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睡眠導入のための蒸気温熱シート足部貼付の効果の検討―足浴との比較―

更新日:2024年6月21日 ページ番号:0006888

基礎看護学研究室 田中佳子<外部リンク>

はじめに

 寒い時期に、足が冷えて眠れないことはありませんか?足が冷えて眠れなくても、足を温めると眠れた経験はありませんか?私たちの体温は、日本人では36.8度前後が多いと言われています。この体温は、一般に脇の下や口の中の温度を測る「皮膚体温」というもので、他にも皮膚体温より1℃程高い「深部体温」という脳や臓器などの身体の内部の温度を示すものがあります。身体の手や足などの末梢を温めると、血管が拡張して熱放散が促され、冷やされた血液が身体の中枢に流れることで、この深部体温は下がります。私たちが眠ろうとする時、深部体温が下がると眠りやすくなります。
 臨床において、入眠困難や不眠の患者さんに睡眠の援助としてお湯を使って足浴を行うことがあります。しかし、足浴は、準備や片付けに時間がかかるので、病棟の消灯時間前の夜間に、睡眠導入の援助が必要なすべての患者さんに実施することは難しい現状があります。そこで、準備や片付けに時間をかけずに足を温める方法として、温熱シートに着目しました。この研究では、足を温める方法として、足浴と温熱シートでの生体反応を比較し、温熱シートの睡眠導入効果を検証することを目的としました。

方法​​​

1. 対象者
 循環や足部の皮膚に異常がなく、交代勤務などで睡眠パターンが変則的でない、心身ともに健常な成人10名としました。

2. 調査の日程
 足浴も温熱シート貼付も実施しない日(以下、非介入日)、足浴を実施する日(以下、足浴日)、温熱シートを貼付し加温する日(以下、シート日)の順で3日間行いました。

3. 調査の方法
 調査は、13時30分から14時に開始しました。まず、測定機器を装着してもらい、非介入日は10分間座位、足浴日は40℃の温湯での足浴を座位で10分間、シート日は温熱シートを両足の足首の背面と足背に計4枚ずつ貼付し、座位で10分間過ごしてもらいました。その後、掛物をして80分間ベッドで臥床してもらいました(図1)。

調査の方法

4. 測定項目
 深部体温(以下、CORE温)末梢皮膚温(以下、SKIN温)、LF/HF(副交感神経活動に対する交感神経活動のパワー比)としました。調査した3日間の測定開始時点、5分時点、10分時点、臥床後80分間を10分ごとに8回の計11回を測定時点としました。

5. 分析方法 
 測定項目について、測定開始時点を基準とした変化率を算出し、CORE温、SKIN温、LF/HFを従属変数とした、繰り返しのある二元配置分散分析を行いました(p<0.05)。本研究は、研究者所属施設の研究倫理・安全委員会の承認を得て実施しました。

結果

1. SKIN温は、非介入日に測定開始後10分間で変化率が増加したのに対し、足浴日とシート日は低下しました。臥床後の足浴日とシート日は、ほぼ同じ変化率で増加し、臥床後40分以降、非介入日のよりも高い増加率で推移しました。

2. CORE温は、シート日の測定開始時点から10分間は、ほぼ変化がありませんでしたが、非介入日と足浴日は低下率が大きく、臥床後50分時点では非介入日の低下率が最も大きくなりました。

3. LF/HFは、足浴日とシート日で、測定開始後から測定終了時まで低下傾向を示しました。

 4. HRは3日間とも臥床後10分時点でほぼ同じ低下率となり、測定終了時まで緩やかに低下傾向を示しました。​

結果2

 すべての測定項目において、各測定時点、測定時点と介入方法に、主効果や交互作用は認められませんでした。​

考察

 本研究では、加温後にSKIN温の上昇、CORE温の低下、LF/HFの低下が生じたことが分かりました。先行研究では、睡眠時にSKIN温の上昇とLF/HFの低下が生じることや、足浴によってSKIN温の上昇とLF/HFの低下が生じ、睡眠状態になるまでの時間が短縮することが明らかになっています。本調査でも、これらと同様のSKIN温とLF/HFの変化が、足浴日だけでなくシート日でも認められました。そのため、温熱シートを足に貼ることによる加温は、足浴と同様のSKIN温の上昇とLF/HFの低下が生じるという点で、睡眠導入に効果的である可能性があることが示唆されました。
 本調査は日中に行いましたが、夜間の睡眠での検証や、脳波測定などの方法により睡眠自体を測定することで、温熱シートで足を温めることが睡眠導入に及ぼす効果を検討していきます。

*本研究は、2023年度基礎看護学研究室の卒論生と共同で行った研究成果の一部を抜粋したものです​。