核医学検査における看護師の静脈注射実践の現状と課題 -PET検査、RI検査に関連した文献の静脈注射の実施基準毎の検討-

更新日2018.02.28

 
【はじめに】
 厚生労働省は看護師等による静脈注射の実施に関して、「看護師等による静脈注射は診療補助行為の範疇である」と法解釈の変更がなされました。これに対し、日本看護協会(以下、看護協会)からも静脈注射の実施に関する指針が示され、各施設において静脈注射実施の諸整備が進んできました。更に「医師及び医療関係職と事務職員等との間での役割分担の推進について」を受け、抗がん剤や造影剤の静脈注射ができる、熟練した看護技術と知識を持ったIVナースを育成するように変化しました。放射性医薬品の静脈注射が、IVナース認定プログラムから除外とされている施設も多く、PETガイドラインにも放射線看護教育の内容規定がない事から、その実施状況は不明です。また、看護職には実施者としての責任を問われる時代になったと言われています。よって、放射性医薬品の静脈注射は、役割拡大とともに、看護師には、医療被ばくに対しての説明責任、被ばく防護の実践等、より放射線看護の専門性が求められています。
 以上のことから、本研究は、日本におけるPET検査、RI検査時の看護師の静脈注射実施に関連した文献検討を行うことで、その役割拡大に伴う現状と課題について明らかにすることを目的にしています。
 
【方法】
1. 対象文献の検索・選定
 医学中央雑誌Web版(Ver.5)および最新看護索引webを用い、検索期間は、静脈注射の法解釈が変更された2003年1月から2014年6月としました。キーワードは、「看護」「核医学」or「看護」「核医学診断」として、PET検査とRI検査に関連した文献を抽出しました。
2. 分析方法
 考察や結論では、研究内容が集約されていると考え、その中で重要だと判断した部分を抽出し、内容を小項目分類し、看護協会が示している「静脈注射の実施基準」を大項目とし、小項目を大項目毎に分類しました。
 
【用語の定義】
 本研究では、「静脈注射の実施基準」については、2003年に看護協会から提示された「静脈注射の実施に関する指針」の中にある「7 静脈注射の実施基準」の内容を示しています。
7-1 《医師の指示と看護師の自律的判断》
7-2 《患者に対する十分な説明と同意の確認》
7-3 《安全に実施するための手順》
 
【結果】
1. 文献検索の結果
 総計で12件選定されました。その文献の種類の内訳は、PET検査5件、RI検査1件、教育2件、実態調査4件でした。
2. 文献分析の結果
 PET検査に関する文献の内容を小項目分類した結果を表1に示しました。文献番号1は、PET検査での看護援助導線の工夫や放射線医薬品静脈注射のテープ固定の工夫が、被ばく防護になったという内容でした。文献番号2は、放射線医薬品が入ったライン破棄を早く行うよりも患者退室が早いほうが、被ばく防護となったという内容でした。文献番号3は、患者の自立度別による介助内容と時間、介助した看護師の被ばく量の検討をしており、事前説明の充実や遮蔽版を効果的に使用することが、被ばく防護になったという内容でした。文献番号4は、被ばく低減策の取組み前後における、被ばく量の比較をしており、放射線防護の3原則に基づき実践すること、排泄介助や移動介助における被ばく低減に関心を高めるには、放射線看護教育の重要性を提言していました。文献番号5は、現状の振り返りと、被ばく防護の4原則(3原則+α)を活用した日常業務改善とトラブルを防止する対策の検討しており、被ばく防護のための様々な工夫をしており、更に、放射線看護教育の重要性を提言していました。他、文献の種類別によって(RI検査、教育、実態調査)、同じ様に小項目分類をしました。
 
 
 表2は、それら抽出した文献の小項目を静脈注射の実施基準(大項目)毎分類した内訳の結果です。静脈注射の実施基準の《安全に実施するための手順》では、被ばく防護、放射線看護教育、安全管理についての内容が22件みられました。《患者に対する十分な説明と同意の確認》では、被ばく防護の事前説明の充実や患者不安についての内容が2件みられました。《医師の指示と看護師の自律的判断》
に関しては、記載されている文献はなかったです。この大項目は、看護師個人で被ばく線量管理をしたり、患者が核医学検査以外に被ばく線量の多いCT検査が続いていないか等、患者の被ばく線量管理に関する看護師の自律的判断が求められる内容があげられます。
 
 
【考察】
 看護師の役割拡大が進む中、放射性医薬品の静脈注射を実施する看護師には、「静脈注射の実施に関する指針」の中にある《安全に実施するための手順》《患者に対する十分な説明と同意の確認》《医師の指示と看護師の自律的判断》を全て網羅した、知識・技術に精通し、高度な専門的判断能力が必要であることがわかりました。また、自己の被ばく積算線量管理も行う自律性も持ち合わせることが求められていると考えました。そのためには、看護師に対して、放射線に関する教育を「患者に説明できる放射線の基礎知識」「放射性医薬品の取り扱い」「リスクコミュニケーション能力」「判断するための情報収集・アセスメント能力」「看護倫理」において包括的に行わなければならないです。これには施設毎ではなく静脈注射の実施基準を全て満たした、放射性医薬品静脈注射に関する一元化した教育プログラムの開発が欠かせないと考えます。
 
※本研究は日本放射線看護学会第3回学術集会で発表させていただきました。また、日本放射線看護学会誌 Vol.3 No.1 p65-71に掲載されており、上記はその一部を抜粋したものです。