こどもの食物アレルギーに対する妊娠期の葉酸摂取の影響

更新日2014.07.03

生体科学研究室 安部眞佐子

妊娠と葉酸について
 葉酸はビタミンの一種です。細胞が増えるときに欠かせないビタミンで、酵母エキスやホウレンソウの葉っぱから抽出されました。葉もの野菜や果物、レバーなどが葉酸を多く含んでいます。現在、日本の中で一番多く葉酸をサプリメントとして摂っているのは、妊婦さんです。
  葉酸は、アメリカ合衆国では1998年から穀類に添加されています。その目的は、生まれてくる赤ちゃんの神経管閉鎖障害を予防するのが主なものです。日本でも、2000年に同じ目的で妊婦さんに食物から積極的に葉酸をとるように、また、どうしても不十分な場合にはサプリメントとしてとるように厚生労働省から通知がでています。
2009年にオーストラリアの研究者が妊娠後期に葉酸をとると、わずかにこどもの喘息が増えるという研究結果を発表しました。一方、卒論の学生と一緒に大分市で行った調査では、2011年に28.9%のお母さんが妊娠中に葉酸サプリメントを摂取しており、2013年には40%を超えるお母さんが摂取していました。このように多くのお母さんが葉酸サプリメントを摂取するようになった中で、乳幼児期に多い食物アレルギーの発症に対する影響を観察するため調査を継続していますので、途中経過を報告します。

調査方法
 保健所で行われる1歳6か月健診のときに、アンケート用紙を回収しました。回収期間は、2011年7月から 10月、2012年5月から8月、2013年1月から8月です。親のアレルギーの有無については自己申告してもらいました。こどもの食物アレルギーについては、医師の診断がある場合を食物アレルギーあり、としています。また、葉酸摂取については、妊娠中に葉酸を摂取した場合を、葉酸摂取ありとしています。

調査結果と考察
  回収されたアンケート用紙は4725枚でした。アレルギー学会のガイドラインでは親や同胞(つまり、きょうだい)にアレルギーがある場合には、ハイリスクとされていますが、どのくらいハイリスクになるのかがわからなかったので、調べてみました。表の葉酸-はお母さんが妊娠中に葉酸を摂っていないことを表しています。両親ともアレルギーがないときには、こどもの食物アレルギーの発症率は女児で3.3%、男児で10.4%と、男児の発症が多くなっていました。表では、両親ともアレルギーがなくて、お母さんが葉酸をとっていない場合を1として、統計的に有意である場合を黄色く塗っています。女児では両親共にアレルギーがある場合3.33倍にこどもの食物アレルギーが増えていました。しかし、男児の場合では、親のアレルギーのみでは有意になることがありませんでした。葉酸を妊娠中にとっている場合を、葉酸+としましたが、女児では、両親にアレルギーがある場合5.33倍に、父親のみにアレルギーがある場合に3.69倍に増えていました。また、男児の場合、両親にアレルギーがある場合は1.96倍でした。

 

図 児の食物アレルギーの発症頻度

表 親のアレルギー保有と母親の葉酸摂取別の児の食物アレルギー発症オッズ比

 今回の分析結果では、葉酸を妊娠中にとると、わずかにこどものアレルギーの発症が増えるように見えます。しかし、こどもの食物アレルギーに関しては、親のアレルギーに関しても、アレルギーの種類によっておこりやすさが違う研究もいくつか報告されています。また、他にも、出生順位、出生の季節、子どもが他のアレルギーを持っているか、さらに、栄養法など、様々な影響があるといわれています。先にあげたオーストラリアの研究の場合、子どもの喘息については、母親が葉酸を摂取した時期の影響も検討されており、葉酸の妊娠に対する良い影響を考慮して、現在は妊娠前1か月〜妊娠3か月までの摂取にするように日本ではいわれています。今後は、葉酸摂取と他の要因の関連性を調べつつ、アレルギーを起こしにくい葉酸サプリメントの摂取法について考えたいと思っています。
 お忙しい育児の合間をぬってアンケートにご協力いただいたお母様がた、また、大分市保健所のかたがたにはアンケート回収がスムーズに運ぶようにご配慮いただいて研究をさせていただいています。この場を借りてお礼申し上げます。