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なぜ姫島村は健康寿命が長いのか?(その2)  ーストレスについてー

更新日:2019年6月7日 ページ番号:0000488

健康運動学研究室 稲垣 敦

ストレスについての画像1  大分県の姫島には七不思議の伝説がありますが、八番目の不思議は健康寿命が長いことです。今回はその理由として、ストレスに注目しました。
 大分県の北東部、国東半島沖6kmにある姫島は、総面積6.99k平方メートル、人口1,989人、世帯数777の離島です。姫島村の高齢化率は42.7%ですが、要介護認定率は9.3%(全国18.0%、大分県17.7%)と低く、健康寿命は男性82.62歳(全国79.47歳、大分県79.63歳)、女性86.68歳(全国83.84歳、大分県84.57歳)と高いのです。そこで、この理由を明らかにするため、厚生労働省老人保健健康増進等事業として慶應義塾大学と共同で姫島村の調査を行ないました。対象者は、姫島村在住の65歳以上の男性90名(71.1±5.2歳)、女性102名(70.8±4.6歳)で、予め文書で同意を得ました。このうち姫島村在住60年以上は112名(58%)、40年以上は159名(83%)でした。対象者には生活習慣に関する質問紙調査を実施し、厚生労働省国民健康・栄養調査の結果と比較しました。
 ストレスについての画像2ストレスの程度では、男性では60歳代で「大いにある」「多少ある」の割合が全国より有意に低く、「あまりない」が有意に高く、女性でも60歳代で「大いにある」が有意に低く、「あまりない」が有意に高いことがわかりました。70歳以上では、男女とも60歳代と同様な傾向であったが有意差は認められませんでした。
 ストレス対処法では、男性の70歳以上で「テレビを見たり、ラジオを聴く」が有意に低く、女性では60歳代で「趣味を楽しんだり、リラックスする時間をとる」、「家族や友人に悩みを聞いてもらう」が有意に低く、70歳以上で「テレビ、ラジオ」が有意に低いことがわかりました。
 余暇の過ごし方では、男性の60歳では「友人、知人と過ごす」が有意に高く、70歳でも「友人、知人と過ごす」、「運動する、スポーツジム、フィットネスクラブに行く」が有意に高く、「自宅でのんびりする」は有意に低いことがわかりました。女性では60歳代で「買い物に出かける」が有意に低く、70歳以上では「ボランティア活動に参加する」、「運動する、スポーツジム、フィットネスクラブに行く」が有意に高く、「習い事や資格取得に利用する」は有意に低いことがわかりました。
 以上の結果から、姫島村の高齢者はストレスが少なく、そのためかストレス対処も少ないことがわかりました。この理由として、活動的でコミュニケーションも多く、これらが身体活動量確保、認知症予防、社会的支援等に繋がっている可能性が考えられました。姫島は自然環境に恵まれ、温暖で、自然災害も少なく、居住期間が長く価値観や生活水準も似ていて、村民間の関係も密で犯罪もほとんどなく、外からの社会・経済・文化的影響が相対的に少ないため安定しており、安心して生活できるという点で、物理的・化学的・心理的ストレッサー自体が少ないと推測され、離島という地理的条件自体が健康寿命に影響しているのかもしれません。今後、さらに、家族構成、食習慣、趣味、生き甲斐、休養、社会参加、人間関係等の解析を進めていく予定です。
 是非一度、姫島にいらしてください。

ストレスについての画像3

 取材に協力したNHKの海外向け番組が配信されていますので、こちらもどうぞ。番組の後半に姫島のsuperfoodが出てきます。何だろう?

“NHK World – JAPAN: Medical Frontiers Special - Search for Superfoods in Oita –"<外部リンク>