大分県内における在宅療養児の訪問看護の実態と課題

更新日2014.09.22

小児看護学研究室  草野淳子

1.はじめに
厚生労働省は、平成15年「医療体制の改革ビジョン」の中で、医療依存度が高い小児が地域で生活できる政策を提言し、地域医療連携、在宅支援機能の強化に取り組んでいます。医療依存度の高い小児は、生命の危機に直結しやすいため、家族は不断の緊張状態におかれ、身体的・精神的な疲弊を感じています。このような状況の中で、医療的ケアが必要な小児の地域での暮らしを身近に支える役割として、訪問看護師が期待されています(下地 2010)。しかし、大分県内では、地域で訪問看護を利用している小児の数や訪問看護の実施状況は把握されていません。そこで、本研究では大分県内の訪問看護を受ける在宅療養児の状況、小児の訪問看護の実施状況等を明らかにして、今後の課題を検討することにしました。

2.研究方法
調査期間は平成25年9月~10月でした。対象者は、大分県内で小児の訪問看護を実施している訪問看護ステーションの管理者としました。調査は、先行文献を参考に独自に作成した無記名の自記式質問紙法を用いて、実施しました。公益社団法人大分県看護協会のホームページの情報より、小児の訪問看護を実施している施設を抽出し、小児の訪問看護を実施している施設の管理者に内諾をとり、質問紙を郵送しました。対象者には文書の保管方法やプライバシーの保護などの倫理的配慮を文書で説明しました。

3.結果
大分県内の訪問看護ステーション101施設のうち、小児の訪問看護を実施している19施設に質問紙を配布し、18部(94.7%)の回答が得られました。
19施設を市町村別にみると、中津市3か所、宇佐市3か所、大分市7か所、別府市2か所、臼杵市1か所、津久見市1か所、佐伯市2か所でした。豊後大野市、竹田市、日田市など県西部や国東市など県北東部では小児の訪問看護を実施しているステーションがなく、地域差がありました。回収した回答はすべてを有効回答としました。対象施設の概要を表1に示しました。小児の訪問看護の利用状況について表2に示しました。対象18施設で計62人の小児が訪問看護を利用していました。実施されている処置・ケアの内容について表3に示しました。「経管・胃瘻栄養管理」が最も多く40人(64.5%)、次いで「気管内吸引の実施」36人(58.1%)、「気管切開管理」30人(48.4%)、「人工呼吸器管理」21人(33.9%)、「酸素療法管理」18人(29.0%)等の支援を実施していました。

4.考察
先行文献では、訪問看護ステーション161施設中62施設が、小児の訪問看護を実施しており、利用する小児の主疾患は脳・神経系疾患が最も多く、次いで脳性麻痺、先天異常が多いこと、吸引や経管栄養、酸素療法が実施されていたことが報告されています(谷口 他 2005)。大分県内の訪問看護ステーションのうち小児の訪問看護を実施しているのは約2割弱にとどまり、谷口らの約4割という結果と比較すると実施率が少ないと言えます。しかし、小児の主な疾患や実施されている処置・ケアの内容は、谷口らの調査と同様でした。対象の18施設中5割強が小児の訪問看護を開始してから5年以下であることから、大分県内では、近年小児の訪問看護を実施するステーションが増加しつつあると考えられます。
小児の訪問看護では対象者が重症であり、小児領域における専門的な知識や技術等が必要です。訪問看護師には医療的ケアの実践能力だけでなく、重症児の成長や発達を理解した看護ケアの実践能力が求められます。しかし、大分県では小児の訪問看護の利用者が1施設あたり1~3人であるステーションが約7割であり、訪問看護師の中でも小児看護の経験のある看護師は約3割と少なく、今後、小児を対象とする看護の実践力を育成することが課題と考えます。
医療処置を継続しながら在宅療養を行う小児の場合は、個別的なケアや地域社会との連携は必須であり、医療と福祉の連携が不備であると在宅医療の環境は劣悪になると言われています(緒方 2013)。大分県における訪問看護の依頼元は、病院NICU・小児科からの依頼が約9割と大部分を占めており、病院が情報提供の窓口となり関係機関への紹介や地域連携を図る役割を果たしています。また、家族からの直接の依頼や、保健所・保健センターからの依頼もあるため、保護者や関係者に小児を対象として訪問看護を実施している事業所を広報することで、利用も増加することが予測されます。保護者サービスを利用できるよう、小児の訪問看護が可能な施設を増加させ、地域差をなくすことが課題と言えます。

5.おわりに
大分県では約2割弱の訪問看護ステーションが、小児の訪問看護を実施しており、調査対象の18施設において62人の小児が、訪問看護を利用していました。小児の訪問看護の実施率は全国に比べ低く、県内でも地域的な差がありました。今後、小児を対象とする訪問看護のできるステーションを増やし普及させることで地域差をなくすことが課題と考えます。

引用文献
緒方健一(2013).NICU・小児科病棟から在宅医療への移行と問題点―受ける側として:在宅診療医―.小児内科45(7),1286-1290.

下地節子(2010).小児訪問看護を広げていくための取り組み.訪問看護と介護15(8),591-593.

谷口美紀,横尾京子,名越静香,他(2005).小児領域における訪問看護ステーションの活用 第一報:訪問看護ステーションの立場からみた実情と課題.日本新生児看護学会誌11(1),32-36.