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仕事として動物の世話をすることが精神疾患をもつ人の意欲やコミュニケーションに及ぼす影響

更新日:2025年2月3日 ページ番号:0007599

精神看護学研究室 杉本圭以子<外部リンク>

はじめに

 精神疾患をもつ人にとって働くことは、症状や生活のしづらさと折り合いをつけつつ生活の幅を広げる重要な機会です。近年、猫カフェを運営する就労継続支援B型事業所(以下、事業所)が日本各地に見受けられます。先行研究では精神疾患をもつ人が動物と関わることは、症状の軽減やコミュニケーションの機会となる可能性があることが報告されています。
 本研究は、猫カフェを運営する事業所で働く利用者と事業所の職員にインタビューを行い、精神疾患をもつ人が仕事として動物と関わり世話をすることにより意欲やコミュニケーションにどのような影響があるかを明らかにすることを目的としました。

方法

 事業所で仕事として3カ月以上猫の世話をしている利用者4名と職員2名を対象に半構造化面接を実施しました。調査内容は利用者に1)事業所の利用開始時期と仕事内容、2)猫と関わる仕事のとらえ方、3)生活の変化(睡眠、食事、就労意欲、人付き合い)についてたずね、職員に利用者の症状、仕事への意欲、人付き合いの変化をたずねました。逐語録を作成し、コード化、カテゴリー化して整理し質的に分析しました。​

結果

 利用者の事業所での経験年数は1~3年で、現在は4名とも週に4日、1日4時間就労していました。そのうち猫の世話をするのは週1日1時間でした。猫と関わる仕事を始めたことにより、【仕事に対するモチベーションを感じるようになった】こと、【やりがいや達成感を感じるようになった】こと、【猫や他の利用者とのかかわりが楽しくなった】ことが利用者から語られました(表1)。

気持ちの変化

また、コミュニケーションにおける変化として【利用者同士で作業時の意思疎通が取れるようになった】こと、【利用者同士で会話が増えた】こと、【家族間での会話が増えた】ことが語られましたが、一方で【変化を感じていない】人もいました。(表2)。

コミュニケーションの変化

職員からみた利用者の変化として【仕事に対する意欲が高まった】【作業に関して話し合いが増えた】【表情が豊かになった】こと等が語られました(表3)。​

職員から見た変化

考察

 精神疾患をもつ人が事業所に通所することは、生活リズムを整え人と関わることで健康的な生活を送るために役立つといわれますが、さらに仕事として猫の世話をすることは仕事の意欲向上につながっていると考えられました。本研究対象者が猫と関わるのは週1日1時間でしたが、仕事として猫の世話をすることにより利用者は責任感や役割意識をもちやりがいを感じていると考えられます。また、利用者同士での会話だけでなく、猫を話題として家族との会話も増えたことが語られました。加えて職員から利用者の表情が豊かになったことも語られ、猫との関わりが利用者の意欲やコミュニケーション面に良い変化をもたらしていることが推測されました。ただし、本研究は1施設のみを対象とした研究であり、今後の研究の積み重ねが必要です。

 本研究は精神看護学研究室の卒論生、堀ひかりさんと共同研究した内容を一部紹介したものです。​