Stereoscopic multilayer fusion image(ステレオ多層性融合イメーシ) を利用した surgical simulation (手術シミュレーション)

更新日2012.12.27

生体科学研究室 中林 博道

はじめに
画像診断システムを用いて、より精緻な手術シミュレーションを実現するために segmentation(抽出)を行った動脈、静脈、脳実質、骨などをmulti-layer(多層性)でfusion (融合)することにより高精度のmulti-layer fusion imageを積極的に利用している。ところで volume rendering image(ボリューム・レンダリング イメージ)は動かすことによって擬似的な立体画像となるが、静止状態では2次元画像に過ぎず、静止状態でもステレオ視ができる画像はさらに有用と考えらる。そこでリアルな手術シミュレーションを実現するために画像のステレオ化に取り組んだ。

方法
対象症例ならびにステレオ方式の選定

関連施設の手術症例のうちの脳動脈瘤ならびに脳腫瘍の症例を対象とした。ステレオ視を実現するには焦点距離が同じで、同一平面上に存在する2つのイメージが必要であり、その手法としては交差法(crossed eye method)、青赤メガネによるアナグリフや偏光方式、シャッター方式などがあるが、今回、交差法とアナグリフ方式を用いた。
頭部CT angiography (CTA) の撮像
使用したマルチ・スライスCTの機種はAquilion 16(東芝メディカルシステム)である。頭部CT angiography (CTA)については、頭部を中立位にして患者を寝かせ、100 mL のIopamiron 300 ( Bayer, Leverkusen, Germany)を4 mL/sのスピードで肘静脈から注入しつつ、撮像を行った。
Multilayer fusion image の作製
医療画像(DICOM; Digital Imaging andCommunication in Medicine) データの処理は、まず頭蓋骨、脳組織、動脈、静脈、表皮などの画像データへの抽出・個別化 (segmentation)ならびに最適化 (optimization) から始める。この過程では、maximum- intensity- projection (MIP) 画像を参照しながらvolume rendering の際にになるべく客観性を損なわないように細心の注意を払った。続いて、これらの最適化されたイメージを必要に応じて多層性 (multilayer) に融合 (fusion) した。融合された画像は、脳動脈瘤、脳腫瘍などの疾患に応じて観察しやすいよう各層のデータを調整し、最終的な画像の最適化を行った。
全方向からのステレオ・イメージの作成
作成されたmultilayer fusion imageを用いて、まずは病変を最も観察し易いと思われる病変の周囲をめぐる回転軌道に沿って視点を7.2度ずつずらして50個のイメージを収集した。次いで、こうした病変周囲の回転軌道を上下にそれぞれ15度ずつ傾斜させ、同様に50個ずつのイメージを収集した。あとは必要に応じてイメージ収集のための回転軌道を追加した。得られたイメージ情報はMPEGデータとして保存した。
Stereo surgical simulation
収集した画像データのステレオ化にあたり、MPEGデータをStereo Movie Maker
http://stereo.jpn.org/eng/stvmkr/)というソフトを用いてステレオ化した。

症例提示
(症例1)
59歳、男性の破裂脳動脈瘤の例である。動脈瘤は前交通動脈部であり、3D-CTAのデータを用いてstereoscopic multilayer imageを作成し、 3方向からの手術アプローチ(Rt pterional, Lt pterional, Interhemisphericapproach)をシミュレーションし、Lt pterional approach が最適と判断した (Figure 1.)。

Figure 1. A; 頭部CT, B, C; ステレオ視手術シミュレーション (症例2) 53歳、女性の傍矢状洞部の髄膜腫の症例である。3D-CTAのデータを用いてstereoscopic multilayer imageを作成し、開頭窓を含めたシミュレーションを行った。い、腫瘍の下面を走行する前大脳動脈の枝や開頭窓と腫瘍との立体位置関係がよく判り手術の際に有用であった (Figure2.)。
(症例3)
48歳、女性の左前頭葉の悪性グリオーマの症例である。腫瘍と皮質静脈の立体関係が明瞭に観察可能であった (Figure 3)。
(症例4)
72歳、男性の転移性腫瘍の症例である。転移巣と周囲の脳組織との位置関係が明瞭となった (Figure 4)。

Figure 2.
A; 頭部MR,
B; ステレオ視手術シミュレーション

Figure 3.
 症例3 画像

Figure 4.
 症例4 画像

結論
今回、立体感を伴ったシミュレーションを実現すべく、さらにmultilayer fusion imageのステレオ視化を試みた。ステレオ視化の達成にはStereo movie makerを利用し低コストでステレオ視化が実現できた。Stereo movie makerを医学分野に応用したのは本報告が初めての試みである。