看護学生を対象にした質問紙調査を行う際の倫理的配慮に関する実態調査~看護教員の倫理的配慮に関する認識と実践~

更新日2013.06.07

助産学研究室 石岡洋子

Ⅰ.緒言

医学研究では、ニュルンベルク綱領(1947年)が指針として示されて以降、倫理原則を遵守することが求められ、看護の世界でも看護研究を行う際の、研究対象者の権利の尊重をいかに実践していくのかということが課題となっています。看護学教育の場でも、研究における参加者の権利の保護に対する意識は高くなっており、看護教員が行う研究は、医学研究の倫理原則を定めたヘルシンキ宣言(1964年,改正2008年)を基本原則として、厳しく倫理が求められています。
看護学教育において実施された研究では、看護教員が看護学生を対象とした研究が多く、看護学教育の向上のためには、看護学生を対象とした研究が不可欠ですがその一方で、インフォームドコンセント手続きの問題やデータ提供等に関する倫理的問題が指摘されています1。なかでも質問紙調査は、学生の学習や成績評価には直接的な関係がないうえに、看護学生の態度・認識・意見等、学生のプライバシーに踏み込むため、調査に参加するか否かには、学生の任意性の保障等十分な倫理的配慮が必要となります。しかしながら、看護教員の倫理的行動の実態や認識を明らかにした研究はみられません。
そこで本研究では、看護教員が看護学生を対象とした研究を行なう際の倫理的配慮の実践の態様と必要な倫理的配慮についての認識について明らかにし、看護教員が看護学生を対象とした研究を行なう際の倫理的配慮のあり方を考えるための基礎資料を得ることを目的としました。

Ⅱ.研究方法
2006年までに開設された114校の看護系大学に勤務する看護領域を専門とする教員(臨時職員を除く)909名に対し、大学を通して無記名式自記式質問紙を配布し、個別に郵送で回収しました。質問紙は属性、FD研修の受講経験、学生を対象とした研究経験、倫理的配慮についての認識、倫理的配慮として実際に行っていること等の全19項目です。

Ⅲ.結果と考察
324名の有効回答を分析しました(有効回答率35.6%)。教員の倫理的配慮に関する選択肢を6項目あげ、重要と考える順に1位~6位までの順位付けを行った結果、各項を1位とした回答者の多い項目は、「学生が教員に遠慮することなく自由な意思に基づいて参加・不参加を決めることが出来る」(148名)、「参加不参加に関わらず不利益を生じない」(64名)、「学生の心身の負担に配慮する」(50名)の順でした。

研究対象者である学生の任意性の保障は教員に認識されていることが伺えましたが、学生を対象とする研究の実践においては、203名(90.2%)の教員が、「研究への責任や義務感」を理由に、自身で学生への研究参加を依頼していました。また、回収期間を設定し配慮している教員が92名(43.6%)であった一方で、64名(30.3%)の教員が「回収率の確保等」を理由にその場での即時回収を行っていました。さらに回収方法では、留め置き回収が141名(67.1%)でしたが、46名(21.9%)は「確実であること」等を理由に、その場での手渡し回収を行っていました。これらのことから、多くの教員は、研究対象者への説明を自ら行うことが研究者として説明責任を果たすことだと理解しており、倫理的問題を含む可能性のあるその場での即時回収や手渡し回収など、倫理的配慮が必ずしも十分に実践されていない現状を示唆するものと考えられます。

質問紙の回収時期について、即時回収を配慮なし群、それ以外を配慮あり群、回収方法についてその場回収を配慮なし群、それ以外を配慮あり群とし、χ2検定を行ってFD研修受講の有無との関連を比較した結果、FD研修受講者の方が倫理的配慮が行えており、関連が認められました(p<0.05)。FD研修を受講することは、自己の内面に働きかけ、倫理への認識が刺激されて、倫理に対する関心や感受性が高まる契機となることで、教員の倫理的配慮へ影響するものと考えられ、看護系大学において学生を対象とする研究を教員が実施する際の倫理的配慮のあり方について、効果的なFD研修の在り方を検討する必要があります。

引用文献
1.塚本友栄,舟島なをみ,野本百合子.我が国の看護学教育研究における倫理的問題-1999年から2003年の抄録分析を通して-. 千葉看会誌2005;11(2):1-6