は全員がほぼ同じで、残業はほとんどありません。

 勤務中の眠気を測るには図1のような質問を使い、3つの勤務時間帯それぞれについて2時間おきに、ふだんの眠気(←→目覚め度)を1~9点の数字で答えてもらいました。数字が大きいほど眠気が強いわけなので、これを眠気得点と言うことにします。

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             図1 眠気尺度

 このほか、年齢、交替勤務の経験年数、自分で主観的に判断した健康度、生活習慣、自分は朝型だと思うか夜型だと思うか、昼間眠らなければならない時の心がけ、職場環境など、さまざまなことを調べました。職場環境については、仕事の手順や締切りの判断を任されていると感じるか(コントロール感)、やりがいを感じるか、上司は自分を応援してくれているか、同僚は自分を応援してくれているか、などを調べました。

 

【結果】

 図2は、各勤務時間の眠気得点の平均点を表します。日勤の場合、朝一番がもっとも眠く、午後にもう一度眠気のピークがあります。準夜勤の眠気が最低で、仕事が終わる20:00の眠気でも、夜勤に入る時の20:00の眠気ほど強くないことがわかりました。この時間帯は、働き盛りの人では「最も寝付きにくい時間帯」として知られています。働き盛りの夜勤の眠気は後半になるとますます強く、午前4時頃に最も強くなることもわかりました。この時間帯は、交替勤務職場で最もエラーが多い時間帯として知られています。

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                図2 勤務時間ごとの眠気                     図3  交替勤務への慣れと夜勤時の眠気

 交替勤務への慣れの程度によって回答者を2群に分け、それぞれの夜勤時の眠気得点を求めてみました。慣れの程度の高群とは、交替勤務に「非常に慣れた」8%、「かなり慣れた」51%を合わせた人たち、低群とは「少し慣れた」24%、「わずかに慣れた」10%、「慣れない」7%を合わせた人たちです。交替勤務に慣れないという群では夜勤時の眠気得点が高かったわけです。

 図2と3を合わせて考えると、主観的に思い出して答えてもらった眠気得点も、数値としてはある程度信用できそうだということがわかりました。

 次に図4は、夜勤が続いて昼間眠らなければいけない時の、睡眠前の心がけ(複数回答)を示します。9月に調査を行ったせいか、室温対策という答えが最も多く、光対策、飲酒(寝酒?)、入浴などがこれに次いでいました。

 

   kageyama_Fig4.jpg              

                                           図4 昼間睡眠のための心がけ

 

最後に、夜勤時の眠気(図2)のうち0:002:004:00の眠気得点の平均を夜勤前半の眠気、4:006:008:00の眠気得点の平均を夜勤後半の眠気、と言うことにしました。そして、それぞれに関連が強い要因を、統計学の手法を使って探索しました(表1)。表1に数字がない要因は、夜勤前半(後半)の眠気との関連が弱かったということです。表1で、betaの値がプラスの場合には、その要因があると眠気が強いということです(値が大きいほど関連は強い)。反対に、betaがマイナスの場合には、その要因があると眠気が弱いということです(値が小さいほど関連は強い)。

     表1 夜勤の時の眠気に関連する要因

kageyama_Table1.jpg

この結果は次のように解釈できます。1)「自分はいま健康だ」と感じている人ほど夜勤時の眠気が弱い、というのは納得できます。2)朝型の人は夜型の人に比べ、早起きは得意だが夜勤や交替勤務は苦手だと言われてきましたが、それが今回の結果でも証明されました。3)回答者は皆ほとんど同じ業務に就いていますが、自分でペースや手順をコントロールできていると実感する人や、やりがい・達成感を味わっている人は、前向きに仕事に取り組んでいるためか眠気が弱いことがわかりました。受け身で渋々やっていると、眠くなるようです。4)寝酒は寝付きをよくしますが、後でトイレに起きたり、眠りが浅くなったりするので、トータルで見ると睡眠の量・質にはマイナス効果を及ぼすと言われています。今回も、飲む日が多い人ほど夜勤時の眠気が強かったのは、お酒のせいで睡眠の量・質が低下しているためでしょう。5)昼間の眠りに就く前にカフェインを摂らないよう心がけている人や、入浴で心身をリラックスさせている人は、夜勤時の眠気が弱いことがわかりました。これらの習慣は、短く浅くなりやすい昼間の睡眠を少しでも良眠にする効果があるのでしょう。

深夜に働かなければならない人(特にもともと朝型の人)のための夜勤時の眠気対策としては、全般的な健康管理、仕事の志気を向上させる工夫、そして、昼間の入眠や睡眠維持の助けとなる生活指導が、役に立ちそうだということが、この研究からわかりました。

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