産後1か月と産後3,4か月の比較からみる母親の身体と育児不安

更新日2018.02.06

母性看護学研究室 林 猪都子

【はじめに】
 近年、女性の社会進出と晩婚化、高齢出産によって、出産・子育てを担う女性の環境が大きく変化しています。仕事と家事・育児を両立する上での身体、精神的負担が大きくなり、高齢出産による出産リスクも増加しています。また、父母や子育て経験者が身近にいなく産後に相談や支援を受けにくい環境となり、母親が一人で頑張って不安な気持ちで育児に取り組むことも多くなっています。
 安心できる妊娠・出産のために必要な社会的サポートとして、女性とその家族を支援する「産前・産後サポート」「産後ケア」が注目されています。それらの事業のガイドラインが作成され、市区町村が実施主体となって、全国で事業が開始されています。
 市区町村の取り組みだけでなく、産後1か月と産後3,4か月の母親の不安やケアニーズを知って、私達助産師が産後の母親の支援に取り組むために、今回の調査を行いました。
 そこで、本研究では、産後1か月と産後3,4か月の比較から、それぞれの時期における母親の身体と育児不安の特徴を明らかにすることを目的としました。

【方法】
 対象者は、産婦人科医院の1か月健診に来院した産後1か月の母親175名と、自宅で生活している産後3,4か月の母親269名としました。方法は、産後1か月の母親には無記名自記式質問紙を直接配布し、3,4か月の母親には郵送にて配布しました。調査内容は産後の身体と育児不安などでした。この研究は本学の研究倫理安全委員会の承認を得て実施しました。

【結果と考察】
 産後1か月の回収数(率)は161名(92%)で、回答数(率)138名(86.3%)を分析対象としました。また、産後3,4か月の回収数(率)は125名(46.5%)で、回答数(率)117名(92.8%)を分析対象としました。
 対象者の平均年齢は、産後1か月31.6歳で、産後3,4か月31.6歳でした。初産婦経産婦別では、産後1か月は初産婦68名(49.3%)で、経産婦70名(50.7%)でした。産後3,4か月は初産婦57名(48.7%)で、経産婦60名(51.3%)でした。産後父母にサポートを受けた平均期間は、産後1か月の母親は32.8日で、産後3,4か月の母親は44.5日でした。
 産後1か月の母親は、産後3,4か月に比べて、育児不安として「授乳」(p=0.041)「夜泣き」(p=0.033)を訴える人が多かったです(表)。「母乳栄養法」(p=0.012)は、産後1か月66名(48.9%)で、産後3,4か月75名(64.7%)に比べて少なかったです。産後1か月は産後3,4か月に比べて、授乳リズムの確立に時間を要する時期であり、産後1か月は母乳栄養の確立に向けての指導やケアが必要と考えます。
 産後3,4か月の母親は、産後1か月に比べて、身体不安として「疲労」(p=0.014)「イライラなどの情緒不安」(p=0.003)、育児不安として「発熱などの緊急対応」(p=0.023)を訴えた人が多かったです(表)。産後3,4か月は産後1か月に比べて、夫婦だけによる自宅での生活で、両親によるサポート保護的環境から離れたことによる疲労の蓄積や情緒不安が増加した時期であります。産後3,4か月は母親自身の疲労の回復や精神面のケア、児の緊急時の対応へのサポートが必要と考えます。

 

【おわりに】
 本研究において、産後1か月の母親と産後3,4か月の母親に、産後の不安に関する無記名自記式質問紙調査を実施しました。その結果、産後1か月は授乳不安、産後3,4か月は疲労や情緒不安など、母親の不安の特徴が明らかになりました。産後ケアの重要性が高まる中で、それぞれの時期における特徴や母親のニーズにあった産後支援を心がけていきたいと考えています。
 本研究の実施にあたり、ご協力頂きました皆様に心から感謝申し上げます。
 なお、この研究は本研究室の卒業生と共同で行った研究の一部を紹介しています。