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令和3年度卒業証書・学位記授与式 学長式辞

更新日:2022年3月23日 ページ番号:0004654

 3月18日(金)に行われた卒業式・学位記授与式の式辞を公開いたします。密を避けるため、卒業生のみとし、残念ながら保護者、教職員の参列は見送らせていていただきました。また医療機関に勤務するためやむなく欠席された学生の方もいるため、学長式辞をご紹介します。

 

学長式辞

 

 豊後梅の香りが立ち込めていた校内では、今、桜の蕾が膨らんでいます。この佳き日に、令和3年度の卒業式・修了式を迎えることができました。学部卒業生81名、大学院博士前期課程修了生36名、博士後期課程修了生2名の門出です。学部卒業生、大学院修了生のみなさん、本日は、ご卒業、ご修了、本当におめでとうございます。

みなさんの卒業・修了までには、実習や研究等でお世話になった施設の方々、患者さんや県民のみなさま、また、ご家族・友人など、多くの方からの多大なるご支援がありました。心から御礼申し上げます。

 

 今年、卒業する4年生は、正に、新型コロナウィルス感染症で大きな影響を受けた学年です。この2年間、講義や演習だけでなく、実習でさえ、オンラインで行ったことがありました。実習前2週間はアルバイトを含めて、様々な「自粛」も求められました。でも、皆さんは、多くの不便や困難を乗り越えて、今日を迎えることができました。皆さんの頑張りに、私達教職員も励まされ、一緒に、この日を迎えることができたことに感謝しています。

 

これから、皆さんが旅立つ社会は、大きな変革の中にあります。元来、ICT、情報通信技術の発達により、SNS(ソーシャルネットワーク)も普及し、日頃のコミュニケーション・スタイルが変わってきていました。また、業務のデジタル化やロボット、バーチャル空間の活用も進む方向にはありました。コロナ禍は、これらの変革を一気に進めました。そして、ただでさえ不透明な世界に、ロシアによるウクライナ侵略という暴挙が加わり、世界は、ますます混沌としています。かつてナイチンゲールが不眠不休で看護を行ったクリミヤ半島のすぐ近くです。

このような不確実性の高い社会の中で、確実なのは、看護職は、パンデミックに対しても、病に苦しむ人や災害で傷ついた人に対しても、一貫して看護を提供してきたという事実です。看護職は、看護を通して活躍を続け、かつ、その活躍が社会から求められているということです。

 

学部卒業生の多くは、これから医療・保健・福祉の分野で、看護師として働くことになります。最初は、一看護師として働き始めますが、将来は、多様な道が開かれています。看護師として専門性を磨き、日々直接患者さんに関わり続けることを選ぶ人もいるでしょうし、病院の看護部長や副院長となる人、訪問看護に従事する人、また、大学院に進学して、保健師や助産師となる人、教員になる人も出てくるでしょう。

 

論語為政編の中に「吾、十有五にして学に志し、三十にして立つ。四十にして惑わず、五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十にして 心の欲する所に従えども矩(のり)を踰えず」という文章が有ります。

15歳は高校入学時です。高校に入って、将来の進路として大学で学ぼうと思い始めた時期ですね。「30にして立つ」は、三十歳にして独り立ちすること、皆さんだったら、「看護職としてやっていくのに必要な免許と基本的な技量、社会人としての振る舞い方も身に付けて、自律して看護をできるようになる」ことだと考えられます。「四十にして惑わず」は、四十歳で迷うことがなくなったという意味ですが、実際には、色々と迷うものです。自分の適性や得意な点を考慮して進むべき道を定め、一つに絞って日々努力していく重要性を述べているのだと思います。その結果として50歳位の時に、社会的にも一定の役割を担うようになるのでしょう。それが、「五十にして天命を知る」ということだと思います。

本日、看護職のスタートラインに立った卒業生は、先ずは、看護師として必要な素養を身に着け、技術を磨くように努力してください。同時に、40歳の時に自分がどういう形で社会に貢献したいのかを心に描き、30歳くらいまでに身につけるべき技量や資格を考えながら、職業生活をデザインしてください。今は、人生100年の時代です。必要な知識・能力を身につけるために、将来、大学院で学ぶことも視野に入れてください。学び直しのプログラムや奨学金も、今は充実してきています。

一人一人の看護職が看護の技(わざ)を磨くことにより、看護を受ける患者さんや地域社会の人々、妊産婦や新生児が、人生の大事な時期、また、大変な時期を、安全に、安楽に過ごすことができます。これが、皆さんが看護の技量や専門性を高めることの意義です。

 

看護の技量の向上、また、キャリア開発は一人ではできません。自分自身をわかるためには、共に語らい、自分の鏡ともなってくれる仲間が要ります。本日一緒に巣立つ仲間達は、皆さんにとって、大きな財産です。社会に出てからも結びつきを強く持ち、助け合ってください。同窓会である四つ葉会の活動も大事にしてください。

一方で、人生は仕事だけではありません。美しいものを見て、美意識を磨き、心を豊かにして、人々との交流を楽しんで豊かな人生をおくられる事を願っています。ワークとライフの両方を考えながら、充実した人生をおくって下さい。自分の命を次世代につないでいくことも大事なことです。

 

大学院の修了生もおめでとうございます。院生の多くが、仕事をしながら勉強し、修士や博士の論文を仕上げました。その努力に心から敬意を表します。論文を仕上げる過程では様々なできごとがあったと思います。何度も挫けそうになったかもしれません。その度に勇気を奮い起こし、データを見直し、ロジックを組みなおして、意味づけをして、論文を完成させることができたのだと思います。真摯にデータに向き合うことは、実は、自分に向き合うことです。黙々と作業し、手を動かす過程で頭・思考力も鍛えられ、的確に表現する力も付いたと思います。これは、本質を見抜く力でもあります。修士号・博士号は、論文作成の努力を通して、本質に迫る力とマネジメント能力、即ち、一定時間内に所定の物事を遂行する力が付いた証です。このような力は、今後の人生にも必ず役に立ちます。修士論文、博士論文を完成させた自分に自信を持って、同時に、謙虚に、今後の人生を歩いていって頂ければと願っています。

 

 卒業式・学位授与式は、英語ではcommencementと言いますが、これは、「始まり」という言葉です。今日、ここから、皆さんの新しい人生が始まります。身体を大切にして、頑張って下さい。そして、何時でも母校を思い出し、門をたたいてください。困った時には何時でも、ぜひ、帰ってきてください。

本学の教職員は、いつも、皆さんを見守り、応援しています。

ご健闘を祈ります。本日は、本当に、おめでとうございます。

 

令和4年3月18日

大分県立看護科学大学 学長  村嶋 幸代