大分県立看護科学大学に入学された学部生の皆さん、そして大学院生の皆さん、本日はご入学、誠におめでとうございます。また、これまで新入生を支えてこられたご家族の皆様におかれましては、晴れの日を迎え、喜びはひとしおの事と存じます。心より敬意を表します。
本日、大分県議会議長をはじめとして、ご来賓の方々、大分県知事のご臨席を賜り、学部生81名、大学院生32名の入学式を挙行できますことをたいへん嬉しく思います。皆さんを心より歓迎いたします。
看護は、人々がその人らしい生活を送ることができるよう、その人にとってよりよい状態とするために支援することと考えております。看護は看護の対象となる人々だけでなく、人々が相互作用する環境にも働きかけます。たとえ、治療の手立てがない方や、死にゆく人々に対しても、身体的・精神的・社会的などあらゆる側面から働きかけることで、その人にとってのよりよい状態にできるのが看護の大きな力であり魅力でもあります。そして、その力を発揮する看護職には、常にプロフェッショナルであることが求められます。
本学は、1998年の開学以来一貫して、理論や科学的根拠に基づいた判断力と高い技術力を身に着け、人間と社会への深い理解と豊かな人間性を備えたプロフェッショナルを継続して育成してきました。特に学部におきましては、他大学に先駆けて、看護師教育の充実に取り組み、高度な医療と質の高い看護を提供でき、リーダーシップを発揮できる基盤を持つ看護師の育成を行っています。加えまして一種免許の養護教諭の育成も行っています。また、大学院では、2008年、日本で初めてナースプラクティショナー(NP, 診療看護師)の教育を始めました。さらに、高度な判断力と実践力をもつ保健師、助産師の教育も行っております。
このように、本学は常にわが国の看護の質を向上させ、けん引する役割を担ってきましたことから、本学には新たなものに挑戦する土壌があります。そして、学部および大学院での先駆的な取り組みは体系化され、質の高いプロフェッショナルを育てる基礎教育と、その先の高度実践者教育および研究者育成が連動しており、段階的に継続してあることが本学の大きな特徴です。このことによって、地域社会に求められ、地域社会に貢献できる質の高い看護人材、専門的、包括的な看護を提供できる人材を継続して育成することができます。このことは、学部生の皆さんにとりましては、大学で学びながらプロフェッショナルとしての自身の将来を描くことができることになりますし、大学院生の皆さんにとりましては、実践現場から大学に戻ってキャリアに磨きをかけ、地域社会に更に貢献できるという好循環の中で力を発揮することができます。
学部生・大学院生の皆さんに身に着けてほしいことがあります。
一つは「やり抜く力」です。皆さんの卒業・修了までには、多くの試験に合格すること、いくつもの実習を行うこと、卒論や課題研究を提出すること、修士論文や博士論文を提出し審査を受けることなど多くの課題があります。「とても無理だ」と思うことがあるかもしれませんが、卒業・修了できるかは「何が何でもやろう」という、もう一歩踏ん張れるか、あきらめずに頑張れるかといった「やり抜く力」があるかないかにかかっているように思います。
また、「物事を多角的にみる視点」と「感性を磨く経験」も大切です。学部生は基礎的な看護実践の知識とスキル、大学院生は研究手法や高度実践の知識・スキルを身に着ける必要があります。しかし、看護実践は多様な対象となる人々の重層的に絡み合う課題に対して、試行錯誤してより良いケアを生み出すことが求められることが多々あります。研究は、新たな知見の発見や概念の創出のために、研究の着想や結果の解釈がとても重要になります。型通りの論理的な思考だけでは出てこないような不連続な発想の飛躍、ブレイクスルーも時には必要です。入学後は、専門外のジャンルの学問にも関心を向けて学び、物事を多角的に見ることのできる視点を養い、感性を磨くような経験もぜひ行ってほしいと思います。
さて、皆さんは新たな大学生活への期待に胸躍らせる一方で、どのようなことを学ぶのか、授業についていけるのか、友人ができるのかなど不安も大きいことと思います。そこで本学では、皆さんが看護学の面白さ、深さを存分に味わい、探究心をもって学びを深めることができるよう、看護学と人間科学の豊富な教授陣を揃えてきめ細やかな指導を行うと共に、充実したカリキュラムを構成し提供しています。また、図書館や情報処理室、ICTを活用した実習室など、学修環境を整えております。さらには、同級生や在校生、教職員や保健医療者などとの出会いを通じ、交流ができるさまざまな機会を提供すると共に、国際交流プログラムも用意しております。
本日、共に入学した皆さんは、卒業・修了まで楽しい時もつらい時も共に学修していく同志となります。一生の付き合いになる人もいるでしょう。互いに学び、そして刺激ある学生生活をどうぞ十二分に楽しんでください。
結びに、本日ご列席の皆様の益々のご健勝をお祈りし、学長式辞といたします。皆様、本日は誠におめでとうございます。
令和7年4月8日
大分県立看護科学大学
学長 麻原きよみ