介護老人保健施設における心不全高齢者への介入の実態 ―診療看護師を中心としたチームアプローチに着目して―

更新日2016.01.20

成人・老年看護学研究室 中釜英里佳

 

1. 研究目的

 人口の高齢化に伴い、今後心不全患者は増加すると予想されています1)。それに伴い介護老人保健施設などの在宅復帰施設に入所する高齢心不全患者は増加することが予測されます。また心不全は増悪による再入院も多く、疾病管理が重要であるとも報告されています。

 このような背景のもとで介護老人保健施設において特定の診療の補助行為を実施できる看護師(以下、診療看護師)がチーム医療の中心的な役割を果たし、多職種と連携しながら心不全高齢者に対して質の高い介入を行っていくことが期待されています。

 そこで介護老人保健施設の慢性心不全高齢者に対する診療看護師を中心としたチームアプローチに着目し、介入の実態を明らかにするために調査を行いました。

 

2. 研究方法

 介護老人保健施設に勤務する診療看護師及びその施設に入所する心不全高齢者を対象に、面接調査及び記録物からのデータ収集による調査を行いました。

 

3. 結果および考察 

 調査期間中、5名のうち1名の入所者に心不全の増悪がみられたものの、5名全員が入院することなく、施設入所を継続していました。

 診療看護師の語りから、対象とした介護老人保健施設では、心不全高齢者に対して「日常的な介入」「異常発見時の介入」「慢性疾患を抱えた入所者のQOLを考えた多職種での介入」が行われていました。それぞれの介入の内容を以下に示します。

 

「日常的な介入」

 看護師は入所者のバイタルサイン測定時に訴えを注意深く聞くことで、日々の状態把握を行っていました。日々の関わりの中で入所者の特徴を掴み、訴えを注意深く聞くことで異変の早期発見に繋がると考えられます。

 また診療看護師は定期的な全身状態の確認心不全の身体所見の観察、3ヶ月ごとの血液検査の一次評価を行っていました。入所時から心不全の重症度を表す血液検査値が高い入所者に対しては、心臓の負担を軽減するために管理栄養士と水分摂取量の決定を行っていました。高齢者は複合的な慢性疾患を併発していることが多く、顕著な症状や徴候が出現しにくいと言われています。細かなフィジカルアセスメント(問診・打診・視診・触診などを通して、実際に患者の身体に触れながら、症状の把握や異常の早期発見を行うこと)を入念に行い、加えて定期的な血液検査の一次評価を行うことで、日常生活における些細な状態変化を見逃さず、適切な介入が行えているのではないかと考えます。

 

「異常発見時の介入」

 介護士は些細な変化をその都度看護師に報告していました。このことで看護師は入所者の体調の変化や疾病の増悪にいち早く気づくことができ、入院が必要となるまでの悪化を未然に防いでいました。

 看護師は異常発見時に迅速に診療看護師へ連絡し、診療看護師へ報告・相談していました。この連携は入所者の異常の早期発見、適切な看護の実践に繋がります。

 また診療看護師は、看護師の報告を基にバイタルサインの測定やフィジカルアセスメントによる注意深い観察、追加検査に基づいて心不全増悪の可能性を考えたアセスメントを行い、医師に報告していました。それにより医師は的確かつ円滑に入所者の状態把握ができ、適切な処置や薬剤処方に繋がっていました。異常が早期発見されることで、症状の悪化防止や入所者の苦痛の軽減に繋がっていると考えます。

 

「慢性疾患を抱えた入所者のQOLを考えた多職種での介入」

 対象施設では、申し送り・回診・サービス調整会議といった多職種の連携の場で一人ひとりの趣向や生きがいを尊重した本人の希望に沿ったケアの統一を行っていました。制限に縛りつけない、緩やかな疾患管理をチーム全体で行っていくことで、慢性疾患を抱えた入所者のQOL維持・向上に繋がるケアが実施できると考えます。

 

 下の図は得られた結果を基に、介護老人保健施設における心不全高齢者へのチームアプローチを図示したものです。図で示すように対象の介護老人保健施設では、診療看護師を中心としたチーム全体で、入所者の状態変化の早期発見や異常発見時の迅速な介入を行っていました。また入所者の生きがいを尊重したサービスの調整やチーム全体でのケア統一が行われており、入所中の心不全高齢者のQOL維持・向上に繋がることが示唆されました。

 

 なお、この研究は本学研究室の卒論生と共同で行った研究の一部を紹介しています。

 

文献

1)筒井裕之(2007):高齢者心不全の実態から見た治療のあり方, 日本老年医学会雑誌,44(6),704-707