【研究紹介】食物アレルギーをもつ児と保護者に対する保育所看護職の取り組み

小児看護学研究室 田中美樹

 

1. はじめに
1998年、乳児保育需要の増加を受け、全ての保育所で乳児保育が実施できるよう児童福祉施設最低基準の一部改正がされた。厚生労働省児童家庭局長は、乳児9人以上を入所させる保育所では看護職1人を置くことと通知した。2007年の社会福祉施設等調査報告では、全国の保育所の看護職配置率は20.9%であり、看護職配置が進んでいないのが現状である。
このような背景の中、特に乳幼児の食物アレルギーが増加しており、食物アレルギー有病率調査では、乳児が約10%、3歳児で約5%と報告されている。自ら対処できない乳幼児は重篤な状態に陥りやすく、乳児の集団保育の増加に伴い、保育所の離乳食など食物アレルギーに対する対応が重要な課題となっている。
そこで本研究は、保育所看護職が食物アレルギーをもつ児や保護者に対して行っている取り組みや、他の職員との協働の実際について明らかにし、保育所看護職の役割や課題について示唆を得ることを目的とした。

 

2. 方法
調査期間は2009年7月末~8月末で、九州内2県の保育所に勤務する看護職を対象とした。無記名の自記式質問紙法で、調査項目は属性9項目、食物アレルギーの管理6項目、保護者への対応8項目、他職種との連携6項目、食物アレルギーの管理や指導などに対する認識10項目の合計39項目と自由記述である。データは記述統計、χ²検定をSPSSver.17.0を使用し分析した。有意水準は5%とした。
看護職(保健師・看護師)が在籍する施設の施設長および看護職に本研究の趣旨について記載した文書を郵送し、承諾の得られた施設にのみ質問紙を配布した。

 

3. 結果
質問紙の配布数72部、回収数58部(回収率80.6%)で、欠損のない55部を分析対象とした。
対象者の属性は、平均年齢41.5歳で、保育所の平均勤務年数は4.9年であった。小児看護の経験がある看護職は15名(27.3%)、経験がない看護職は40名(72.7%)であった。

 

tanaka_table1


食物アレルギーに関する食品の制限を決定する基準は、医師からの診断書40名(62.5%)、保護者からの依頼21名(32.8%)であった。保育所で預かる食物アレルギーに関する薬剤は、内服薬が約6割、軟膏が約4割と多く、エピネフリン注射は1名のみであった。食物アレルギーについて看護職が保護者から受けた相談は「アレルギーの症状、アナフィラキシー」「食物除去・解除について」等で、一方、看護職が保護者の対応で困った内容は「食物アレルギーに対する保護者の認識が不十分」「保護者と直接話す機会が少ない」等であった。看護職の約8割は保育士との情報交換が行えていると回答した。

 

tanaka_table2

tanaka_table3


4. 考察
厚生労働省が作成した「食物アレルギー診療の手引き2005」が提示されたにもかかわらず、食品の制限の決定に医師の診断書を用いている施設は6割で、診断書に基づく対応が普及しているとはいえなかった。そのため、自宅では食品の制限をしていない保護者の要望にも対応する等の混乱が生じていると考える。食物アレルギーの薬物療法では、2005年4月に承認されたアナフィラキシー補助療法薬のエピネフリン自己注射薬を預かっている看護職は1名のみであり、アナフィラキシーショックへの対策が十分でないことが明らかになった。保護者は、食物アレルギーについて医療面や生活面について質問しており、看護職は診断を受けた後のフォローや信頼関係をつくるためコミュニケーションをとる等で対応していた。しかし、クラス担任の看護職が約7割で、そのうち9割が0歳児クラスを任されていることから、保育業務に追われ保育所全体の食物アレルギーに対応できる体制ではないと考える。看護職が保護者の対応で困っている内容は、保護者の食物アレルギーの食事療法や対応が不適切なことであった。看護職は、児や保護者に対し、保育士や栄養士とも連携し専門性を活かして活動することが期待される。

 

5. 成果発表
1) 第20回日本小児看護学会学術集会発表,兵庫,2010
2) 日本小児看護学会誌投稿中
 

QRコード 携帯サイト

左のQRコードを携帯で読み込んで下さい。

大学の案内・募集要項資料の請求はバナーをクリック↓

資料請求はこちら
2012年大学案内 2012年大学案内

本学のパンフレットをご覧いただけます。