【研究紹介】臨床看護師がとらえる「よい看護実践」の枠組み

成人・老年看護学研究室 小野美喜

 

 皆さんは“よい看護師“とはどんな看護師を想像しますか?臨床にいるおそらく全ての看護師は“よい看護師“を目指してケアを行っています。「善い」と判断され道徳的要素を含む“よい看護師“は私たち看護師のあり方を目指す倫理的理想像です。研究では“よい看護師“を探究するプロジェクトチームもありアジアを拠点とした学際的な研究がおこなわれています(特集 Good Nurse研究にみる東アジア国際共同研究の意義・方法論・成果、看護研究44(7)、2011. 参照)。日本では小西ら(2006)が、がん患者さんにインタビューし、患者さんの視点からみた“よい看護師“を報告しています。それによると「明るい」「思いやり」など人との関係性を築く性格や「責任感」などのプロとしての能力や態度などをよいとする回答が多いとされています。しかし、患者さんの視点だけが全てとはいえません。看護実践には患者さんに見えない部分もたくさんあります。看護師自身がとらえる“よい看護師“の視点には、患者さんに見えない看護実践も含んだよい看護実践の枠組みがあると考えます。両者の視点をあわせもつよい看護師を探究するためには、看護師の視点をとらえていくことが必要だと考えます。

 

 そこで、今回私がご紹介する研究は、看護師がとらえる「よい看護実践」の枠組みを調査から導いたものです。臨床看護師に実施した調査結果の一部を抜粋して報告します。多くの看護師の方(もしくは一般の方)の目にとまり、ご意見をいただける機会となれば幸いです。 

 

 方法は、無記名自記式質問紙法です。質問紙は若手から熟練経験をもつ看護師20名にインタビューした内容から作成しました。質問紙をベッドサイドでケアにあたる看護師600名に配布し、有効回答463部について分析しました(回収率77.2%)。質問紙は、全131項目で、5「そう思う」~0「全くそう思わない」の6段階のリッカート選択方式で回答を得ました。結果は因子分析(主因子法、バリマックス回転、カットオフポイント0.35))を行いました。以下はその結果です。

 

1)調査した対象者の概要 

 対象者の男女比は、女性90.4%、男性5.1%、未記入4.3% でした。看護師経験年数は3年未満22.8%、5~10年未満23.1%、10~15年未満14.9%、20年以上2.6%とおおよそ看護師人口の構造に近いものでした。

2)よい看護実践として高い指示を得た内容

 よい看護師の実践として高得点だった質問項目は、「ちょっとした変化に気がつく」(4.63±0.58点 平均±SD)、「間違いは認める」(4.55±0.78点)、「どんな処置でも嫌な顔をしない」(4.50±0.67点)、「一人で出来ない時は周囲の助けを借りる」(4.46±0.68点)の順でした。

3)よい看護実践の枠組み

 因子分析で不適切な質問項目4つを除き固有値1以上の因子を抽出した結果、9つの因子を得ました。下図に示されるように9つの因子は職場環境、患者/看護師関係、専門性の発揮という3つの柱でとらえることができます。すなわち職場環境としての「公平な業務負担」「チーム協働」「チームでの主体性」、患者/看護師関係としての「患者を人として尊敬」「看護への誇り」「患者のそばに立つ」、専門性の発揮として「科学・技・心の一体」、「患者を知る」、「共感・思いやり」です。 

   

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よい看護師の枠組みとしてみえたこと

 今回の結果で得られた9つの因子から、看護師の視点からみたよい看護実践は3つの柱を枠組みとしていると、とらえることができます。1つめの柱は患者/看護師関係です。患者さんを尊重し、看護の誇りをもちながら患者さんの側に立てる看護実践を示しています。2つめの柱は専門性を発揮しているということです。専門性を示す内容は、「科学・技・心の一体」、「患者を知る」、「共感・思いやり」の因子です。知識と技術と心をあわせもったスキルで、正しく患者を理解した思いやりをもった看護実践を行う、つまり心を傾けながらも科学的な看護実践といえます。最後の柱は職場環境の中での看護実践です。医師や同業看護師とのチームの中で、チーム員と公平に業務を負担しながら、協働し、しかも主体的に活動できる実践が示されました。 

 

 患者さんからみた視点では人との関係性やプロ意識があげられていましたが、それとの相違として、看護師の視点ではチームの中でのあり方にも実践を追求していました。医療が高度化しチーム医療が推進される今、よい看護実践として特徴的な結果であるといえます。患者を中心にチームの中でいかに働くか、科学的な視点と思いやりをもったケアをどれだけ患者に提供できるか、看護師はよい看護実践の実現に向けていると考えます。よい看護師を求める研究は今後も検証が必要であり研究を継続しています。詳細は下記掲載誌をご覧ください。 

 

この研究に関連する論文等

小西恵美子、小野美喜(2011). 看護師がとらえる「よい看護実践」の枠組み 日本看護倫理学会第4回年次大会抄録集.

小野美喜,小西恵美子,八尋道子(2010).明治時代から現代までの教科書に記述された「よい看護師」の変遷.日本看護倫理学会誌,P15-22.

小野美喜、小西恵美子(2009). 臨床看護師が認識するよい看護師の記述―若手看護師の視点―日本看護教育学会誌、18(3)、 P25-34.

小野美喜、小西恵美子(2008). 臨床看護師が認識する「よい看護師」 第27回日本看護科学学会学術集会抄録集 P396. 

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