小児病棟と原籍校、病院内学級の連携のためのマニュアルに関する認識

更新日2014.02.12

小児看護学研究室 高野政子

 近年、小児医療の進歩と小児の疾病構造の変化に伴い、長期にわたり継続的な医療を受けながら学校生活をおくる子どもの数は増えています(中央教育審議会 2008)。本研究は小児病棟における原籍校、病院内学級との連携について看護師と原籍校、病院内学級の教員の連携の実態や看護師長の認識及び今後の課題を明らかにすることを目的に調査を行いました。

1.研究方法

 調査は2011年8月~9月に実施しました。対象者は、全国の病院内学級を設置している病院の病棟看護師長に無記名の自記式質問紙で調査しました。手順は文部科学省の特別支援学級一覧と、医療機関等のホームページで抽出した病院内学級を設置している病院188施設の看護部長に、調査依頼文を郵送し、看護師長への質問紙の配布を依頼しました。両者に公開時の配慮、資料の保管・処分など倫理的配慮について文書で説明しました。

2.結果

 質問紙の配布数は188部、回収数は60部(回収率31.9%)で、58部を有効とした(有効回答率96.7%)。  対象者の属性は、看護師長は女性55名(94.9%)、男性2名(3.4%)で、平均年齢49.1±5.48歳、小児看護経験は平均7.5±7.52年で、5年未満が25名(43.1%)と最多でした。また、看護師長経験は平均6.0±6.62年で、5年未満が26名(44.8%)と最多でした。(表1)

小児病棟の看護師と原籍校、病院内学級との連携では、病院内学級とは連携が取れているが、学童の原籍校との連携はあまりとれていないことが明らかになりました。(表2)連絡窓口を尋ねた結果は図の通りでした。

 

 入院患児に対する復学支援の状況(表3)
「医療スタッフ、保護者、教育関係者での退院前の話合いの機会は、「持っている」33名(60.0%)、「持っていない」22名(40.0%)でした。持っていると回答した看護師長33名に話し合いの頻度を質問しました。「入退院時のみ」16名(48.5%)、「週に1回」2名(6.1%)、「1ヶ月に1回」2名(6.1%)などで、「その他」の12名(36.4%)は、定期的ではなく必要時連絡すると回答しました。小児がんは他の疾患よりも入院が長期となり、特に復学支援が重要です。そこで、小児がん患児の有無で2群に分け【小児がん患児あり】【小児がん患児なし】とし比較しましたが、各項目とも統計的有意差を認めませんでした。

復学支援マニュアルについて(表4)
 看護師が原籍校や病院内学級と連携するためのマニュアルが必要と思うか否かを質問しました。その結果約5割が必要だと思うと回答しました。小児がん患児看護の有無で2群に分け比較しましたが、有意な差を認めませんでした。看護師のための学校関係者と連携するためのマニュアルがあるか否かを質問したところ、「ある」と回答したのは1施設(1.7%)のみであった。また、復学支援に使用するマニュアルが必要と思うと回答した29名には、次に「マニュアルに記載すべき内容」について14項目を例示し、その中から特に必要と思う3項目を選択するよう求めました。その結果を表5に示しました。選択の多かった項目は「復学後の学校生活における注意点」21名(72.4%)、「退院後の継続治療の有無や内容について」15名(51.7%)、「原籍校への連絡に対する保護者の意向の確認」14名(48.3%)など、退院後の子どもの治療と保護者の意向を中心とした内容でした。


3.考察

 本調査で看護師長は、病院内学級との連携は取れているが、原籍校との連携はあまりとれていないと考えていることが明らかになりました。また、病院内学級と連絡をとるのは、看護師長が最も多く、次いで看護師、主治医の順でした。一方、原籍校との連絡は、病院内学級教諭が最も多く、看護師は約1割でほとんど役割と意識していないことが明らかになりました。原籍校の養護教諭や担任からは、医療機関からの説明や情報提供を望む声が多い(山田ら 2007)と報告されており、看護師は病院内学級教諭や保護者だけに任せず、医療職として看護師も原籍校と連携をとる必要があります。
つまり、学童が入院した場合には、医療職は病院内学級だけでなく、原籍校への情報提供等の機会も定期的に持つことが重要と考えます。
 退院前にスタッフ、保護者、教育関係者で話し合いの機会を設けている病院が約5割であったことから、医療と教育の連携は考えられていると思いますが、「復学支援を実施している」36.2%、「原籍校との繋がりを維持している」12.1%などで、話し合いの機会を設けている数を下回り、現状では原籍校との繋がりの維持できていると答えたのは約1割でした。原籍校との繋がりは闘病意欲を支える力になる(平賀 2010)という指摘もあるように、看護師は、子どもと保護者に寄り添い入院中から復学を支援する立場であることを認識し活動する必要があると考えます。
 
マニュアルの必要性及び内容の検討
 標準化されたマニュアルを作成し活用することで、より質の高い復学支援の普及が期待できると考えます。今回調査とした病院では、マニュアルがある病院は1施設のみでした。しかし、半数以上の看護師長から、マニュアルが必要であるとの回答がみられ、マニュアル作成が今後の課題だと言えます。必要な情報項目では、「復学後の学校生活における注意点」が最多で、次いで「退院後の継続治療の有無や内容について」、「原籍校への連絡に対する保護者の意向の確認」を看護師長は多く選択しました。これらは、退院後の子どもの治療や保護者の意向を中心とした内容であり重要な項目です。看護師は相談支援を行う役割を担っており、多職種間によるチーム医療においては、コーディネート能力の向上を目指すとともに、スタッフ間に実施内容の差がないようにマニュアル整備をすべき考えます。
そして、今後マニュアルには、学校との連携において、看護師がコーディネート役割を担うことなどを明確にすべきだと考えます。

4. 結語

 小児病棟看護師と原籍校、病院内学級との連携について病棟看護師長を対象とした調査を行い、以下の事が明らかになりました。
1)看護師長は病院内学級との連携はとれているが、原籍校とは連携がとれていないと考えていた。
2)復学支援を行えていないと回答した看護師長は約6割で、復学支援マニュアルが必要と約半数が回答した。マニュアルが作成できていたのは1施設のみであり、今後の課題である。
3)原籍校や病院内学級との連携について看護師の意識を高め、患児と保護者を中心に医療者、原籍校、病院内学級を繋ぐために、看護師が連携における調整役を担うことが期待される。

引用文献
・平賀健太郎(2007).小児がん患児の原籍校への復学に関する現状と課題 -保護者への質問紙調査の結果より-,小児保健研究,第66巻 第3号,456-464
・山田紀子,武智麻里,小田慈(2007).慢性疾患を持つ児童・生徒の学校生活における医療と教育の連携,小児保健研究,第66巻 第4号,537-544
・中央教育審議会(2008).答申「子どもの心身の健康を守り、安全・安心を確保するために学校全体としての取組を進めるための方策について」
www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/08011804/001.pdf

研究成果発表
・日本小児看護学会 第23回学術集会発表 高知市2013 7月