生後1か月児の皮膚状態と母親の認識との比較研究

更新日2019.01.07

 

助産学研究室 樋口 幸

【はじめに】
 「子どもの皮膚トラブル」は、育児期の母親にとって大きな育児ストレス要因であり、特に産後1か月にストレスを感じている母親が多いことが報告されています。さらに、近年の研究では、皮膚トラブルが食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の発症にも関与していることが分かってきました。これらのことから、新生児期から皮膚状態を良好に保つための適切なスキンケアの実施が重要視されています。しかしこれまで、実際にスキンケアを担っている母親がわが子の皮膚の状態を正しく認識できているのか、また児の皮膚状態にあったスキンケアができているのかについては明らかにされていませんでした。
 そこで、産後1か月の母児に焦点をあてて、母親のわが子の皮膚に対する認識と日々のスキンケア、実際の児の皮膚状態との関連について調査しましたのでご紹介します。

【研究方法】
 妊娠・分娩・産褥・新生児期を通して正常に経過した1か月児とその母親70組を対象としました。調査は、母親に対する児の皮膚状態の認識と、スキンケアに関する質問紙調査を行いました。また、実際の児の皮膚状態は、肌測定器SKIN+(スキンプラス)を使用し、室温24±2℃、湿度40~60%に調整した環境下で30分以上過ごしてもらった後、水分量と油分量をそれぞれ3回測定し、「不足」「標準」「過剰」の3段階で評価しました。そして、母親のわが子の皮膚状態の認識と実際の子の皮膚状態を比較しました。いずれも有意水準は5%としました。本研究は、大分県立看護科学大学研究倫理安全委員会の承認を受けて実施しました。

【結果】
 対象母児の属性は表1に示すとおりです。自宅での保清方法は、70名全員が沐浴と回答しました。

 沐浴頻度は、1日1回が56名(80%)、1日2回以上が14名(20%)で、スキンケアの実施は、している34名(48.6%)、していない36名(51.4%)でした。また、スキンケアしていると回答した母親全員が、スキンケアを部位や皮膚状態によって使い分けていませんでした。しかし、わが子の皮膚について悩みのある母親は、37名(52.9%)と半数以上を占め、自由記載にはスキンケア剤の選択の方法についての悩みが多くみられました。そのうち、誰かに相談したことがあると答えた母親は30名(81.1%)であり、相談相手は助産師が最も多く22名(73.3%)でした。
 実際の1か月児の皮膚の水分量と油分量の測定結果と、測定時の母親のわが子の皮膚の認識を図1に示しました。測定した水分量は「不足」97.1%、油分量は「不足」42.1%と実際の1か月児の皮膚状態は乾燥状態であるのに対し、母親の認識は、水分量が「標準」87.9%、油分量は「標準」82.9%と評価しており、母親の認識と実際の児の皮膚状態は一致していませんでした。部位別に比較しても水分量と油分量ともに、母親はわが子の皮膚状態を実際よりも多く評価をしていることが明らかになりました。

【考察】
 今回の調査で、生後1か月児の皮膚は身体部位によって差はあるが概ね乾燥していること、母親の認識と1か月児の皮膚状態の間にはギャップがあり適切なスキンケア実施につながっていないことが明らかになりました。皮膚が乾燥するとバリア機能が低下し、そこから異物が侵入して様々な皮膚トラブルが誘発されるため、新生児期から一人一人の肌状態をきちんと評価し、適切なスキンケアの実施により皮膚状態を良好に保つことが重要です。母親が我が子の皮膚状態を正しく認識することは、皮膚トラブルの予防だけでなく、育児ストレスの軽減や将来的なアレルギー疾患の発症リスクを下げることにもつながります。
 母親が家庭で安心して子どもの皮膚状態に応じたスキンケアが実施できるように、具体的な情報提供や個別指導を強化していく必要があると考えています。さらに、最適なスキンケアの実現に向けて、母親自身が子どもの皮膚状態を正しく捉え対応できるための評価基準(アセスメントツール)の開発、季節や皮膚状態に合わせたスキンケア剤の選択基準の開発など、今後も科学的検証に取り組んでいきます。

【謝辞】
 この研究は、本研究室の卒論生とともに行った研究の一部を紹介したものです。また、日本母性衛生学会「学術論文奨励賞」を受賞し、第58回日本母性衛生学会総会で表彰していただきました。この場をお借りして、本研究にご理解ご協力を頂きました皆様へ心より感謝申し上げます。