一般病棟看護師のがん患者家族アセスメントの実際:その視点および実施頻度に関連する要因

更新日2013.08.22

成人・老年看護研究室 江月 優子

【はじめに】
 近年、がん患者の療養期間が長期化する中で、家族は患者とともに、多くの課題に関して対処していかなければならなくなっています(柳原2008)。従来、看護師は家族を患者の背景として捉えてきましたが、がんへの罹患により患者同様に家族も様々な負担を抱えるようになるため、家族も看護の対象であるという意識が高まっています(熊谷2003)。家族へ良いケアを提供するためには的確な家族アセスメントが必要です。本研究の目的は、がん診療連携拠点病院の一般病棟に勤務する看護師を対象として、がん患者家族アセスメントがどのような視点で実施されているか整理することと、その実施頻度が対象者の属性、アセスメントの重要性の認識、及び看護師の家族観とどのように関連するかを検討することです。
※がん診療連携拠点病院とは、専門的ながん医療の提供やがん診療の連携協力体制の整備、患者への相談支援・情報提供などの役割を担う、国が指定した病院のことです。
【方法】
 大分県以外に所在する371施設のがん診療連携拠点病院(平成22年4月1日現在)のうち、半数の185施設を無作為抽出しました。それらの施設で現在がん看護に従事しており、がん看護の経験が3年以上ある1850人(病棟師長は除く)に対し無記名自記式質問紙を配布しました。有効回答683人(36.9%)を分析対象としました。質問内容は対象者の属性(臨床経験年数、がん看護経験年数、資格の有無、看護方式)、がんと診断された直後の入院患者家族アセスメントの視点23項目についての実施頻度(1点:ほとんどしない、2点:しないことが多い、3点:することが多い、4点:たいていする)と重要性の認識(1点:重要でない、2点:あまり重要でない、3点:どちらともいえない、4点:やや重要、5点:とても重要)、家族観18項目で構成しました。
【結果】
 対象者のがん看護の平均経験年数は9.6±6.3年でした。がん診断直後の初回入院患者の家族アセスメントの視点23項目は、実施頻度と重要度、それぞれの因子分析の結果、いずれも4因子に要約されました。実施頻度については、「家族の希望」「家族内役割とコミュニケーション」「家族観と家族外資源」「家族の発達段階」の4因子、重要度では、「家族内役割と意思決定」「家族の発達段階」「家族の希望」「家族内コミュニケーション」の4因子が抽出されました。家族観についても因子分析を行い、「肯定的家族観」「家族内ルール」「家族の解決力」の3因子が抽出されました。
 実施頻度と重要度の平均得点には正相関があり、重要度が高いと認識している項目ほど実施頻度も高いという結果でした(図)。このことから、がん患者家族アセスメントの重要性の認識を高めることが、実践頻度を向上させる可能性が示唆されました。「家族観と家族外資源」と「家族の発達段階」に関する項目では、重要性の認識、及び、実施頻度の得点とも相対的に低かったです。がん患者家族に必要な看護援助を提供するためには、対象家族の家族観やサポート資源、発達段階をアセスメントすることは重要なので、これらに関する重要性の認識を高めることが特に重要と考えます。  アセスメントの実施頻度を因子毎に尺度化し、それぞれのstepwise重回帰分析を行った結果、表のような要因が独立して関連していました。頻度と重要度の各尺度間の関連は、含まれるアセスメント項目が比較的一致しているためと考えます。看護の経験年数や家族観は、実践頻度とそれほど強く関連していませんでした。がん患者家族アセスメントの実践には、看護の経験年数よりも、看護師がどのような経験をしたかという「経験の質」が影響するのかもしれません。

【おわりに】
 以上の結果をふまえ、実用的ながん患者家族アセスメントツールを検討したり、がん患者家族アセスメントに関する系統的な教育を検討することが、今後の課題と考えます。
【文献】
柳原清子(2008).がん患者の家族に起きている現象と家族ケアのあり方.家族看学,6(2),6-10.
熊谷靖代(2003).終末期の家族看護をめぐる看護師のジレンマ.家族看護,1(2),12-17.