血液透析患者におけるシャント血流音の周波数特性に関する基礎的研究

更新日2017.03.03

看護アセスメント学研究室 田中佳子

 

【背景と目的】

 血液透析時に使用するシャント(動脈と静脈を直接つなぎ合わせた血管)は、狭窄や閉塞が生じることが多く、医療者や患者によるシャント管理が重要です。シャント異常を早期に発見のため聴診器を使って聴診することが多いですが、聴診した音の変化と血管の変化についての客観的指標はありません。また、シャント血流音の周波数解析は、研究者により様々な方法がとられており模索段階にあります。そしてシャント狭窄は動脈硬化も要因だと考えられていますが、その関連は明らかになっていません。そこで、本研究ではシャント血流音の周波数特性について明らかにすること、シャント血流音の周波数特性とシャント狭窄度、患者の身体所見の3者の関連を明らかにすることを目的とし、調査を行いました。

【方法】

 A県内の透析施設で血液透析を行っている患者20名を対象にシャント血流音、狭窄度、身体所見(動脈硬化に関する血液検査値や透析期間等)を収集しました。シャント血流音は、スペクトログラム、高速フーリエ変換(ハミング窓関数、以下FFT)、ウェーブレット変換(シムレット14関数:分解レベル10、以下WT)による周波数解析を行ない、その特徴とシャント狭窄度と身体所見の3者について、それぞれt検定(p<.05)もしくは、ピアソンの相関係数(p<.05)を求めました。本研究は、大分県立看護科学大学研究安全倫理委員会の承認を得て実施しました(承認番号:16-1)。

【結果と考察】

 20名すべてのスペクトログラムにおいて、0~約250Hz帯域までは密度が高かったことから、この帯域がシャント血流音の基本周波数だと考えられました。そして500~600Hz帯域の特徴からシャント狭窄度30%未満はパターン①、50%以上はパターン②に分類されました。FFTにおいては、第1ピーク(0-約50Hz)、第2ピーク(約200Hz)、第3ピーク(約450Hz)、第4ピーク(約550Hz)にピークを見出し、狭窄度と第2(r=.645)と4(r=.492)ピークで強い相関がみとめられました。また、第3ピークは狭窄度が低い方が音圧レベルは高いことが分かりました。WTでは、その波形の特徴から狭窄度42%未満のパターンAと43%以上のパターンBに分類され、狭窄度とd6(r=-.465)、d4(r=-.652)で負の相関がみとめられました。これらの結果は、今後の周波数解析方法の手がかりになり得ると考えられます。

  図 FFTの第1~4ピーク(シャント狭窄度41.1%)

 

 シャント狭窄度と身体所見では、いずれも相関はみとめられませんでした。スペクトログラム、FFT、WTいずれにおいても、狭窄度83.1%の特徴は狭窄度が低いパターンに類似していました。以上より、FFTの第2、4ピークとWTのパターンBを組み合わせて判定すれば、狭窄度30% 付近でシャント狭窄を発見できる可能性があります。今後もシャント血流音の周波数解析方法やシャント狭窄度の評価方法、シャント血流音の代表信号の選択方法を再検討すること、対象者を拡大することを課題とし、この研究テーマに取り組んでいきたいと考えています。