訪問看護を利用する認知症高齢者の服薬管理の現状-他職種間の連携による服薬支援方法の検討-

更新日2015.06.01

保健管理学研究室 佐藤 弥生

 2012年の全国の認知症高齢者数は約462万人、正常と認知症の中間の状態である軽度認知障害(MCI : Mild Cognitive Impairment)の方は約400万人と推計され1)、厚生労働省は2013年に「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を策定し、2015年1月には内容を更に充実させた「新オレンジプラン」を公表しました。小出は高齢者の服薬管理能力は他の日常生活動作より先に低下してくると述べています2)。認知症や一人暮らしの高齢者の増加を踏まえると、在宅での服薬支援は今後益々重要となります。ここで発表する研究では、訪問看護を利用している認知症高齢者に対する効果的な服薬管理の方法を検討することを目的に、服薬管理における訪問看護の介入と他職種との連携の実態を調査しました。

1.研究方法
 A県B市内の独立型訪問看護ステーション13施設のうち、同意を得られた9施設の管理者9名を対象に、構成的面接調査を行いました。質問の内容は、①認知症と診断された利用者の服薬管理の必要性に関する情報提供者、②服薬管理の支援方法を検討する際に参考にする情報、③説明方法の工夫、④一人暮らしの方の場合の工夫、⑤服薬確認の方法、⑥服薬非遵守の理由、⑦複数医療機関受診による多剤服用への対応の7項目と、①他職種との連携について、②現在連携をしている職種、③ホームヘルパーとの連携について、④今後連携を強化したいと考える職種についての4項目としました。聞き取った内容を逐語録として書面に落とし、カテゴリー化をして、内容分析を行いました。

2.結果
 訪問看護師は認知症高齢者の服薬管理の支援方法を考える際に、認知症の程度やこれまでの服薬状況に加え、家族の介護力のアセスメント・医師の指示・利用している社会資源(介護保険サービス等)の内容についての情報を確認していました(表1)。また、本人・家族に服薬の説明をする際の工夫として、視覚的に分かり易く・説明内容を工夫・個人を尊重した説明を行い(表2)、一人暮らしの利用者の場合は服薬カレンダー等物品の工夫の他に医師・薬剤師・ホームヘルパーとの連携を行う等(表3)、個々の特性に応じた支援を行っていました。飲み忘れ以外の服薬非遵守の理由としては、本人による自己判断や服薬拒否、認知機能の低下、家族の判断等が挙げられました(表4)。

 複数の医療機関を受診することによる多剤服用に関する服薬管理については、9人中8人が対応したことがあると回答し(表5)、“認知症の高齢者が複数の医療機関を受診し、対象者が認知症であることが分からない医師が、他院の処方を知らずに更に処方をする”という現状が述べられました。

服薬管理における訪問看護師と他職種との連携に関する結果は図1.に示します。ホームヘルパー・ケアマネジャー・主治医・デイサービススタッフ・薬剤師との連携の内容は、それぞれ情報交換、服薬確認依頼、処方の簡素化の依頼、薬に関する相談、一包化の依頼が行われていました。配食サービスのスタッフや社会福祉協議会の相談員、ケアマンションのスタッフに訪問や訪室した時に服薬の声掛けと確認の依頼をしているという回答もありました。

3.考察
 訪問看護師は認知症高齢者の服薬管理において、医療・福祉分野の多職種と連携し、利用者個々の特性に応じた介入を行っていることがわかりました。しかし、同時に飲み忘れ以外の服薬非遵守と複数医療機関受診による多剤服用への対応が課題であることが明らかになりました。服薬非遵守については、“本人が意図して服薬をしない”場合があり、先行研究においても「認知機能の中でも概念化の能力が維持されていることは、薬と副作用の関係性を連想するため、意図的な服薬非遵守の危険性が高い」3)と述べられており、比較的介護度の低い1人暮らしの認知症高齢者に対する服薬支援の必要性が示唆されています。また、複数医療機関受診による多剤服用については、ケアマネジャーや、生活に密着したサービスを提供するホームヘルパーの服薬に関する理解の普及と共に、認知症専門医や薬剤師との連携を更に強化することの必要性も示唆されました。
 認知症高齢者に対する訪問看護師の介入の現状は、新オレンジプランが策定する“地域での生活を支える医療サービスの構築・介護サービスの構築・家族支援の強化”へ繋がる活動と考えます。個々の事例に対する活動を地域全体として捉え、体制化して取り組んでいく為には、訪問看護師は服薬支援における他サービスとの連携を更に強化し、その中でキーパーソンとなるのは誰かを見極めてマネジメントをすることが重要であると考えます。

引用文献:
1)真子美和(2015). 認知症施策の今後の方向性.コミュニティケア,2015.2,vol.17,No.02.50-55
2)小出由美子(2012).認知症の治療・ケアガイド 患者に向き合うための知識と実践
  薬事(0016-5980)54巻10号1679-1685
3)Thulasi Thiruchselvam 他 (2012) Risk factors for medication nonadherence in older adults with cognitive impairment who live alone , International Journal of Geriatric Psychiatry
  2012 ; 27: 1275-1282