介護老人保健施設における診療看護師(NP)の導入効果 -発熱の症状マネジメントに着目して-

更新日2019.04.05

 

成人・老年看護学研究室 宿利優子

【はじめに】
 2015年に、医師や歯科医師の判断を待たずに、手順書により薬剤の臨時投与などの診療の補助を行う看護師を養成する「特定行為に係る看護師の研修制度」が施行されました。大学院修士課程の診療看護師(Nurse Practitioner; NP)の養成教育で、この特定行為研修を受けた診療看護師(NP)は、制度の試行事業として2011年度より介護老人保健施設(以下、老健)で活動してます。
 本研究では、老健で勤務する診療看護師(NP)の介入のうち、老健入所者にとって特に発症頻度が高く、救急搬送や入院の主要な原因である発熱に焦点をあて、診療看護師(NP)導入前後での入所者の発熱リスクから介入の成果を明らかにすることを目的としました。

【研究方法】
 対象施設は診療看護師(NP)が勤務しているA県内の老健1施設とし、対象期間は診療看護師(NP)の介入前の2年間(コントロール期間:2009年4月1日から2011年3月31日)と介入後の2年間(介入期間:2011年4月1日から2013年3月31日)の合計4年間でした。対象者は、診療看護師(NP)の介入前の2年間に対象施設の老健に入所していた全ての高齢者223名(コントロール群)、診療看護師(NP)の介入後の2年間に対象施設に入所していた全ての高齢者193名(介入群)でした。調査内容は、入所者基本情報と発熱に関する情報を診療介護記録より収集しました。分析方法は、コントロール群と介入群の比較分析を行いました。本研究は、東京大学倫理安全委員会の承認を受けて実施しました。

※診療看護師(NP)の発熱に対する予防的介入
 診療看護師(NP)はスタッフ教育として、生活援助方法の指導や、フィジカルアセスメント・高齢者の特徴についての勉強会を行い、さらに教育効果を確認し、スタッフへフィードバックしました。また、全入所者に対して毎日、健康評価を実施し、多職種と情報交換を行いました。入所者の症状マネジメントでは、主に慢性疾患の継続治療や栄養調整などがありました。さらに発熱以外の感染兆候がある場合の抗菌薬投与も行いました。

【結果】
1)老健の職員構成(表1)

 診療看護師(NP)の介入前後の期間では、いずれの職種も統計的な有意差は認められませんでした。また施設状況や医師の勤務状況に変化はありませんでした。

2)入所者の基本属性(表2)
 総入所者数と入所期間は、コントロール群と介入群の2群間に統計的な有意差を認められませんでした。入所時の年齢の平均値と標準偏差は、コントロール群が81.0±0.5歳、介入群が82.4±0.6歳であり、統計的な有意差が認められました(p=0.001)。

3)発熱のリスクについて(表3)
 発熱への影響が考えられるNP介入、年齢、性別、介護度を独立変数として、Cox比例ハザード分析を行いました。介入群のハザード比は0.82(95%CI:0.70-0.97)であり、コントロール群に対し介入群は18%発熱リスクが低下していました。また2群間には統計的な有意差が認められました(p=0.019)。

【考察】
 本研究では、介入群の発熱リスクがコントロール群に比べて18%低下していました。調査期間中、入所者の受け入れなどの施設状況に変化はなく、介入期間とコントロール期間の職員構成にも有意差がなかったことから、診療看護師(NP)の介入が老健入所者の発熱リスクを低下させた主要な要因であると考えます。
 診療看護師(NP)の発熱に対する予防的介入により、入所者の些細な状態変化を早期にキャッチし、的確かつタイムリーな症状マネジメントが可能となることで、入所者の状態の安定化をもたらしていると考えます。入所者の状態の安定化は、宿主抵抗の維持にもつながるため、結果的に発熱リスクが低下したことが示唆されます。

 

この研究は、The 9th International Council of Nurses  Nurse Practitioner/Advanced Practice Nursing Network (INP/APNN) Conference(2016)で発表した研究の一部を紹介したものです。