NP大学院教育修了後のOn the Job Training実態とニーズ及び1年後の到達度

更新日2014.11.01

看護アセスメント学研究室 藤内美保

Ⅰ.はじめに
団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて、医療安全確保を前提にチーム医療の推進を図り、国民のニーズに適った医療提供体制の構築を図ることが重要な課題となっています。厚生労働省は、医師の手順書に従って特定行為を行う「特定行為に係る看護師の研修制度」を提案し、平成26年6月に制度化されました1)。
平成24年度の看護師特定行為・業務施行事業2)で、全国で60施設が指定施設となって、大学院修士課程2年間教育と8ケ月教育の養成試行事業を修了した看護師が活動しました。指導医のもとプロトコールに従ってOn the Job Training(以下、OJT研修)により高度実践能力の向上に努めました。そこで、OJT研修をした大学院修了生(以下、研修生)を対象に研修の実態やニーズについて明らかにし、効果的な研修について検討しました。

Ⅱ.対象

厚生労働省のホームページで平成24年度看護師特定行為・業務試行事業業務試行事業に指定され掲載されている施設(継続22施設、新規41施設(重複3施設))のうち、大学院修士課程を修了した全国の研修生を対象としました。

Ⅲ.方法
施設に勤務している研修生に郵送法で回答を求めました。質問項目は1)属性および研修の実態や希望など14項目選択式質問を設定した自記式質問紙。2)厚生労働省の新臨床研修制度の到達目標を参考にした態度・能力の到達度を自己評価してもらいました。到達度指標は、「患者関係」「チーム医療」「問題対応能力」「安全管理」「症例提示」「高度実践看護師の社会性」の6つの目標項目と24の細項目で構成されています。「できる」3点~「評価不能」0点を選択し、自己評価してもらいました。大学院教育課程により、プライマリケア(以下、Pr)領域とクリティカルケア(以下、Cr)領域に区分し分析しました。
倫理的配慮は、大分県立看護科学大学研究倫理委員会の審査を受け承諾を得ました。
Ⅲ.研究結果
質問紙の配布数は28施設42部、回収数は、Pr領域12部、Cr領域13部の計25部(有効回答率59.5%)でした。
1)研修生の研修実態とニーズ
 研修場所について、Pr領域の研修生は病棟39%、外来31%、在宅・訪問看護13%、老人ホーム4%、その他救命救急5%、ICU・手術室4%などの現場で勤務し、Cr領域では病棟33%、救命救急28.%、外来・手術室11%、ICU6%に勤務、その他ローテーション中11%でした。
 研修希望期間として、2年間と回答した者が両領域共最も多く60%、1年間と答えた者は28%でした。Pr領域およびCr領域の研修生が実際経験した診療科と研修を希望した診療科を図1に示しています。
 実際に経験した研修方法と希望した研修方法を図2に示しています。Pr領域は「医師の回診に同行」は全員が実施していました。Cr領域は、「研修医と一緒に研修を受ける」、「医師の回診に同行」、「手術や処置に同行」、「症例カンファレンスに参加」、「その都度医師に指導を受けながら実践」は全員が実施していました 。
 研修する上で不足していると感じている上位5項目のうち、「画像の初期評価」「臨床推論のトレーニング」「フィジカルアセスメントの技術」「臨床における薬理学の知識」の4項目が両領域で共通していました。
2)OJT研修1年後の態度・能力の到達度
 態度・能力の到達度の自己評価において、OJT研修1年後の目標項目毎の到達度のポイントが高かった順に「安全管理」2.53、「患者関係」2.43、「チーム医療」2.20、「症例提示」2.03、「社会性」2.00「問題対応能力」1.91でした。
OJT研修1年後の到達度は、Pr領域とCr領域では目標項目全てにおいて有意差は認められませんでした。

Ⅳ. 考察
 研修生が希望する研修期間は2年間が最も多く、態度・能力の到達度の結果は、「問題対応能力」以外の5つの目標項目(「患者関係」、「チーム医療」、「安全管理」、「症例提示」、「高度実践看護師の社会性」)では、入職後1年で到達度の平均は2ポイント以上で、「まあできる」レベルに達していました。両領域の到達度は「患者関係」「チーム医療」「安全管理」など看護師の経験が生かせる能力の到達度は高かったのに対し、「問題対応能力」「症例提示」「社会性」など医学的視点が必要なものは伸びが低く時間を要すことが示されました。
 研修部署はPr領域では、呼吸器内科、循環器内科、総合診療部、救急部、消化器内科の希望が半数以上でしたが、実際の経験者は2~3割でした。研修生の専門領域の経験や施設における研修生の活動方針などを踏まえ研修部署を検討する機会をもつことが求められます。両領域ともに救急部、総合診療部の希望が高く、活動する上では、病態を医学的な視点からエビデンスに基づいた判断と患者に必要な技術を習得することが必要です。 
研修方法は、両領域とも高度な臨床実践を必要とする行為の獲得や行為を安全に行う観点から、医師に直接指導を受けながら研修するニーズが高いことが示されました。医師の指導により、医学的知識のみならず、医療に携わる価値観や責任感なども有益な学びとなっていました。実践後のフィードバックについても希望が高く、医師の直接的な指導とフィードバックによる指導の双方向から研修することが有用であると考えます。

本研究は、厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)研究代表者 福井次矢,「看護師等の高度な臨床実践能力の評価及び向上に関する研究」平成25年度総括・分担研究報告書,p87~100「看護師の高度な臨床実践能力の修得・維持・向上のための研修プログラムを目指して –大学院教育修了後のOn the Job Training実態と研修生のニーズ-」の一部です。

引用文献
1) 第1回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師特定行為・研修部会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000057539.html(2014.10.4)
2)厚生労働省.平成24年度看護師特定行為・業務試行事業について
ttp://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021pdg.html(2014.2.25)