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呼吸・循環管理が特徴である部署の看護師による胸部単純X線画像活用の実態調査―単純X線画像学習の看護基礎教育への導入に向けて―

更新日:2023年3月6日 ページ番号:0005571

看護アセスメント学研究室 内倉佑介<外部リンク>

はじめに

 今日の医療用画像診断は客観性が高く低侵襲であるため、診療に不可欠なものになっています。その中でも循環器や呼吸器のモダリティにおいて、胸部単純X線画像は、心電図や血液検査と並んで最も基本的な検査の1つである。単純X線画像は医師だけでなく、看護師にとって有用な情報源であり統合的なアセスメントの質の向上に寄与すると考えられます。しかし、これまでに国内外において看護師の視点で単純X線画像の活用について調査した研究は少なく、その実態は十分把握されていません。そこで、胸部単純X線画像(以下胸部画像)において①看護師の視点でどの程度の頻度、どのようなタイミングや目的で胸部単純X線画像を評価しているか、また、どのような有用性を感じているかの活用の実態、②看護基礎教育における胸部単純X線画像評価のための基礎的知識習得の必要性とその理由を明らかにすることを目的に研究を実施したので紹介します。

方法

 対象施設はA市にある呼吸器病棟、循環器病棟、ICU、ER、HCUのいずれかを有する総合病院5施設とし、対象者は対象施設の呼吸器病棟、循環器病棟、ICU、ER、HCUで勤務する看護師466名としました。対象者が質問紙調査を作成、配布を行いました。調査項目は基本属性5項目、胸部画像活用状況6項目、胸部画像の学習方法1項目、看護基礎教育での胸部画像の学習の必要性2項目の計15項目としました。​

結果

 調査用紙は466部配布し、186部の回収が得られ179部(有効回答率38.4%)を分析しました。胸部画像の確認について対象看護師の86.1%が業務中に胸部画像を確認しており、経験年数が長いほど胸部単純X線画像確認の頻度が高いという関連(ρ=-0.249,p=0.001)が認められました。胸部画像確認のタイミングは「患者の情報収集時」83件、「胸部画像撮影時」が80件、「患者の状態確認時」が27件、「医療機器確認時」が20件という結果でした。胸部画像確認の目的は「病態の把握」が137件、「看護過程の展開」が96件、「臓器の状態把握」が95件であり、胸部画像確認の有用性は「看護過程展開」が112件、「症状の把握」が19件、「リスク管理」が6件、「多職種連携」が19件という結果となりました。胸部画像の学習方法は多い順に、「就職後の自己学習(研修は除く)」が111件、「その他(医師に教わる、放射線技師に教わる等)」が56件、「看護学生時代の講義」が43件という結果でした。看護基礎教育での学習については「必要である」が72.6%(30名)、「必要でない」が8.9%(16名)となり、臨床看護師の7割以上が看護基礎教育での学習の必要性を感じていることが明らかになりました。

考察

 多くの看護師は胸部画像を疾患や症状、患者の状態を捉えるため、看護師の視点から確認していた。看護師が行うフィジカルアセスメントに胸部画像の情報を加えることで、質の高い看護アセスメントや看護ケアの実践につながることが示唆されました。肺炎、心不全、胸水貯留については経験年数に関わらず多くの看護師が確認をしており、胸部画像の学習は、就職後の個々の自己研鑽に委ねられているという現状が明らかになりました。これは、看護アセスメントの質や看護ケアの提供に差が生じる可能性を示唆しており、看護師による胸部画像について統一した知識の習得の必要性が示唆されました。

*この研究は第24回East Asian Forum of Nursing Scholarsで発表しています。​