日本における早期新生児期の保清ケア・スキンケアの実態とその決定要因

更新日2015.03.02

助産学研究室 樋口 幸

はじめに
  日本には古来より、生まれた子供のけがれを清め家族や社会に受け入れるための宗教的・礼儀的意義をもつ「産湯(うぶゆ)」の習慣がありました。1978年アメリカ小児学会の「ドライテクニックの勧告」以降、日本でも出生後の新生児を洗うべきか?洗わないべきか?胎外生活への適応や感染などの視点から、保清方法に関する研究が行われてきました。
2012年日本未熟児新生児学会より「正期産新生児の望ましい診療とケア」が提言されたことで、今後早期新生児期の保清方法が変化してくることが予想されます。しかし出生後の保清方法についての全国調査は、1987年が最後であり近年の実態は明らかにされていませんでした。そこで今回、日本の早期新生児期における保清方法やスキンケアの実態とその決定要因について調査した結果をご紹介いたします。

方法
 調査施設はWebサイト「周産期医療の広場」に公開されている47都道府県庁所在地の分娩施設893施設を選定し、平成25年の9月から平成26年1月の期間に郵送法で無記名の自記式質問紙調査を行いました。調査内容は、施設の地域、種類、分娩件数や実習生の受け入れの有無、入院期間中の保清方法とスキンケアの実施状況、ドライテクニック導入のきっかけ、今後の保清方針について22項目で構成されています。

結果
 送付した893施設のうち、341施設から回答が得られました。(有効回答率38.2%)
1.施設の概要 (表1)
 施設は、病院が182施設(53.4%)、診療所が158施設(46.3%)でした。そのうち、看護学生や助産学生の実習を受け入れているのは、226施設(66.3%)でした。

表1  施設の概要

2.保清方法とスキンケアの実態 (表2)
早期新生児期の保清方法は、表2に示すように86パターンに分類され、洗浄剤や使用物品も、施設によってさまざまでした。しかし、出生直後はドライテクニックが268施設(78.6%)、生後1日目は沐浴が266施設(78.0%)と最も多く、出生直後から連日沐浴を行っているのは4施設(1.8%)のみでした。保清後にスキンケアを行っている施設は26施設(7.6%)であり、スキンケアはあまり行われていませんでした。

表2 保清方法のパターン   N = 341

3.保清パターンへの関連因子
施設の種類や地域、さらに実習生の受け入れの有無が、保清パターンに影響している可能性がわかりました(p<0.05)。約半数の施設において、スタッフからの提案や病院間の情報交換、学会や文献からの情報などが保清方法の変更のきっかけとなっていました。現在の保清方法を変更しない理由は、「現在の方法で特にトラブルがない(47%)」が最多で、次いで「他に科学的根拠の確立された方法がない(16.7%)」等でした。

考察
今回の研究で、現在の日本における早期新生児期の保清方法は、施設によりさまざまで統一された見解がないという実態が明らかになりました。新生児の初沐浴は、出生直後の沐浴実施率は4.7%であり、1987年の72.9%と比較すると大きく変化していました。これは、この20年間で正常新生児の保清ケアへの関心が高まったことが影響していると考えられます。しかし、近年出版された教材でも方法は混在しているため、今後新生児の保清ケアやスキンケアに関するエビデンスの確立が喫緊の課題であると考えます。

結論
日本における早期新生児期の保清方法は、20年前とは大きく変化していますが、統一見解はなく、選択は施設に委ねられている実態が明らかになりました。

引用文献
加藤裕美子,妹尾未妃,富岡美佳(2012),沐浴の目的と実施準備に関するテキストの記載内容の検討,山陽論叢,19巻,76-82
野田知恵,長井綾子,原田由紀,他(2001),新生児の目の拭き方に関する実証的研究,香川母性衛生学会誌,1巻1号,40-45
沢田博行,南部春夫(1993),沐浴は行うべきか,周産期医学,23巻1号,31-34