誕生の季節と母親の妊娠中葉酸サプリメント摂取が児の食物アレルギー発症に及ぼす影響

更新日2016.09.03

生体科学研究室 安部眞佐子

 

はじめに

 乳幼児の食物アレルギーは約10%のこどもが罹患します。親がアレルギーを持っていることも、また、お腹の中で育つ環境もこどもの発症に影響するといわれ、妊娠中のお母さんが牧場で生活するとこどものアレルギー発症が減った1)という報告も有ります。昨年、誕生月によってかかり易い疾患が違う2)という論文の発表があり、また、これまでも日本の食物アレルギーの調査として、小中学生のアレルギーの発症頻度が季節によって異なる3という報告もあります。このため、季節によって葉酸サプリメントの効果も異なるかということを観察してみました。まだ、解析の途中ですので、結論はでていませんが、これまでの解析内容を紹介してみたいと思います。

 

方法

 アンケートは、2013年から2015年まで連続して同じ地域でおこないました。出生児全員を対象とした1歳6か月健診時にアンケートを配布させていただき、健診会場で回収しました。2011年6月生まれから2013年5月生まれの回答を解析しました。こどもの食物アレルギーについては、健診時までに、医師に食物アレルギーありといわれた児を食物アレルギーありとしました。

 

結果と考察

 配布数は8791で、回収率は91.1%でした。

 葉酸サプリメントの摂取は、第1子のお母さんでは63%、第2子のお母さんでは44%で、ひとりめのお子さんのお母さんの摂取頻度が高くなっていました。また、乳幼児の食物アレルギーはひとりめのお子さんの発症が高いというのは以前から知られていますので、解析にあたっては出生順位の調整が必要になります。

 季節別の発症率をみると、春は7.30%であり、夏の発症率のオッズ比は春の1.57倍 (95% 1.25-1.96)、秋は1.75倍、冬は2.01倍と冬に生まれた児の発症率が一番高く、季節によって2倍となることがわかりました(図)。秋冬に産まれたこどものアレルギーが多いのは、日本の小学生対象の調査も同じですが、ヨーロッパでの調査4でも同様の結果が得られています。誕生の季節によって免疫機能に差が生じるといわれており、この現象の原因として一つには、日光の照射時間が秋冬に短いため、お母さんの血液中のビタミンD濃度が低くなる5からという理由が考えられていますが、季節によってDNAの発現を調節するメチル化の程度が異なる6ため、ということも考えられています。また、ビタミンD自体が直接にDNA発現を調節するビタミンですので、メチル化にも関連している可能性7が考えられます。元々、葉酸サプリメントに着目したのは、葉酸というビタミンがメチル化の基質となる物質ということがありました。

 

 次に、大まかに、お母さんはアレルギーを持っているか、お父さんはアレルギーを持っているかと出生順位で調整して、葉酸サプリメント摂取がこどもの食物アレルギーに影響するかということを検討しました。その結果、季節ごとにみると、夏生まれのこどものアレルギー発症に影響しており、サプリメントを摂取していない場合と比べると、1.6倍(信頼区間1.1-2.3)となっていました(表)。

   

 

 さらに、親のもっているアレルギーの種類によって葉酸サプリメント摂取の効果が異なるかについてみましたが、アレルギーの種類によっては、葉酸サプリメント摂取は1歳半までの食物アレルギー発症を抑える場合もあるようです。DNAのメチル化というのは、特定の遺伝子だけに起こるものではないので摂取のタイミングや量といったものによって、影響される遺伝子群は異なると思いますので、得られたデータをさらに解析してみたいと思っています。

 

終わりに

 今年になってから、妊娠中の葉酸やビタミンDのサプリメント摂取がこどもの牛乳アレルギーを増加させる8という報告がありました。ここでいう牛乳アレルギーは重篤なアレルギーでこのアレルギーになると、大豆を原料としたミルクにきりかえる必要があり、めったに発症するものではありません。葉酸サプリメントとこどものアレルギー発症については、これまで多くの報告があります。アレルギーを増加させるというものもあれば、アレルギーを増加させないと報告もあります。葉酸を妊娠期に勧めるのは、こどもの二分脊椎を予防する目的が大きかったのですが、開発途上国ではこどもの出生体重が大きくなる、胎盤がしっかりするといった現象もみられています。やせの若い女性が多いといっても、開発途上国のように抵抗力が落ちて感染症が蔓延している状況ではない、別種の低栄養が現代の日本にはおこっています。葉酸サプリメントをひとつの切り口として、元気な次世代のための食事摂取を考えてみたいと思っています。

 

1)      Ege, M. J. et al. Prenatal farm exposure is related to the expression of receptors of the innate immunity and to atopic sensitization in school-age children. J Allergy Clin Immunol 117, 817-823 (2006).

2)      Boland, M. R., Shahn, Z., Madigan, D., Hripcsak, G. & Tatonetti, N. P. Birth month affects lifetime disease risk: a phenome-wide method. J Am Med Inform Assoc 22, 1042-1053 (2015).

3)      Kusunoki, T. et al. Effect of eczema on the association between season of birth and food allergy in Japanese children. Pediatr Int 55, 7-10 (2013).

4)      Pyrhönen, K. et al. Season of the first trimester of pregnancy predicts sensitisation to food allergens in childhood: a population-based cohort study from Finland. J Epidemiol Community Health 66, 49-56 (2012).

5)      Rudders, S. A. & Camargo, C. A. Sunlight, vitamin D and food allergy. Curr Opin Allergy Clin Immunol 15, 350-357 (2015).

6)      Lockett, G. A. et al. Association of season of birth with DNA methylation and allergic disease. Allergy 71, 1314-1324 (2016).

7)      Zhu, H. et al. Race/Ethnicity-Specific Association of Vitamin D and Global DNA Methylation: Cross-Sectional and Interventional Findings. PLoS One 11, e0152849 (2016).

8)      Tuokkola, J. et al. Maternal dietary folate, folic acid and vitamin D intakes during pregnancy and lactation and the risk of cows’ milk allergy in the offspring. Br J Nutr 116, 710-718 (2016).