アドバンス助産師認証者の自律した助産ケアの提供と活動の場
助産学研究室 姫野 綾<外部リンク>
はじめに
2015年、CLoCMiP(助産実践能力習熟段階)レベル III 認証制度が開始しました。CLoCMiPレベル III を認証されたアドバンス助産師は、「自律して助産ケアを提供できる助産師」として、院内助産や助産師外来を開設し、専門的でより質の高い助産ケアを提供することが期待されています。
本研究では、アドバンス助産師を申請・取得した理由と、自律した助産ケアの提供の場や、専門性を発揮した助産実践を行うためにどのような活躍の場を望んでいるのかを明らかにし、アドバンス助産師が活躍する場の提言へ繋げることを目的としました。
方法
調査対象者は、病院・診療所の産婦人科病棟や外来、院内助産、助産師外来のいずれかで助産業務を実践している助産師経験年数10~20年のアドバンス助産師6名とし、2020年2月~12月に無記名自記式質問紙調査およびインタビューガイドに基づいた1回約60分の半構造化面接を実施しました。質問紙調査内容は、調査対象者の属性、助産師・臨床経験年数、分娩介助例数、院内助産・助産師外来・助産院での就労経験の有無、現在所属する病院の種類と病棟構成、院内助産や助産師外来の有無を調査しました。半構造化面接は、質問紙調査結果とインタビューガイドに基づき、所属病院や病棟での助産活動、アドバンス助産師取得理由と想い、アドバンス助産師として自律した助産ケアを提供している場面や今後の活躍の場について調査を実施しました。質問紙調査結果は概要としてID毎にまとめ、半構造化面接によって得られた語りは逐語録に起こし、カテゴリー化し内容分析を行いました。
本研究は本学研究倫理安全委員会の承認を得て実施しました。
結果・考察
対象者6名の平均年齢は42.7(±5.5)歳であり、助産師経験年数は14.3(±2.7)年、臨床経験年数は18(±4.5)年、分娩介助経験例数は、150~1000例でした(表1)。
半構造化面接によって得られた助産師6名の語りを逐語録に起こした後、「アドバンス助産師申請・取得理由」、「アドバンス助産師が自律して活動している場」「アドバンス助産師としての今後の活躍の場」に関するデータをコード化して抽出したものを類似性や相違性を比較検討し、カテゴリー化を行いました。以下【 】はカテゴリーを示します。
「アドバンス助産師申請・取得理由」は、5つのカテゴリーが抽出されました。【他者の推奨】【取得しやすい環境】であることを理由に申請しても、【メリットがある資格】【キャリア証明】として捉えており、【自己研鑽】を目的としていました。「自律して活動している場」は、【院内助産・助産師外来】【骨盤ケア】【母児同室や乳房外来での乳房ケア】【保健指導の実施】【2週間健診の実施】の5つのカテゴリーが抽出され、院内助産で就労せずとも、自律した助産ケアの提供の場は数多くあると考えていることが示唆されました。「今後の活躍の場」は、3つのカテゴリーが抽出され、【院内助産の実施】に限らず、現在の就労環境下で【妊産褥婦への専門的な心や身体のケア】や【助産師出向システム】の活用を望み、さらなる向上・学習の場を求めていることが明らかとなりました。
CLoCMiPレベル III 認証制度には以下の3つの目的が掲げられています。第1に、妊産褥婦や新生児に対して良質で安全な助産ケアを提供できること。第2に、助産師が継続的に自己啓発を行い、専門的能力を高める機会になること。第3に、社会や組織が助産師の実践能力を客観視できることです。本研究結果からアドバンス助産師は、自己研鑽を積みながら専門性を発揮した自律したケアを提供している助産師であることが示唆されました。そして、さらなる成長をアドバンス助産師自身が望んでいることが明らかとなりました。まだまだ社会に十分な周知をされているとはいい難い本制度ですが、アドバンス助産師は、院内助産や助産師外来を中心としたタスク・シフト/シェアを取り入れた働き方改革の担い手としても注目されています。この制度がより広く社会に周知され、アドバンス助産師が自らの専門性を活かして活躍の場をさらに広げていけることを心から願っています。
謝辞
本研究の実施にあたり、ご協力いただいたアドバンス助産師の皆様に心より感謝申し上げます。尚、本研究は大分県立看護科学大学奨励研究(令和元年度~二年度)の助成を受けて行ったものです。